【ITニュース解説】PMの本質は「やらないことを決めること」

2025年09月04日に「Qiita」が公開したITニュース「PMの本質は「やらないことを決めること」」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

プロダクトマネージャー(PM)は、社内外からの多くの要望に対し、すべてに応えようとするのではなく、本当にやるべきことを見極める。プロジェクトを成功させるには、「やらないこと」を明確に決めることが本質的に重要である。

ITニュース解説

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、プロダクト開発の現場で非常に重要な役割を担うPM、プロダクトマネージャーという存在は、これから深く関わっていくことになる職種だ。PMは、どのようなプロダクトを作るべきか、その方向性を決定し、開発チームを導く責任を持つ。彼らの仕事の本質が「やらないことを決めること」にあるという今回の記事は、単に技術を学ぶだけでなく、プロダクトを成功に導くために不可欠な考え方を示している。

プロダクト開発の現場では、常に様々な要望やアイデアが生まれてくる。「こんな機能が欲しい」「ここをもっと改善したい」「新しい技術を取り入れたい」といった声は、社内の様々な部署から、あるいは顧客から、さらには開発チーム内部からも日々寄せられる。PMは、そうした大量のインプットを一身に受け止めることになるのだ。

もしPMがこれらの要望すべてに応えようとしたらどうなるだろうか。想像してみてほしい。限られた時間、限られた人数の開発チーム、限られた予算という制約の中で、次から次へと新しい機能の開発や改善に取り組んだとしたら、一つ一つの作業は中途半端になりがちだ。どの機能も完成度が低く、使い勝手も悪く、期待された成果を出せないまま、膨大なリソースだけが消費されてしまう事態に陥る可能性が高い。結果として、本当にユーザーに価値を届けるべき重要な機能の開発が遅れたり、おざなりになったりしてしまうのだ。

そこで重要になるのが「やらないことを決める」というPMの役割である。これは、決して開発を怠けることでも、要望を無視することでもない。むしろ、本当にやるべきことに集中し、高い品質でそれを実現するために不可欠な戦略的判断なのだ。リソースは無限ではないという現実を理解し、その中で最も効果的な選択をする。これがPMの本質的な業務である。

では、PMはどのようにして「やらないこと」を決めるのだろうか。その判断の根拠となるのが、プロダクトの「目的」と「目標」の明確化だ。まず、そもそもこのプロダクトは何のために存在するのか、誰のどんな課題を解決するのか、といった根本的な目的を明確にする。そして、その目的を達成するために、具体的にどのような状態を目指すのか、という目標を設定する。例えば、「ユーザーのエンゲージメントを向上させる」が目的であれば、「月間アクティブユーザー数を○%増加させる」「特定機能の利用率を○%に引き上げる」といった具体的な目標を設定する。

この目的と目標が明確になったら、それらを達成するために最も貢献すると思われる施策や機能を特定する。そして、その目的や目標から外れるもの、あるいは貢献度が低いと判断されるもの、優先度が低いものは、たとえ魅力的に見えても「やらない」と決断するのだ。

この「やらないこと」の判断を助けるために、具体的な意思決定の基準を用いることが多い。例えば、「北極星指標(North Star Metric)」という考え方がある。これは、プロダクトが長期的に成長するために最も重要な一つの指標を定めるものだ。この北極星指標に直接的に貢献しないアイデアや機能は、たとえ良いアイデアに見えても、今はやらないという判断を下すことができる。

また、OKR(Objectives and Key Results)という目標設定のフレームワークも有効だ。これは、挑戦的な目標(Objective)と、それを測るための具体的な成果指標(Key Results)を設定するもの。設定されたOKRに紐づかない、あるいは貢献度が低い開発項目は、現在の優先順位からは外れることになる。

さらに、プロダクトの「原則」を設定することも重要だ。これは、プロダクトがどのような価値観に基づいて作られるべきか、どのような顧客体験を提供するべきかといった、揺るぎない指針となるものだ。例えば、「シンプルさを追求する」「ユーザーのプライバシーを最優先する」といった原則があれば、それらに反するような複雑な機能や、プライバシーを侵害する可能性のある機能は、原則として「やらない」という判断ができる。

PMは、これらの明確な基準に基づいて「やらないことリスト」を作成し、それを開発チームや関係者に共有する。そして、ただ「やらない」と伝えるだけでなく、「なぜやらないのか」を論理的に説明し、納得感を得ることが非常に重要になる。なぜならば、そこにはきっと、提案した人たちの熱意や期待が込められているからだ。その熱意を受け止めつつ、プロダクト全体の成功のためには今、何をしないべきか、という判断を下すのがPMの腕の見せ所なのだ。

この「やらないことを決める」という意思決定がもたらす効果は計り知れない。まず、開発チームは「今、何に集中すべきか」が明確になり、余計な迷いや手戻りが減る。結果として、限られたリソースを最も重要な開発に集中させることができ、プロダクトの品質向上と効率的な開発につながる。集中して作り上げた機能は、中途半端なものよりもはるかに高い価値をユーザーに提供するだろう。

また、無駄な作業が減ることで、開発期間の短縮やコスト削減にも寄与する。そして何より、プロダクトが本来目指すべき目的達成への最短ルートを辿ることができるようになるのだ。

PMの役割は、単に要望を聞き入れ、それを開発チームに伝えるだけの「調整役」ではない。それは、プロダクトの未来を見据え、戦略的な意思決定を行い、その実行を強力に推進する「羅針盤」のような存在だ。システムエンジニアを目指す皆さんも、将来的に開発の現場で働く中で、PMがなぜ特定の機能を「やらない」と決めたのか、その背景にある意図や戦略を理解しようと努めることは、自身の視野を広げ、より良いプロダクト開発に貢献するための大きな一歩となるだろう。技術的なスキルだけでなく、このようなプロダクト全体の視点を持つことが、これからのシステムエンジニアにはますます求められる。この考え方は、個人の仕事にも応用できるものであり、限られた時間の中で本当に重要なタスクに集中するためには、何を「やらないか」を決めることが非常に有効だ。

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