【ITニュース解説】PR： マンガで解説：まだ終わらない電子帳簿保存法　長期保存と業務効率の盲点

電子帳簿保存法は、企業や個人事業主が国税関係の帳簿や書類を電子データで保存することを認める法律だが、近年は単に認めるだけでなく、特定の状況下では電子保存を義務付ける方向へと進んでいる。特に2024年1月からは、電子的に授受した取引に関するデータ、例えば電子メールで受け取った請求書やウェブサイトからダウンロードした領収書などは、紙に出力して保存することが原則禁止となり、電子データのまま保存することが全面的に義務化された。これは、企業の経理業務におけるデジタル化を大きく推進するものであり、多くの企業が対応に追われている。

この義務化に対して、多くの企業は「事務処理規定」を定め、PCのハードディスクや共有ファイルサーバーに電子データを保存することで、ひとまず法対応を乗り切ったと考えているかもしれない。国税庁は、やむを得ない事情がある事業者に対して猶予期間を設けたり、特定の事務処理規定を設けることで、電子保存の要件を緩和する措置を設けたこともあるため、一時的な対応としては有効に機能したケースもある。しかし、システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この一時的な対応だけで「これで安心」と考えるのは極めて危険な視点だ。その背後には、長期的な保存義務や、かえって業務効率を低下させるという見過ごされがちな盲点が潜んでいるからである。

まず、PCへのデータ保存だけで安心できない最大の理由は、電子帳簿保存法が求めるデータの「真実性」と「可視性」を恒久的に確保し続けることの難しさにある。真実性とは、保存されたデータが改ざんされていないことや、訂正・削除の履歴が残されていることを指す。一方、可視性とは、必要な時にすぐにデータを確認できること、そして特定の条件で検索できることなどを指す。個々のPCや、適切な管理がされていないファイルサーバーにバラバラに保存されたデータは、担当者が変わればどこにあるか分からなくなり、誤って削除されたり、意図せず内容が改変されたりするリスクが高い。また、税務調査などの際に、膨大なデータの中から必要なものを迅速に探し出して提示する作業は、非常に手間と時間がかかり、結果的に企業の負担を増大させることになる。

次に、長期保存という視点も重要だ。国税関係書類の保存期間は、原則として7年間と定められており、欠損金の繰越控除を適用する企業など、中には10年以上の保存が義務付けられるケースもある。現在のPCやファイルサーバーに保存された電子データが、7年後、10年後も問題なく閲覧できる保証はどこにもない。PCは故障するものだし、ソフトウェアやOSのバージョンアップによって古いデータ形式が新しいシステムで開けなくなる「データの陳腐化」も起こりうる。また、保存すべきデータ量が膨大になればなるほど、ストレージ容量の圧迫は深刻になり、その管理・維持コストも無視できない問題となる。

そして、最も見過ごされがちなのが「業務効率」の観点だ。単に電子データをPCに保存するだけの運用では、多くの場合、かえって業務効率が低下する可能性がある。必要な取引データを探すのに時間がかかったり、複数人で同時に同じファイルにアクセスできないために作業が滞ったり、データ管理が特定の担当者に依存して「属人化」したりする。このような状況では、本来デジタル化によって実現されるはずの業務のスピードアップや効率化は望めず、むしろ手作業での管理よりも非効率になる危険性すらある。これは、法対応のための投資が、結果的に企業の生産性を下げるという皮肉な結果を招きかねない。

さらに、電子帳簿保存法は一度制定されたら終わりではなく、過去にも度々改正が繰り返されてきた経緯がある。将来的に、さらに厳格な保存要件や、新たな機能が求められる可能性も十分に考えられる。その度に一時的な対応を繰り返していては、システムの改修や運用ルールの見直しに多大なコストと手間がかかることになり、企業にとっては継続的な負担となる。

これらの課題を解決し、長期的な視点での業務効率化を実現するためには、単なるPC保存ではなく、専門のシステムを導入することが極めて有効な選択肢となる。例えば、文書管理システムや電子帳簿保存法対応に特化したソリューションは、電子データの自動的な取り込み、正確なタイムスタンプ付与による改ざん防止、高度な検索機能、厳格なアクセス権限管理、そして確実なバックアップ機能などを統合的に提供する。これにより、データの真実性と可視性を法律が求める形で確実に確保できるだけでなく、必要な情報を素早く見つけ出し、関連業務プロセス全体を大幅に効率化することが可能になる。

また、クラウド型のサービスを利用すれば、自社でサーバーを構築・管理する必要がなく、初期投資を抑えつつ、システムの運用や保守を専門のベンダーに任せることができる。これにより、システムに関する専門知識が不足している企業でも、常に最新の法改正に追随した環境を維持しやすくなる。災害対策やセキュリティ面でも、専門のクラウドサービスプロバイダーの方が高いレベルで対応できる場合が多い。

最終的に、電子帳簿保存法への対応は、単なる法律遵守の義務と捉えるだけでなく、企業全体のデジタル化（DX）を推進する絶好の機会と考えるべきだ。紙の書類を電子データに置き換え、それらを効率的に管理・活用することで、経理部門だけでなく、営業、購買、人事など、企業内のあらゆる部門の業務効率向上に繋がる可能性がある。データが一元的に管理され、必要な時に必要な情報がすぐに手に入る環境が整えば、意思決定のスピードも向上し、企業全体の競争力強化にも貢献するだろう。システムエンジニアを目指す皆さんは、目先の法対応だけでなく、企業の未来を見据えた、より本質的な課題解決の視点を持って業務に取り組むことが求められる。