【ITニュース解説】Writing a C compiler in 500 lines of Python (2023)
2025年09月04日に「Hacker News」が公開したITニュース「Writing a C compiler in 500 lines of Python (2023)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Pythonで500行のCコンパイラを作成するプロジェクト。C言語のサブセットを対象とし、字句解析、構文解析、コード生成の基本機能を実装。教育目的で、コンパイラの仕組みを理解しやすいように設計されている。初心者でもコンパイラの基礎を学べる。
ITニュース解説
この記事は、Pythonで500行以内のCコンパイラを作成する方法について解説している。Cコンパイラは、人間が理解しやすいC言語で書かれたプログラムを、コンピュータが直接実行できる機械語に変換するソフトウェアだ。通常、コンパイラは非常に複雑で大規模なプログラムだが、この記事では、C言語のサブセット(一部の機能に限定したC言語)を対象とすることで、その本質を理解しやすいように簡略化している。
まず、コンパイラの基本的な構造を説明する。コンパイラは大きく分けて、字句解析、構文解析、意味解析、コード生成という4つの段階を経る。
字句解析(Lexical Analysis)は、ソースコードを最小単位であるトークンに分割する処理だ。トークンとは、例えば、変数名、キーワード(if, elseなど)、演算子(+, -, *など)、数値リテラルなどのことだ。記事の例では、正規表現を使ってこれらのトークンを識別し、プログラム上で扱いやすい形に変換している。
構文解析(Syntax Analysis)は、トークン列がプログラミング言語の文法に沿っているかどうかをチェックする処理だ。文法規則に従ってトークンを構造化し、抽象構文木(Abstract Syntax Tree, AST)と呼ばれる木構造を生成する。ASTは、プログラムの構造を表現するもので、コンパイラがプログラムの意味を理解するための基礎となる。この記事では、再帰下降構文解析という手法を用いて、C言語の文法規則をPythonのコードに落とし込んでいる。
意味解析(Semantic Analysis)は、プログラムの意味を解析し、型チェックや変数のスコープチェックなどを行う処理だ。例えば、未定義の変数が使用されていないか、演算の型が一致しているかなどを確認する。この記事のコンパイラでは、C言語の基本的な型(整数型など)を扱い、簡単な型チェックを行っている。
コード生成(Code Generation)は、ASTを基に、機械語やアセンブリ言語などの実行可能なコードを生成する処理だ。この記事のコンパイラでは、スタックベースの仮想マシンを想定したバイトコードを生成している。バイトコードは、実際の機械語よりも抽象度が高く、プラットフォームに依存しないため、移植性が高いという利点がある。生成されたバイトコードは、仮想マシン上で実行される。
記事では、これらの各段階をPythonで実装する具体的なコード例が示されている。例えば、字句解析では、reモジュールを使って正規表現を定義し、トークンを抽出する。構文解析では、Pythonの関数を使って文法規則を表現し、ASTを構築する。コード生成では、ASTをトラバース(巡回)しながら、対応するバイトコードを生成する。
このコンパイラが対象とするC言語のサブセットは、非常に限定的だ。例えば、ポインタや構造体などの高度な機能はサポートされていない。しかし、基本的な変数宣言、算術演算、制御構造(if文、while文など)は実装されているため、簡単なCプログラムであればコンパイルして実行できる。
この記事を読むことで、コンパイラの基本的な仕組みを理解し、実際に動作するコンパイラを自分で作成できるという達成感が得られる。また、Pythonという比較的習得しやすい言語で実装されているため、コンパイラの内部構造を学ぶための良い入門となる。システムエンジニアを目指す上で、コンパイラの知識は、プログラミング言語の理解を深め、より効率的なコードを書くために役立つ。
さらに、この記事は、コンパイラの各段階における処理の流れを視覚的に理解するのに役立つ図解や説明も含まれているため、初心者でも無理なく読み進めることができるだろう。500行という短いコードで実装されているため、全体像を把握しやすく、細部まで理解しやすいという利点もある。