【ITニュース解説】RaccoonO365 Phishing Network Dismantled as Microsoft, Cloudflare Take Down 338 Domains
2025年09月17日に「The Hacker News」が公開したITニュース「RaccoonO365 Phishing Network Dismantled as Microsoft, Cloudflare Take Down 338 Domains」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
MicrosoftとCloudflareが協力し、フィッシングネットワーク「RaccoonO365」を解体した。このグループは338のドメインを使用し、2024年7月以降、94カ国で5,000件以上のMicrosoft 365認証情報を盗んでいた。これにより不正な活動が停止された。
ITニュース解説
今回のニュースは、インターネット上で大規模なフィッシング詐欺を展開していた「RaccoonO365」というサイバー犯罪グループのネットワークが、MicrosoftとCloudflareという二つの大手IT企業の協力によって解体されたという内容だ。RaccoonO365は、金銭的な利益を目的として活動する悪質な集団であり、特に「Phishing-as-a-service(Phaas)」という手法を使って、世界中の人々から重要な情報を盗み出していた。
フィッシングとは、実在する企業やサービスを装った偽のウェブサイトやメールを送りつけ、ユーザーを騙してパスワードやクレジットカード情報などの個人情報を盗み出す詐欺行為である。RaccoonO365が用いたPhishing-as-a-service(Phaas)は、このフィッシング攻撃を行うためのツールやインフラを、他の犯罪者に「サービス」として提供するビジネスモデルを指す。これは、技術的な知識がほとんどない人物でも簡単にフィッシング攻撃を実行できるようにするものであり、サイバー犯罪の敷居を大きく下げてしまう点で深刻な問題を引き起こす。
この犯罪グループが特に標的としていたのは、Microsoft 365の認証情報であった。Microsoft 365は、WordやExcelといったおなじみのOfficeアプリケーション群だけでなく、メールサービスやクラウドストレージなど、ビジネスシーンで不可欠な多くのサービスを統合して提供するプラットフォームだ。このMicrosoft 365の認証情報、つまりユーザー名とパスワードを盗むことで、攻撃者は被害者のメールボックスを乗っ取ったり、クラウド上の機密データにアクセスしたり、さらにはその情報を使って企業の内部ネットワークへの侵入を試みたりするなど、広範囲にわたる不正行為を行うことが可能となる。
RaccoonO365の活動規模は非常に大きく、2024年7月以降、彼らが提供したフィッシングツールを通じて、94カ国に及ぶユーザーから5,000件以上のMicrosoft 365認証情報が盗まれていたことが判明している。認証情報が盗まれると、金銭的な被害に直結するだけでなく、個人情報が不正に利用されたり、企業においては業務の停止や顧客からの信頼失墜など、計り知れない損害が発生する可能性がある。
このような大規模なサイバー犯罪に対抗するため、Microsoftは自社の「Digital Crimes Unit(DCU)」、すなわちデジタル犯罪対策部門を立ち上げている。DCUは、サイバー犯罪の調査と撲滅を専門とする部署であり、世界中の法執行機関や他のIT企業と連携して活動している。今回の事件では、DCUがCloudflareという企業と協力体制を組んだ。Cloudflareは、ウェブサイトのセキュリティ保護や高速化、インターネットインフラの提供などを手掛ける大手企業である。
Microsoft DCUとCloudflareは連携し、ニューヨーク南部地区の裁判所から特別な命令を取得した。この裁判所命令に基づき、RaccoonO365がフィッシング攻撃に利用していた338ものドメインが差し押さえられた。ドメインとは、インターネット上のウェブサイトのアドレス(例: example.com)を構成するもので、インターネットにおける「住所」のような役割を果たす。RaccoonO365は、これらのドメインを利用して、本物のMicrosoft 365のログインページそっくりに作られた偽のウェブサイトを運営し、 unsuspecting user (無自覚なユーザー) から認証情報を盗んでいたのである。
ドメインの差し押さえは、サイバー犯罪ネットワークを無力化する上で極めて効果的な手段である。なぜなら、偽のウェブサイトにユーザーを誘導するためには、そのドメインが必要不可欠だからだ。裁判所命令によってドメインが差し押さえられると、そのドメインは犯罪グループの手から離れ、ウェブサイトは機能しなくなる。これにより、RaccoonO365が提供していたフィッシングキットを使った新たな攻撃を阻止できるだけでなく、すでに進行中の攻撃も無力化できる。
Cloudflareは、多くのウェブサイトのドメイン登録やDNS(Domain Name System)管理にも関わっている。DNSは、ドメイン名とIPアドレスを結びつけるシステムで、インターネット上の「電話帳」のような働きをする。Cloudflareが協力することで、差し押さえられたドメインが迅速かつ確実に機能停止させられ、偽サイトへのアクセスを完全に遮断することが可能となる。これは、サイバー犯罪者が新しいドメインを登録し直すまでの時間を稼ぎ、被害を最小限に抑える上で非常に重要だ。
今回のRaccoonO365の解体は、サイバー犯罪がどれほど組織的かつ広範に行われているか、そしてそれに対抗するためには、単一の企業だけでなく、複数の企業や法執行機関が緊密に連携することの重要性を示している。システムエンジニアを目指す人々にとって、このようなニュースは、現代のITシステムにおいてサイバーセキュリティがいかに不可欠な要素であるかを深く理解する良い機会となるだろう。
クラウドサービスの利用が日常的になる中で、ユーザーの認証情報を守ることは、最も基本的でありながら最も重要なセキュリティ対策の一つである。フィッシング攻撃は、システムの技術的な脆弱性だけを突くものではなく、人間の心理的な隙を狙う「ソーシャルエンジニアリング」と呼ばれる手法が多く用いられるため、ユーザー一人ひとりのセキュリティ意識やリテラシーの向上も不可欠となる。
ITインフラを支えるドメイン管理やDNS設定、そしてそれらに対する攻撃手法とその防御策に関する知識は、システムエンジニアとしてキャリアを築く上で避けて通れない重要な分野だ。今回のRaccoonO365ネットワークの解体は、サイバー空間で行われているセキュリティ攻防の最前線の一例であり、今後もこのような戦いは続いていくことが予想される。システムを構築し、安全に運用していくためには、常にセキュリティの観点を意識し、最新の脅威に対する知識をアップデートし続けることが強く求められる。