【ITニュース解説】Rockwell Automation製Arena Simulationにおける複数の脆弱性

作成日: 更新日:

ITニュース概要

Rockwell Automation社のシミュレーションソフト「Arena Simulation」に複数の脆弱性が発見された。悪意ある第三者に不正なコードを実行される恐れがあるため、開発者が提供する最新バージョンへのアップデートが必要である。

ITニュース解説

企業の生産ラインやビジネスプロセスをコンピューター上で再現し、効率化や問題点を発見するためのシミュレーションソフトウェア「Arena Simulation」において、セキュリティ上の複数の弱点である脆弱性が発見された。この脆弱性は、攻撃者によって悪用された場合、ソフトウェアが動作しているコンピューターを制御されたり、重要な情報を盗まれたりする危険性を含んでいる。システムエンジニアを目指す上で、このようなソフトウェアの脆弱性がどのような仕組みで発生し、どのような脅威をもたらすのかを理解することは非常に重要である。 今回発見された脆弱性は、大きく分けて二つの種類に分類される。一つは「バッファオーバーフロー」および「境界外書き込み」と呼ばれる問題である。コンピュータープログラムは、データを処理する際に、一時的に情報を保存するためのメモリ領域を確保する。この領域は「バッファ」と呼ばれ、あらかじめ決められた大きさを持っている。バッファオーバーフローとは、この決められた大きさの領域に、想定を超える量のデータを送り込むことで、データがバッファから溢れ出てしまう現象を指す。溢れ出たデータは、隣接する別のメモリ領域に意図せず書き込まれ、そこに保存されていたプログラムの正常な動作を制御するための重要な情報を破壊したり、書き換えたりする。攻撃者は、この溢れさせるデータの中に、自身が実行させたい悪意のあるプログラムのコードを巧妙に仕込んでおく。プログラムが不正に書き換えられた結果、この悪意のあるコードが実行されてしまい、最終的にコンピューターが乗っ取られるといった事態につながる。今回のArena Simulationのケースでは、攻撃者が特別に細工したシミュレーションファイル(拡張子が.p, .mod, .doeなど)をユーザーに開かせることで、このバッファオーバーフローを引き起こし、任意のコードを実行できる可能性がある。 もう一つの脆弱性は、プログラムが外部の機能を利用する際の仕組みに関連する。「DLL(ダイナミックリンクライブラリ)」と呼ばれる、様々なプログラムから共通して利用される機能部品のファイルを読み込む際のプロセスに不備が存在する。プログラムは、特定の機能が必要になったとき、対応するDLLファイルをコンピューター内から探し出して読み込む。通常、DLLファイルはWindowsのシステムフォルダのような信頼できる場所に保管されており、プログラムはそこから探し出すように設計されている。しかし、今回の脆弱性では、このDLLファイルを探す検索順序に問題があった。プログラムが、正規の安全なフォルダよりも先に、別の特定のフォルダを確認してしまう。攻撃者はこの隙を突き、本来読み込まれるべきDLLファイルと同名の、悪意のあるコードを仕込んだ偽のDLLファイルを、プログラムが先に検索してしまうフォルダに配置することが可能になる。これにより、プログラムは偽のDLLファイルを本物と誤認して読み込み、結果として攻撃者の仕込んだコードが実行されてしまう。この攻撃手法は「DLLハイジャック」とも呼ばれ、攻撃者がシステム上でより高い権限、例えば管理者権限などを不正に取得する「権限昇格」につながる危険性がある。 これらの脆弱性が悪用された場合のリスクは深刻である。任意コードの実行が可能になると、攻撃者はそのコンピューター上でほぼ全ての操作が可能になる。マルウェアをインストールして情報を盗み出したり、ファイルを暗号化して身代金を要求したり、他のシステムへの攻撃の踏み台として利用したりするなど、被害は多岐にわたる。また、権限昇格が成功すれば、攻撃者はシステムの正規の管理者になりすますことができるため、新たなユーザーアカウントの作成、セキュリティ設定の無効化、システム内のあらゆるデータへのアクセスなど、コンピューターを完全に支配することが可能となる。Arena Simulationは製造業や物流など、企業の基幹業務の計画・設計に利用されるソフトウェアであるため、シミュレーションデータや設計情報といった機密情報が漏洩したり、改ざんされたりすれば、企業の事業活動に直接的な損害を与える可能性も否定できない。 この問題に対する最も確実な対策は、ソフトウェアの開発元であるRockwell Automationが提供している修正済みの最新バージョンにアップデートすることである。ソフトウェアのアップデートには、新機能の追加だけでなく、今回のような発見された脆弱性を修正する重要な役割がある。また、すぐにアップデートが適用できない場合の次善策として、基本的なセキュリティ対策を徹底することも重要となる。具体的には、電子メールの添付ファイルやウェブサイトからダウンロードしたファイルなど、提供元が不明な、あるいは信頼できないファイルは絶対に開かないということである。今回の脆弱性も、ユーザーが細工されたファイルを開くことが攻撃の起点となるため、この基本原則を守ることでリスクを大幅に低減できる。 ソフトウェアの脆弱性は、特定の製品に限らず、あらゆるプログラムに存在する可能性がある。システムエンジニアは、自身が関わるシステムを安全に保つため、利用しているソフトウェアの脆弱性情報に常に注意を払い、その内容を理解し、迅速かつ適切な対策を講じる責任がある。今回の事例は、ソフトウェアの仕組みに潜む弱点がどのように悪用されるのか、そしてそれに対してどう対処すべきかを学ぶための具体的な教訓と言えるだろう。

【ITニュース解説】Rockwell Automation製Arena Simulationにおける複数の脆弱性