【ITニュース解説】露攻撃グループ、「Cisco IOS」旧脆弱性を悪用 - 制御システムにも関心

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ITニュース概要

ロシア政府が支援する攻撃グループが、Cisco製品の既知の脆弱性を悪用し、重要インフラやネットワーク機器へ侵入している。侵入後には産業用制御システムへも関心を示したとして、米FBIが注意喚起を行った。

ITニュース解説

ロシア政府の支援を受けるサイバー攻撃グループ「Static Tundra」が、ネットワーク機器の古い脆弱性を悪用し、米国の重要インフラを標的にしていたことが明らかになった。この攻撃は、単に情報を盗むだけでなく、社会基盤そのものを脅かす可能性を秘めており、システムエンジニアを目指す上で知っておくべき重要な教訓を含んでいる。 今回の攻撃で悪用されたのは、シスコシステムズ社製のネットワーク機器に搭載されている「Cisco IOS」というオペレーティングシステムの脆弱性だ。Cisco IOSは、インターネットの世界でデータの通り道を制御するルーターやスイッチを動かすための基本ソフトウェアであり、いわばインターネットの交通整理を担うシステムである。この心臓部に存在するセキュリティ上の欠陥、つまり「脆弱性」を突くことで、攻撃者は機器を不正に操作する権限を奪取しようとした。具体的に悪用された脆弱性は「CVE-2017-6742」という識別番号で管理されており、発見されたのは2017年と、かなり以前のものである。なぜ、これほど古い脆弱性が今もなお攻撃に利用されるのか。その背景には、多くの組織が抱える「パッチ管理」の問題がある。ソフトウェアに脆弱性が発見されると、開発元はそれを修正するための更新プログラム、通称「パッチ」を配布する。システム管理者はこのパッチを適用することで、セキュリティホールを塞ぎ、システムを安全な状態に保つ。しかし、一度導入して安定稼働しているネットワーク機器のソフトウェアを更新する作業は、通信の瞬断を伴うなど、業務への影響を考慮して後回しにされがちである。攻撃者は、こうした管理の隙を見逃さない。彼らは、世の中に存在する無数の機器の中から、パッチが適用されずに放置されている古い脆弱性を持つものを探し出し、効率的に攻撃を仕掛けてくる。最新の高度な攻撃手法だけでなく、このような古くから知られた手法でも、対策が疎かになっていれば容易に侵入を許してしまうという現実を示している。 Static Tundraがネットワークに侵入した後、特に「産業用制御システム(ICS)」へ強い関心を示したという点が、この事件の最も憂慮すべき点だ。産業用制御システム、通称ICSとは、電力網、水道施設、ガスパイプライン、工場の生産ラインといった、私たちの生活に不可欠な社会インフラを監視・制御するための専門的なシステム群を指す。つまり、攻撃者の狙いは、企業のサーバーに侵入してデータを盗むといった従来のサイバー攻撃の範疇を超え、物理的な社会インフラを直接コントロールすることにあった可能性が高い。もし攻撃者がICSの制御を奪うことに成功すれば、大規模な停電を引き起こしたり、浄水場の機能を停止させたり、工場の機械を暴走させて物理的に破壊したりするなど、サイバー空間の脅威が現実世界の深刻な被害へと直結する事態になりかねない。このような攻撃は、一国の経済活動や市民の安全を根底から揺るがすことができるため、国家間の紛争における攻撃手段としても利用されうる。今回の攻撃グループがロシア政府の支援を受けているとされる背景には、こうした国家レベルの思惑が存在すると考えられており、サイバーセキュリティが単なる技術的な問題ではなく、国家安全保障に直結する重要な課題であることを浮き彫りにしている。 このニュースは、将来システムエンジニアとして活躍することを目指す人々にとって、多くの示唆を与えてくれる。第一に、セキュリティ対策の基本がいかに重要であるかという点だ。最新の攻撃手法ばかりに目を奪われがちだが、実際には既知の脆弱性を放置することが最も大きなリスクとなるケースが多い。システムの設計や構築だけでなく、運用段階における地道なパッチ適用や設定の見直しといった「セキュリティ衛生」を徹底することが、あらゆる攻撃に対する最も効果的な防御策の第一歩となる。第二に、多層防御の考え方を身につけることの重要性だ。仮にネットワーク機器の脆弱性を突かれて侵入を許したとしても、その先の重要なシステム(今回の場合はICS)へのアクセスを制限する仕組みや、異常な通信を検知して警告する監視システムがあれば、被害を最小限に食い止めることができる。一つの防御壁に頼るのではなく、複数の防御策を幾重にも張り巡らせることで、システムの堅牢性を高める必要がある。そして最後に、自らが関わるシステムが社会に与える影響を常に意識することだ。特に重要インフラに関わるシステムエンジニアは、自らの仕事が人々の生活や安全を支えているという強い責任感を持たなければならない。一つの設定ミスや見落としが、社会全体に計り知れない影響を及ぼす可能性があることを肝に銘じ、日々の業務に取り組む姿勢が求められる。サイバー攻撃はますます巧妙化・高度化しているが、その原点には今回のような基本的なセキュリティ対策の不備を突くものが少なくない。この事例を教訓とし、基礎を疎かにせず、常に警戒を怠らないことが、信頼されるエンジニアへの道となるだろう。

【ITニュース解説】露攻撃グループ、「Cisco IOS」旧脆弱性を悪用 - 制御システムにも関心