【ITニュース解説】rustdesk / rustdesk

作成日: 更新日:

ITニュース概要

オープンソースのリモートデスクトップソフト「RustDesk」が登場。TeamViewerの代替として利用でき、自前のサーバーで運用(セルフホスティング)可能なため、外部サービスに依存せず安全に遠隔操作環境を構築できる。

出典: rustdesk / rustdesk | GitHub Trending公開日:

ITニュース解説

遠隔地にあるコンピュータを、手元のコンピュータから操作する「リモートデスクトップ」は、現代のIT環境において不可欠な技術である。テレワークでの社内PCへのアクセス、データセンターにあるサーバーのメンテナンス、あるいは遠方に住む家族や友人のPCトラブルをサポートするなど、その活用場面は多岐にわたる。この分野ではTeamViewerやAnyDeskといった商用サービスが広く知られているが、これらは通常、サービス提供者が管理する中央サーバーを経由して接続を確立する。この手軽さの一方で、利用者はサービスの利用規約やセキュリティポリシーに依存することになり、商用利用ではライセンス費用が発生する場合もある。こうした中、新たな選択肢として注目を集めているのが、オープンソースのリモートデスクトップソフトウェア「RustDesk」である。 RustDeskは、その名の通りプログラミング言語Rustで開発された、オープンソースのソフトウェアだ。オープンソースであるということは、ソースコードが全世界に公開されており、誰でもその仕組みを確認し、自由に利用、改変、再配布できることを意味する。これにより、ソフトウェアに悪意のあるコードが仕込まれていないかを自分自身で検証できるため、高い透明性と信頼性が確保される。また、ライセンス費用が原則として発生しないため、個人利用から企業での大規模な導入まで、コストを大幅に抑制できるという大きなメリットがある。コミュニティによる開発が活発に行われれば、機能の追加やセキュリティ脆弱性の修正が迅速に行われることも期待できる。 RustDeskの最も重要な特徴は、「セルフホスティング」を前提として設計されている点にある。セルフホスティングとは、ソフトウェアを動作させるためのサーバー環境を、サービス提供者に頼るのではなく、自分自身で構築・管理・運用することを指す。一般的なリモートデスクトップサービスでは、接続したいPC同士を仲介するIDサーバーや、通信を中継するリレーサーバーは、サービス提供者が用意したものを使用する。これに対してRustDeskでは、これらのサーバー機能を自前のサーバー上に構築できる。つまり、リモートデスクトップ接続に関するすべての通信データを、完全に自分たちの管理下に置くことが可能になるのだ。これは、第三者のサーバーを経由することによる情報漏洩のリスクを根本的に排除したいと考える企業や、プライバシーを最大限に重視するユーザーにとって、非常に強力な利点となる。外部のネットワークに直接公開されていない社内ネットワーク上のPCに、安全にリモートアクセスするためのインフラを自前で構築できるため、セキュリティポリシーを厳格に適用したい場合に最適なソリューションとなり得る。 セルフホスティング環境を構築するには、ID/Rendezvousサーバー、リレーサーバーといったコンポーネントを自分で用意したサーバーマシンにインストールし、設定する必要がある。IDサーバーは各クライアントPCに一意のIDを割り当て、接続要求があった際に相手のIPアドレスを教える役割を担う。リレーサーバーは、ファイアウォールなどの影響でPC間の直接通信(P2P接続)が確立できない場合に、通信データを中継する役割を持つ。これらのサーバーを自分で運用することで、通信経路のすべてを把握し、コントロールできるのである。もちろん、手軽に試したいユーザーのために、開発者が提供する公開サーバーを利用するオプションも用意されているが、RustDeskの真価はセルフホスティングによる完全な独立性の確保にあると言えるだろう。 技術的な側面では、開発言語にRustを採用している点も注目される。Rustは、メモリ管理の安全性が極めて高く、意図しないバグやセキュリティ脆弱性を生み出しにくい言語として知られている。リモートデスクトップのような、外部からのアクセスを受け付け、重要なデータをやり取りするソフトウェアにおいて、この言語特性は非常に重要である。加えて、RustはC++に匹敵する高いパフォーマンスを発揮するため、遅延の少ない快適なリモート操作体験を実現する上でも有利に働く。さらに、RustDeskはWindows、macOS、Linuxといった主要なデスクトップOSはもちろん、iOSやAndroidといったモバイルOS、さらにはWebブラウザ上でも動作するクライアントを提供しており、非常に幅広いプラットフォームに対応している。これにより、どんなデバイスからでも目的のPCにアクセスできるという高い利便性を実現している。 システムエンジニアを目指す初心者にとって、RustDeskは単なる便利なツールにとどまらない。そのセルフホスティング環境を自ら構築するプロセスは、サーバー構築、ネットワーク設定、DNS、ポートフォワーディング、そしてセキュリティ管理といった、インフラエンジニアに必須の知識とスキルを実践的に学ぶための絶好の教材となる。オープンソースソフトウェアを活用して、自分たちの要件に合わせたシステムを構築するという経験は、現代のIT業界で働く上で極めて価値が高い。RustDeskを通じて、インフラを自らコントロールする感覚と、そのために必要な技術を体系的に学んでいくことができるだろう。

【ITニュース解説】rustdesk / rustdesk