【ITニュース解説】Creating a boot-loader from scratch... Meet: RustyBoot!
2025年09月16日に「Dev.to」が公開したITニュース「Creating a boot-loader from scratch... Meet: RustyBoot!」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
RustyBootは、Rustで書かれたx86ブートローダーだ。EXTファイルシステムからELFカーネルを読み込み、OS起動を担う。Rustのメモリ安全性と効率性を活かし、低レベルシステムプログラミングの仕組みを学ぶのに適したプロジェクトだ。
ITニュース解説
コンピューターの電源ボタンを押したとき、画面にOSのロゴが表示されるまでに何が起こっているのか、疑問に思ったことはないだろうか。実は、コンピューターが起動する最初の瞬間には、OSを動かすための準備が秘密裏に進められている。この重要な役割を担うのが「ブートローダー」だ。ブートローダーは、コンピューターの基本的なプログラム(ファームウェア)からOSの核となる部分(カーネル)へ処理を引き継ぐための仲介役である。今回紹介する「RustyBoot」は、このブートローダーをプログラミング言語Rustで一から作り上げたプロジェクトである。RustyBootは、特に低レベルのシステムプログラミングの世界を探求する上で、非常に興味深い試みと言える。Rustという言語が持つ安全性を活かし、x86アーキテクチャのコンピューターで動作するシングルステージのブートローダーとして、EXTファイルシステムからELF形式のカーネルを読み込んで起動できる。
RustyBootは、OSが存在しない「ベアメタル」環境で動作するブートローダーだ。Rustの標準ライブラリを使わず(no_std環境)、エラーが発生した際には即座にプログラムを終了する(panic=abort)設定で、極めて限定されたリソースの中で動作するよう設計されている。主な機能として、EXT2/EXT3/EXT4といったLinuxなどで広く使われるファイルシステムを読み込む能力を持つ。これは、OSのカーネルが通常これらのファイルシステムに保存されているため、ブートローダーがカーネルを見つけ出すために不可欠な機能だ。さらに、ハードディスクと直接やり取りするためのATA PIOディスクドライバーを内蔵し、ディスクから直接データを読み書きできる。OSカーネルのプログラムファイルとして一般的なELF32形式のファイルを解析し、メモリにロードする機能も備えている。初期の段階では、1MBから8MBのメモリ領域を管理するシンプルなメモリ割り当て機能や、テキスト形式で画面にメッセージを表示するVGAコンソール出力も実装されている。
RustyBootの内部アーキテクチャは、コンピューターの起動からカーネルへ制御を渡すまでの一連のプロセスをモジュール化して扱っている。その流れは、まずコンピューターがハードウェアリセットされた後、VGA(画面表示)やメモリ、そしてATA PIO(ディスク操作)の初期化が行われる。次に、ハードディスクの先頭にあるMBR(マスターブートレコード)を解析し、どのパーティションにOSがあるかを特定する。そのパーティションがEXTファイルシステムであれば、その構造を読み解き、指定されたパス(例: /boot/vmlinuz)からカーネルファイルを探し出す。カーネルファイルが見つかると、それがELF32形式であるかを検証し、カーネルをメモリ上の適切な場所にロードする。最後に、OSカーネルが必要とするメモリ領域を確保し、ブートローダーからOSカーネルへと処理のバトンを渡すことで、OSの起動が始まる。
伝統的にブートローダーはアセンブリ言語やC言語で書かれることが多かったが、RustyBootがRustを選んだのには明確な理由がある。最大の利点は「メモリ安全性」だ。Rustの所有権システムは、C言語で頻繁に発生するバッファオーバーフローやヌルポインタの参照解除といったメモリ関連のバグを、コンパイル時に未然に防いでくれる。ブートローダーのような低レベルなプログラムでは、ごくわずかなエラーもシステム全体の停止につながるため、このメモリ安全性は非常に重要だ。さらに、Rustは「ゼロコスト抽象化」という特徴も持つ。これは、イテレーターやパターンマッチングといった高レベルなプログラミング構造を使っても、それがコンパイルされると効率の良いアセンブリコードになり、実行速度にほとんど影響を与えないことを意味する。これにより、C言語に比べて可読性が高く、メンテナンスしやすいコードを記述できる。また、Rustの豊かな型システムは、MBRのパーティションテーブルやELFのヘッダーといった複雑なデータ構造を、より安全かつ厳密にモデル化するのに役立つ。
RustyBootの構築には、カスタムのターゲット仕様ファイルとリンカスクリプトが使われている。ターゲット仕様ファイルは、コンパイラに対して、i686(32ビットx86)プロセッサ向けで、OSを持たない「なし」の環境でビルドするよう指示する。これにより、標準ライブラリに依存しない、純粋なベアメタルプログラムが生成される。リンカスクリプトは、生成されたバイナリのメモリ上での配置を定義するもので、特にプログラムの実行コード部分(.textセクション)を特定のメモリアドレス(0x8000)に配置することで、x86のリアルモードでの実行に適した形に調整している。ファイルシステムの実装では、EXTファイルシステムのスーパーブロックという、ファイルシステムの基本情報を格納する領域を検証する処理が含まれる。ここでは、マジックナンバーと呼ばれる識別子が正しいかを確認し、まだサポートされていない複雑な機能(例: エクステント)を持つファイルシステムを拒否することで、シンプルさと信頼性を優先している。
RustyBootは、Rustのコンポーネントをインストールし、makeコマンドを使ってビルドからQEMUというエミュレーターでの実行までを試せるように設計されている。これにより、実際のハードウェアがなくても、開発環境でブートローダーの動作を確認できる。現在のRustyBootは学習目的のため、いくつかの意図的な制限がある。例えば、32ビットのx86環境のみに対応しており、現代のほとんどのコンピューターで使われる64ビット環境(ロングモード)には対応していない。また、単一のディスク(プライマリーマスターATA PIO)のみをサポートし、読み込めるファイルサイズも最大1MBに制限されている。これらは、コードベースをシンプルに保ち、ブートローダー開発の基本的な概念に集中できるようにするためのものだ。
RustyBootの開発は、ハードウェアの抽象化(ATAコントローラーやVGAハードウェアとの直接のやり取り)、ファイルシステム(EXTの内部構造)、メモリ管理、ELFバイナリ形式の解析、そしてRustを組み込み環境で利用する方法など、システムプログラミングに関する貴重な知識を得る機会を与えてくれる。今後の拡張としては、より多くのファイルシステム(FATなど)への対応、64ビット環境への移行、UEFI(Unified Extensible Firmware Firmware Interface)への対応、そしてエラーハンドリングの強化などが考えられている。Rustを使ったOS開発は、近年注目されている分野であり、ブートローダーはその入り口として非常に魅力的なテーマだと言える。