【ITニュース解説】複数のSchneider Electric製品における複数の脆弱性

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ITニュース概要

Schneider Electric社の複数の製品に、セキュリティ上の弱点である脆弱性が複数発見された。悪用されると不正アクセスや情報漏洩につながる恐れがあるため、該当製品の利用者は公式情報を確認し、対策が必要だ。

ITニュース解説

フランスの電機大手シュナイダーエレクトリック社が提供する複数の製品において、深刻なものを含む多数の脆弱性が発見された。このニュースは、特に社会インフラを支える産業用制御システム(ICS)やビルディングオートメーション製品に影響が及ぶため、IT業界で大きな注目を集めている。システムエンジニアを目指す上で、こうした脆弱性情報がなぜ重要なのか、その内容と対策について詳しく解説する。 まず、「脆弱性」とは、ソフトウェアの設計ミスやプログラムの不具合によって生じる、セキュリティ上の弱点や欠陥のことである。この弱点を悪意のある第三者に悪用されると、システムへの不正侵入、重要なデータの窃取、システムの停止といった様々な被害を引き起こす可能性がある。今回のシュナイダーエレクトリック社の製品群で見つかった脆弱性も、それぞれが深刻な影響を及ぼしかねないものである。 今回の発表で特に危険視されているのは、「リモートコード実行(RCE)」を許してしまう脆弱性だ。これは、攻撃者がインターネットなどのネットワークを経由して、遠隔から対象のシステム上で任意のプログラムを自由に実行できてしまうという、最も危険度の高い脆弱性の一つである。例えば、電力設備の制御に使われる「Easergy P5」や「Easergy P3」といった製品には、不正なデータを送り込まれることで、攻撃者にシステムを完全に乗っ取られる可能性がある脆弱性(CVE-2023-44243)が存在する。システムを乗っ取られると、マルウェアに感染させられたり、設定を不正に変更されたり、最悪の場合は設備を破壊されたりする危険性がある。 また、「不適切な認証」に関する脆弱性も複数報告されている。通常、システムの重要な操作を行うには、IDとパスワードによる認証が必要だが、この脆弱性があると、認証プロセスを迂回して不正な操作が可能になる。具体的には、認証なしでシステム内のファイルを自由に読み書きしたり削除したりできる脆弱性(CVE-2023-44245)や、遠隔から機器を勝手に再起動させられる脆弱性(CVE-2023-44246)が見つかっている。これにより、システムの正常な運用が妨害されたり、設定情報が盗まれたりする恐れがある。 さらに、古くから知られる攻撃手法につながる「バッファオーバーフロー」の脆弱性も確認されている。これは、プログラムが想定しているメモリ領域(バッファ)を超えるサイズのデータを送り込むことで、メモリをあふれさせ、その結果として意図しないプログラムを実行させる攻撃である。ビル管理システムに使われる「SpaceLogic C-Bus Home Controller」などには、この脆弱性(CVE-2023-6590)が存在し、リモートからのコード実行や、システムを応答不能にするサービス運用妨害(DoS)攻撃につながる可能性がある。DoS攻撃を受けると、工場の生産ラインが停止したり、ビルの空調や照明が制御不能になったりするなど、現実世界に直接的な影響が及ぶ。 これらの脆弱性が特に重要視される理由は、影響を受ける製品が私たちの生活に密接に関わる重要インフラで広く利用されている点にある。ひとたびこれらのシステムでセキュリティインシデントが発生すれば、その被害は単なるデータの損失にとどまらず、大規模な停電や生産停止、物理的な損害といった、社会経済活動に甚大な影響を与える事態に発展しかねない。システムエンジニアは、ITシステムだけでなく、それが制御する物理的な世界(OT: Operational Technology)の安全性も考慮する必要があることを、このニュースは示している。 このような脆弱性に対して、システム管理者が取るべき対策は、まずメーカーが提供する修正プログラム、通称「パッチ」を適用してソフトウェアを最新バージョンにアップデートすることである。シュナイダーエレクトリック社も、対象製品のファームウェアやソフトウェアのアップデートを公開し、適用を強く推奨している。しかし、24時間365日稼働し続ける産業用システムなどでは、すぐにシステムを停止してアップデート作業を行うのが難しい場合もある。 そのような場合には、「緩和策」と呼ばれる次善の策を講じることが重要になる。例えば、脆弱性のあるシステムが外部のインターネットから直接アクセスできないように、ファイアウォールで通信を厳しく制限する。また、重要な制御システムが接続されているネットワークを、社内の事務用ネットワークなど他のネットワークから物理的または論理的に分離する「ネットワークセグメンテーション」も非常に有効な対策である。これにより、万が一、他のシステムがマルウェアに感染しても、重要な制御システムへ被害が及ぶのを防ぐことができる。 システムエンジニアを目指す者にとって、今回の事例は、自身が関わるシステムのセキュリティを確保することの重要性を改めて認識させるものである。自社が利用しているソフトウェアやハードウェア製品の脆弱性情報を、JVN(Japan Vulnerability Notes)やメーカーの公式サイトなどで日常的に収集し、新たな脅威に迅速に対応できる知識と体制を身につけることが不可欠だ。このニュースは、単一のメーカーの問題ではなく、現代社会を支えるあらゆるシステムに共通する課題を提示しており、将来のエンジニアにとって貴重な教訓となるだろう。

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