【ITニュース解説】How Does SeaTunnel Perform "Precise Sharding" for MySQL Tables?
2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「How Does SeaTunnel Perform "Precise Sharding" for MySQL Tables?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
データ統合ツールApache SeaTunnelは、MySQLの巨大テーブルを高速に読み込むためデータを分割して並列処理する。データの分布状況を自動で分析し、「均等」「不均等」「サンプリング」の3つの戦略を賢く使い分けることで、効率的なデータ分割を実現する。
ITニュース解説
SeaTunnelのMySQL CDCコネクタは、大規模なMySQLテーブルからデータを効率的に読み込むために、「シャーディング」という手法を使ってデータを分割し、複数の処理で並列に読み込む仕組みを備えている。これは、大量のデータを一度に処理しようとすると時間がかかりすぎるため、仕事を細かく分けて、多くの人が同時に作業するようなものだと考えると理解しやすいだろう。
まず、SeaTunnelがどのようにテーブルを分割するかというと、分割の基準となる「シャーディングカラム」を選ぶことから始まる。このカラムは、テーブルの中からデータを分割するのに適した列を指す。選ばれる優先順位は、ユーザーが直接指定したカラムが最も高く、次にテーブルの主キー、その次にユニークキーが候補となる。もし適切なカラムが見つからない場合は、テーブル全体を一つのまとまりとして扱う「シングルスプリット」モードになるが、これでは並列処理のメリットが得られず、大量データ処理の効率は落ちてしまう。シャーディングカラムとして使えるデータ型には限りがあり、数値型(TINYINT、SMALLINT、INT、BIGINT、DECIMAL)と文字列型(STRING)がサポートされている。日付や時刻を扱うDATETIMEやTIMESTAMP型は、残念ながらMySQL CDCコネクタではシャーディングカラムとして使うことができない点には注意が必要だ。これらの型しかインデックスがないテーブルでは、シャーディングができずにシングルスプリットになってしまう。選ばれるデータ型にも優先順位があり、TINYINTが最も優先され、BIGINT、DECIMAL、STRINGの順で優先度が下がる。これは、一般的に数値型の方がデータの分布を扱いやすいとされているためである。
次に、SeaTunnelは選ばれたシャーディングカラムとテーブルの特性に基づいて、どの分割戦略を使うかを決定する。この決定は、データの分布具合やテーブルのサイズといった要因を考慮した、賢いアルゴリズムによって行われる。重要な指標となるのが「分布要因(distributionFactor)」だ。これは、シャーディングカラムの最小値から最大値までの範囲と、テーブルの概算行数を使って計算される。例えば、(最大値 - 最小値 + 1) / 概算行数という式で求められる。この分布要因が約1.0に近い場合、データはIDが連続していて均一に分布していると判断できる。もし100よりはるかに大きければ、IDの範囲は広いのに実際のデータ行数が少ない「疎なデータ」であることを示し、逆に0.05よりはるかに小さければ、同じID値に多くの行が集中している「密なデータ」であることを示す。
この分布要因と、各スプリットに含める行数の目安(chunkSize、デフォルトは8096行)、そしてサンプリング戦略を発動させるかどうかの閾値(sampleShardingThreshold、デフォルトは1000)という設定値をもとに、SeaTunnelは3つのコアなシャーディング戦略の中から最適なものを選択する。
一つ目の戦略は「均一シャーディング」である。これは、シャーディングカラムが数値型で、データの分布が比較的均一であると判断された場合に適用される。分布要因が0.05から100の範囲内であれば均一とみなされることが多い。この戦略では、スプリットの開始値と終了値を計算し、ほぼ均等なサイズのデータ範囲に分割していく。例えば、IDが1から10万まで均等に分布しているテーブルで、1000行ごとにスプリットするなら、[1, 1000]、[1001, 2000]というように、規則正しく分割される。
二つ目の戦略は「非均一シャーディング」である。これは、データの分布が均一でない場合や、文字列型のように均等な分割が難しいカラムに対して適用される。この戦略では、次のスプリットの最大値を動的にデータベースに問い合わせながら、実際のデータ分布に合わせて分割範囲を決めていく。例えば、LIMIT句を使って「次の1000件の最大値は何か」といったクエリを繰り返し実行し、その結果を境界としてスプリットを作成する。これにより、データの偏りがあっても、各スプリットに含まれる行数がなるべく均一になるように調整できる。
三つ目の戦略は「サンプリングベースシャーディング」である。これは、テーブルが非常に大きく、かつデータの分布が極端に非均一である場合に、特に効果を発揮する。推定されるスプリットの数がsampleShardingThreshold(デフォルト1000)を超えると、この戦略がトリガーされる。この方法では、まずテーブルから一部のデータを試しに取得し(サンプリング)、そのサンプリングされたデータの分布を見て、全体の分割境界を決定する。これにより、全データをスキャンするよりも効率的に、偏りのある大規模テーブルを適切に分割できる。
これらのシャーディング戦略は、内部で様々なSQLクエリを使って実現されている。例えば、テーブルの最小値や最大値を取得するクエリ、概算行数を取得するクエリ、非均一シャーディングのために次のチャンクの最大値を動的に取得するクエリ、そしてサンプリング戦略のためにデータを抽出するクエリなどが利用される。文字列型の場合には、ハッシュ関数(例: MySQLのCRC32やMD5)を使って文字列を数値に変換し、それを基に分割することもある。
SeaTunnelでは、これらのシャーディング戦略の挙動を細かく調整するための設定パラメータが用意されている。例えば、snapshot.split.sizeというパラメータで、各スプリットが含む行数の目安を調整できる。この値を小さくすれば、より多くのスプリットが生成され、並列度が高まるが、データベースへのクエリ回数も増える。逆に大きくすれば、スプリット数は減り、並列度は下がるが、クエリ回数は減る。また、chunk-key.even-distribution.factor.upper-boundやlower-boundといったパラメータを調整することで、分布要因がどの範囲であれば均一と判断するかを制御できるため、均一シャーディングが適用される条件を厳しくしたり緩めたりできる。sample-sharding.thresholdやinverse-sampling.rateを調整することで、サンプリング戦略がいつ発動するか、どれくらいの精度でサンプリングを行うかを制御できる。これらのパラメータを適切に設定することで、様々なデータ特性やビジネス要件に合わせて、シャーディングのパフォーマンスを最適化することが可能になる。例えば、並列処理性能を最大限に引き出したい場合は、スプリットサイズを小さくし、接続プールのサイズを増やすといった設定が考えられる。逆に、データベースへの負荷を抑えたい場合は、スプリットサイズを大きくしたり、サンプリングを避ける設定にしたりするなどの調整が行える。
まとめると、SeaTunnel MySQL CDCコネクタは、データの並列読み込みを可能にするために、シャーディングカラムの賢い選択、分布要因に基づいた適切な戦略の決定、そして均一、非均一、サンプリングベースという3つの柔軟なシャーディング戦略を組み合わせている。さらに、これらの挙動を細かく制御できる設定パラメータを提供することで、多種多様なMySQLテーブルの特性や運用環境に合わせて、効率的かつバランスの取れたデータ処理を実現しているのだ。