【ITニュース解説】操作より状態・性質に着目する
ITニュース概要
美しいコードを書くには、操作手順より状態や性質に着目することが重要。多くのエンジニアが見落としがちな点で、良いコードは状態を定義し、変化を管理することで予測可能性を高める。状態に着目することで、複雑さを減らし、堅牢で保守しやすいシステムを構築できる。
ITニュース解説
この記事は、美しく堅牢なコードを書くために、ソフトウェアエンジニアが意識すべき重要な視点について述べている。それは、「操作」に着目するのではなく、「状態・性質」に着目することだ。初心者エンジニアにとっては少し抽象的な概念かもしれないが、理解することでより良いコードを書けるようになるはずだ。 多くのプログラミング初心者は、まず「何をするか」という操作に焦点を当ててコードを書き始める。例えば、あるデータを処理する際に、「このデータを読み込んで、次にこの処理をして、最後にこの結果を出力する」というように、具体的な手順を順番に記述していく。これは手続き型プログラミングの典型的な考え方であり、最初は理解しやすい。しかし、このアプローチだけでは、複雑なシステムを構築する際に、コードが肥大化し、メンテナンスが困難になるという問題が生じやすい。 一方、「状態・性質」に着目するとは、データそのものが持つ属性や、システム全体の状態を意識してプログラミングすることだ。例えば、オンラインショッピングサイトで商品をカートに入れる機能を実装する場合を考えてみよう。「操作」に着目すると、「カートに商品を追加する」という具体的な処理を記述することになる。しかし、「状態・性質」に着目すると、「カート」というオブジェクトがどのような状態を持ち、どのような性質を持っているかを考える。カートには、商品のリスト、合計金額、配送先などの情報が含まれるだろう。そして、カートの状態が変化することで、様々な処理が自動的に発生するように設計する。例えば、カートに商品が追加されると、合計金額が自動的に更新される、といった具合だ。 オブジェクト指向プログラミングでは、この「状態・性質」に着目した考え方が重要になる。オブジェクトは、状態(属性)と振る舞い(メソッド)をまとめたものであり、オブジェクト同士がメッセージをやり取りすることでシステム全体が動作する。オブジェクトの内部状態を適切に管理し、状態の変化に応じて適切な振る舞いを定義することで、コードの再利用性、保守性、拡張性を高めることができる。 具体的に、記事では、エラー処理の例が挙げられている。多くの初心者は、エラーが発生した場合に、その場でエラー処理を行う。例えば、「もしファイルが存在しなかったら、エラーメッセージを表示してプログラムを終了する」というように記述する。しかし、「状態・性質」に着目すると、ファイルが存在しないという状態を検知し、その状態に応じて適切な処理を行うように設計する。例えば、ファイルが存在しない場合は、デフォルトの設定ファイルを作成したり、ユーザーにファイルを選択させたりすることができる。エラー処理を局所的な操作として捉えるのではなく、システム全体の状態遷移として捉えることで、より柔軟で堅牢なシステムを構築できる。 また、記事では、不変性(immutable)の重要性も強調されている。不変性とは、オブジェクトの状態が一度作成されたら変更できないという性質のことだ。不変オブジェクトを使用することで、予期せぬ状態変化を防ぎ、プログラムのバグを減らすことができる。例えば、文字列はJavaやPythonなどの言語では不変オブジェクトとして扱われる。文字列の値を変更するには、新しい文字列オブジェクトを作成する必要がある。このように、不変性を意識することで、並行処理における競合状態を防いだり、コードの安全性を高めたりすることができる。 「操作」ではなく「状態・性質」に着目するプログラミングは、最初は難しく感じるかもしれない。しかし、オブジェクト指向プログラミングの原則を理解し、状態管理、不変性、エラーハンドリングなどの概念を学ぶことで、徐々に身につけることができる。コードを書く際には、常に「このデータは何を表しているのか」「システム全体の状態はどうなっているのか」を意識し、操作ではなく状態に基づいてコードを設計するように心がけよう。そうすることで、より美しく、堅牢で、メンテナンスしやすいコードを書けるようになるだろう。