【ITニュース解説】Swift 6.1と6.2の主な新仕様

2025年09月04日に「Qiita」が公開したITニュース「Swift 6.1と6.2の主な新仕様」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

プログラミング言語Swiftの最新バージョン6.1と6.2で、プログラミングをよりスムーズにする新機能が多数実装された。例えば、リストの項目末尾にカンマがあってもエラーにならず、コードが書きやすくなった。開発効率を高める改善点だ。

出典: Swift 6.1と6.2の主な新仕様 | Qiita公開日:

ITニュース解説

Swiftは、Appleが開発したモダンでパワフルなプログラミング言語であり、iOSやmacOSなどのアプリケーション開発で広く利用されている。この言語は日々進化を続けており、新しいバージョンがリリースされるたびに、開発者がより効率的で安全なコードを書けるようになるための機能が追加されたり、既存の機能が改善されたりする。今回は、Swift 6.1と6.2で導入された主な新機能や変更点について、システムエンジニアを目指す皆さんにもわかりやすいように解説する。これらの変更は、開発者の日々の作業をよりスムーズにし、作成されるソフトウェアの品質を高めることを目的としている。

まず、Swift 6.1で加わった主な変更点から見ていこう。

一つ目は「カンマ区切りリストでの末尾カンマの許容」という仕様だ。これまでは配列や辞書のようなコレクション型を定義する際に、要素の最後にカンマを置いても問題なかったが、Swift 6.1からは関数呼び出しの引数リスト、ジェネリック型パラメータ、クロージャの引数リストなど、様々な場所で末尾にカンマを置くことが許容されるようになった。これは小さな変更に見えるかもしれないが、チームで開発を進める際や、バージョン管理システムでコードの変更履歴を追う際に大きなメリットをもたらす。例えば、リストの最後に新しい要素を追加する際に、既存の行を変更せずに新しい行だけを追加できるようになり、差分(変更点)が最小限になるため、コードレビューがしやすくなったり、意図しない競合を防いだりできるのだ。

二つ目は「inout引数に渡せる値を書き換え可能なものに限定する」という変更だ。Swiftには、関数内で引数の値を変更し、その変更を呼び出し元にも反映させるためにinoutというキーワードを使う仕組みがある。これまでは、一時的な値(例えば、計算結果)をinout引数に渡せてしまうことがあり、それが原因でコードの挙動が分かりにくくなったり、予期せぬエラーにつながることがあった。今回の変更により、inout引数には必ず変数のように書き換え可能な値(L-valueと呼ばれる)を渡す必要があるというルールが徹底される。これにより、コードの意図がより明確になり、安全性が高まるため、開発者は安心してinout引数を利用できるようになる。

三つ目は「AnyKeyPathが比較可能になる」という点だ。Swiftには、オブジェクトのプロパティ(属性)にアクセスするための「キーパス」という便利な機能がある。例えば、\.nameのように書くことで、あるオブジェクトのnameプロパティを指し示すことができる。AnyKeyPathは、どんなプロパティでも指し示せる汎用的なキーパスの型だ。これまでは、二つのAnyKeyPathが同じプロパティを指しているかどうかを直接==演算子で比較することはできなかった。しかしSwift 6.1からは、AnyKeyPath同士を==で比較できるようになるため、動的にプロパティを扱うような場面で、より柔軟かつ簡潔に処理を記述できるようになる。これは、フレームワークの開発や、より高度なデータ操作を行う際に役立つだろう。

四つ目は「非名目型がCaseIterableに準拠することを許容する」という変更だ。CaseIterableプロトコルは、通常、列挙型(enum)がそのすべてのケース(値)をコレクションとして提供できるようにするために使われる。例えば、enum Colors: CaseIterable { case red, green, blue }と定義すると、Colors.allCasesというプロパティを通じて[.red, .green, .blue]という形で全てのケースを取得できる。今回の変更により、列挙型だけでなく、構造体のような「非名目型」でもCaseIterableプロトコルに準拠できるようになる。これにより、特定の構造体のインスタンスの集合を、列挙型のように簡単に網羅的に扱えるようになり、コード生成やテストの自動化など、多様なシナリオでその恩恵を受けられるようになる。

次に、Swift 6.2で導入された主な変更点について見ていこう。

一つ目は「Dictionary.Entryの導入」だ。Swiftの辞書(Dictionary)は、キーと値のペアを扱う強力なデータ構造だ。これまでは、辞書から要素を取り出す際、キーと値がペアになったタプルとして扱われることが多かった。Swift 6.2からは、Dictionary.Entryという新しい型が導入される。これはキーと値をより明確に表現するための型で、特に辞書の内部操作や、mapなどの高階関数で辞書を変換する際に、キーと値の関係がより分かりやすくなる。この変更は、コードの可読性を高めるだけでなく、一部の内部処理において、一時的なタプル生成を減らすことで、パフォーマンスの向上にも貢献する可能性がある。

二つ目は「Sendableプロトコルの厳格な適用」という点だ。現代のソフトウェア開発では、複数の処理を同時に並行して実行する「並行処理」が非常に重要になっている。Swiftでは、並行処理におけるデータの安全性を保証するためにSendableというプロトコルが導入されている。Sendableに準拠した型は、複数のスレッドから安全にアクセスできることを示す。これまでは、Sendableに準拠していない型が誤ってSendableとして扱われてしまうようなケースがあり、データ競合(複数のスレッドが同時に同じデータを変更しようとして、結果が予測不能になる問題)を引き起こす可能性があった。Swift 6.2では、このSendableのチェックがより厳格になり、安全ではない可能性のあるコードはコンパイル時にエラーとして検出されるようになる。これにより、並行処理を伴うアプリケーションの信頼性と安全性が大幅に向上する。

三つ目は「Clock.Instant.advanced(by:)メソッドの追加」だ。SwiftのConcurrencyフレームワークには、時間に関する正確な操作を行うためのClockInstantという型が用意されている。Instantは特定の時間軸上の一点を表す。今回の変更により、Instant型にadvanced(by:)という新しいメソッドが追加される。このメソッドは、現在時点から指定された期間(Duration)だけ進んだ、あるいは戻った新しい時点を計算するために使われる。例えば、ある時点から正確に10秒後の時点を計算する、といった操作がより簡単かつ正確に行えるようになる。これは、時間ベースのアニメーション、タイマー、あるいは並行処理におけるタイムアウト処理など、時間の厳密な管理が求められる場面で非常に役立つ機能だ。

四つ目は、上記二つ目の「_ConcurrencyモジュールとSendableチェックの改善」と関連するが、Swift 6に向けた並行処理周りの包括的な改善と、Sendableプロトコルのチェックのさらなる強化だ。これはSwiftが並行処理をより安全かつ効率的に扱うための長期的な取り組みの一環であり、開発者が並行処理を実装する際の潜在的な落とし穴を減らし、より堅牢なシステムを構築できるようにするための基盤を強化するものだ。特にSwift 6では、この並行処理の安全性が言語レベルで強く保証される方向に向かっており、今回の変更はその準備段階とも言える。

これらのSwift 6.1と6.2で導入された新しい仕様は、それぞれが開発者の利便性を向上させ、コードの安全性を高め、言語の表現力を豊かにすることを目指している。末尾カンマの許容のようにコードの管理を楽にするものから、inout引数の厳格化やSendableプロトコルの強化のように、潜在的なバグを防ぎ、より堅牢なアプリケーションを構築するための基盤を強化するものまで様々だ。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これらの変更点は、単なる文法の追加や修正というだけでなく、より良いソフトウェア開発のための思想や原則がSwift言語にどのように組み込まれているかを理解するための良い学習機会になるだろう。これらの進化を通じて、Swiftはこれからもモダンなアプリケーション開発において中心的な役割を果たし続ける。

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