【ITニュース解説】Tesla's latest 'Master Plan' isn't a mission statement, it's a discursive mess

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Teslaは「Master Plan Part IV」を発表した。過去の計画が具体的な製品戦略を示したのに対し、今回はAI活用や持続可能性を掲げるも、漠然とした理想論に終始し、具体的な実現方法が不明瞭だと指摘されている。

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Teslaが「Master Plan Part IV」と題する新たな構想を発表した。これまでのMaster Planシリーズは、テクノロジー業界で特別な注目を集めてきたが、今回のPart IVは、その内容が従来の具体的な計画とは大きく異なり、抽象的で理想論に終始している点が指摘されている。 今回発表されたPart IVは、SNSのX上で公開され、その内容は非常に広範で漠然としたものだった。例えば、「制約のない持続可能性を妥協なく実現する」といった目標や、「ハードウェアとソフトウェアを大規模に統合し、より安全でクリーン、そして楽しい世界を創る」といったビジョンが掲げられている。しかし、これらの壮大な目標を具体的にどのように達成するのか、そのための製品や技術、ロードマップといった詳細な説明は、この1000語を超える長文の中からほとんど見つけられない。 一部では、Teslaが開発したAIチャットボット「Grok」がこの文章の一部を執筆した可能性も示唆されているほど、その内容はユートピア的で、まるで夢物語のようだとも評されている。半導体やインターネットが世界をどのように変えたかといった一般的な歴史的経緯に触れながら、電気自動車市場におけるTeslaの貢献を過度に強調するような自己賛美的な表現も目立つ。 特に、自動運転技術に関して「人間の状態を向上させる能力によって、その開発と利用が決定されるべきだ」という記述や、「自律型技術を通じて全ての人々の日常生活をより良く、より安全にすることが常に焦点であった」という部分も、具体的な技術的な進捗や実現方法ではなく、理念的な目標の表明に留まっている。 また、「この課題は極めて困難だ」「不足をなくすには、たゆまぬ完璧な実行が必要だ」といった、課題の難しさや、それを乗り越えることへの強い意志は示されている。そして、「一度この課題を克服すれば、かつて不可能だと思っていたことが可能であると、批評家たちは気づくだろう」と、未来への強い自信を表明しているが、やはり、この困難な道のりをどのように歩むのか、具体的な方策は語られていない。 過去のMaster Plan、特に初代と第2世代は、その具体性と実現性の高さから、テクノロジー業界で「預言書」のように扱われてきた経緯がある。2006年にイーロン・マスク氏によって発表された「Master Plan Part I」は、非常に野心的でありながらも具体的な目標を掲げ、その多くが実現した。この計画では、「市場のハイエンドから参入し、その後、各モデルでユニット数を増やし、価格を下げて、できるだけ早く市場の低価格帯へと移行する」という戦略が明確に示されていた。 実際にTeslaは、2008年の初代Roadsterでの収益を元手に、2012年にはModel Sを、2015年にはModel Xを開発し、さらにその利益を投じて2017年にはModel 3を、2020年にはModel Yを市場に投入した。特にModel Yは、2023年と2024年の世界で最も売れた車となるなど、初代Master Planの戦略はほぼ完璧に実行されたと言える。システムエンジニアリングの観点から見ても、これほど明確な目標設定と、段階的な製品開発ロードマップは、プロジェクト成功の鍵となる良い事例だ。 2016年に発表された「Master Plan Part II」は、マスク氏の名前が明記された最後の計画であり、ソーラールーフやPowerwallといったエネルギー事業、電動ピックアップトラック「Cybertruck」や大型セミトラック「Semi」の開発、完全自動運転の実現、そしてロボタクシーのフリート展開といったビジョンが描かれていた。現在、Teslaのエネルギー生成および貯蔵事業は、会社の総収益の約10パーセントを占めるまでに成長している。しかし、CybertruckやSemiは計画から何年も遅れてようやく発売されたものの、まだ成功を証明するには至っていない。また、完全自動運転(FSD)機能は長年にわたりベータ版のままであり、ロボタクシーもこの夏に限定的な形で、車内監視員付きで運用が開始されたに過ぎない。これらの状況は、計画がどれほど明確であっても、その実現には予期せぬ困難が伴うことを示唆している。 「Master Plan Part III」は、それまでの計画とは異なり、脱炭素社会に向けた40ページにわたる白書のようなもので、データは豊富だったものの、具体的な製品ロードマップには欠けていた。 そして今回のPart IVは、まさにその「具体性の欠如」を極限まで押し進めた内容となっている。「我々は前例のない成長が約束された革命的な時代の瀬戸際にいる」とか、「今回は一歩ではなく、Teslaと人類全体にとっての飛躍となる」といった、耳障りの良い言葉が並べられているが、その「飛躍」を具体的にどう実現するのか、会社がどのような計画を持っているのかについては、ほとんど語られていない。 システムエンジニアがプロジェクトを進める上では、明確な目標設定と、それを達成するための具体的なステップ、技術的なロードマップが不可欠だ。過去のMaster Planがその成功によって「預言書」と称賛されたのは、その具体的な計画性が背景にあった。しかし、今回のPart IVは、壮大なビジョンや理想を語る一方で、それらを現実のものとするための具体的な指針が示されていないため、多くの疑問が投げかけられているのである。

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