【ITニュース解説】Threads、「フェディバース」フィードとフェディバースアカウントの検索機能を追加 ——別途、ネタバレ注意機能やDM機能も一部アカウントでテスト中

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ITニュース概要

Threadsは「フェディバース」フィードとFediverseアカウントの検索機能を追加した。これはThreadsが他のSNSとも連携できるような仕組みで、ユーザーは外部のアカウントも探しやすくなる。一部ではDM機能などのテストも進む。

ITニュース解説

Threadsは、Instagramと同じMeta社が提供するテキストベースのSNSであり、多くのユーザーが短文投稿を中心に情報を発信・共有する場として急速に広まった。これまでのSNSの多くは、特定の企業が運営するサーバー上でサービスが完結する「中央集権型」と呼ばれるモデルを取っていた。例えば、X(旧Twitter)やInstagramもこの中央集権型に分類され、ユーザーはそれぞれのサービスの中で情報交換を行うのが一般的だった。しかし、今回Threadsが追加した「フェディバース」フィードとFediverseアカウントの検索機能は、この伝統的なSNSのあり方に新たな風を吹き込むものだ。 「フェディバース」という言葉は、「federation(連合)」と「universe(宇宙)」を組み合わせた造語である。これは、複数の独立したSNSサービスが、特定の技術的なルール(プロトコル)に基づいて相互に連携し、まるで一つの大きなサービスであるかのように振る舞うインターネット上の空間を指す。中央集権型サービスが単一の企業によって管理されるのに対し、フェディバースは「分散型」と呼ばれるモデルで構成される。この分散型モデルでは、異なるサーバーで動くサービスでも、共通の「言語」を話すことで、お互いのユーザーや投稿、活動を認識し、情報交換が可能になるのだ。 このフェディバースを支える「共通の言語」が、ActivityPub(アクティビティ・パブ)というプロトコルだ。プロトコルとは、コンピューター同士が通信する際の「約束事」や「手順」を定めたものであり、インターネット全体がこのプロトコルによって成り立っている。ActivityPubは、ユーザーの投稿、コメント、「いいね」といった活動、そしてフォロー情報などを、異なるSNSサービス間で安全かつ効率的にやり取りするための国際的な標準規格として開発された。このプロトコルがあるからこそ、例えば「Mastodon」というサービスを使っているユーザーが、「Misskey」という別のサービスを使っているユーザーの投稿を見たり、そのユーザーをフォローしたりできる。それぞれのサービスは独自のサーバーで動いているが、ActivityPubという共通のルールがあるおかげで、シームレスな交流が実現するわけだ。 ThreadsがこのActivityPubプロトコルに対応し、フェディバースに接続されることは、SNSの未来にとって非常に大きな意味を持つ。これまでのThreadsはMeta社が管理する独立したプラットフォームだったが、フェディバースに参加することで、Mastodonのような異なる分散型SNSのユーザーとも交流できるようになった。これは、巨大な中央集権型サービスが、分散型の世界に足を踏み入れるという、SNSの歴史において画期的な出来事だと言える。あたかも、これまで特定の国の中でしか使えなかった電話が、国際電話のように世界中の電話と繋がるようになったような変化だと捉えることができるだろう。Threadsのユーザーは、Threadsという枠を超えて、より広範な情報源やコミュニティにアクセスできるようになるのだ。 今回追加された「フェディバース」フィードは、Threadsアプリ内でフェディバース全体の投稿を見られるようにする機能だ。これにより、Threadsユーザーは、自分がフォローしているThreadsユーザーの投稿だけでなく、Mastodonなど他のフェディバース対応サービスに投稿された内容も自身のフィードで確認できるようになる。また、「Fediverseアカウントの検索機能」は、ThreadsからMastodonなどのフェディバース対応サービスにいるユーザーを直接探し出し、フォローすることを可能にする。これらの機能によって、Threadsは単なるクローズドなSNSではなく、オープンで相互運用性の高いグローバルなソーシャルネットワークの一部となる第一歩を踏み出したと言える。 システムエンジニアを目指す上で、このフェディバースの動向は非常に興味深い学習テーマとなるだろう。異なるシステムがスムーズに連携するための設計思想や、ActivityPubのような「プロトコル」が果たす役割の重要性を理解する良い事例となるからだ。異なる言語を話す人々が共通語を使ってコミュニケーションを取るように、異なるシステムも共通のプロトコルを介してデータや命令をやり取りする。 また、膨大な数のユーザーを抱えるThreadsのような大規模なサービスが、分散型ネットワークに参加する際には、技術的に多くの課題を解決する必要がある。例えば、分散されたサーバー間でデータの一貫性をどのように保つか、セキュリティをどのように確保するか、パフォーマンスをいかに維持するか、といった問題だ。これらの課題をどのように解決し、どのようにシステムを設計していくか、その技術的なアプローチは、将来システムを構築する上で学ぶべき点が数多くある。異なるシステムやサービスが協調して動作する「相互運用性(interoperability)」という概念も、今日のITシステム開発において非常に重要なキーワードであり、フェディバースはその良い具体例を提供してくれる。 なお、今回の発表にはフェディバース関連機能の他にも、ユーザー体験を向上させるための新たな機能開発が示唆されている。「ネタバレ注意機能」は、投稿内容の一部を隠し、ユーザーがクリックするまで見えないようにする機能で、映画やゲームの重要な情報を意図せず見てしまうことを防ぐために役立つ。また、「DM機能」は、ユーザー同士が直接メッセージを送り合える機能であり、よりプライベートなコミュニケーションを可能にする。これらの機能は、SNSとしての基本的な利便性を高めるものであり、今後の正式導入が待たれる。 Threadsがフェディバースに参加する動きは、SNSのあり方そのものに大きな変化をもたらす可能性を秘めている。中央集権型と分散型のメリットを融合させ、ユーザーにとってより開かれた、自由度の高いコミュニケーションの場を提供する試みだ。このような進化の過程を追うことは、システムがどのように設計され、どのように社会に影響を与えるかを理解する上で、システムエンジニアの卵にとって非常に価値のある経験となるだろう。SNSの未来がどのように形作られていくのか、その動向に引き続き注目していくべきだ。

【ITニュース解説】Threads、「フェディバース」フィードとフェディバースアカウントの検索機能を追加 ——別途、ネタバレ注意機能やDM機能も一部アカウントでテスト中