【ITニュース解説】Triangle Grids (2022)
2025年08月30日に「Hacker News」が公開したITニュース「Triangle Grids (2022)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
ゲーム開発などで利用される三角グリッドの扱い方を解説。四角グリッドと異なり独特な座標系を持つが、キューブ座標系を使えば距離計算や経路探索などのアルゴリズムをシンプルに実装できることを紹介している。
ITニュース解説
ゲームやコンピュータグラフィックスの世界では、画面や空間を小さな区画に分割して管理する「グリッド」という考え方が広く用いられている。最も一般的で直感的なのは、方眼紙のような正方形のマス目が並んだ四角形グリッドである。これはコンピュータのピクセルベースの画面と相性が良く、各マスの位置をX座標とY座標の組み合わせで簡単に管理できるため、多くのアプリケーションで採用されている。しかし、デザイン上の要件やゲームのルールによっては、正方形ではなく正三角形を基本単位とする「三角形グリッド」がより適している場合がある。三角形グリッドは、頂点が6つの方向に伸びているため、キャラクターの移動などをより滑らかに、あるいは多方向に表現できるほか、視覚的にもユニークな表現を可能にする。その一方で、三角形グリッドをコンピュータプログラムで扱うには、一つの大きな課題が存在する。それは、不規則に見える三角形の集まりを、どのようにして効率的に管理し、計算するかという「座標系」の問題である。四角形グリッドのように単純なXY座標で位置を特定することが難しく、各三角形の位置関係を数学的に定義する必要がある。この課題に対する強力な解決策として、密接に関連する「六角形グリッド」の考え方を応用するアプローチがある。六角形は、一つの上向き正三角形と一つの下向き正三角形を組み合わせることで形成できる。この性質を利用し、まずグリッド全体を六角形の集合体として捉え、その上で各六角形を二つの三角形に分割して考える。六角形グリッド自体は、「アキシャル座標系」と呼ばれる特殊な座標系を用いることで、数学的に整然と扱うことができる。この座標系では、斜めに交差する二つの軸(q軸とr軸)を使い、各六角形の位置を(q, r)という二つの数値で一意に特定する。この六角形グリッドの座標系を基礎とし、三角形グリッドの座標を定義する。具体的には、個々の三角形を「どの六角形に属しているか」という情報と、「その六角形の中で上向きか下向きか」という向きの情報で表現する。つまり、一つの三角形の位置は、六角形の座標である(q, r)と、向きを示すo(orientation)という三つの値の組で管理される。この座標系を導入することで、三角形の不規則な並びを、プログラムで扱いやすい一貫したデータ構造に変換できる。この座標系がもたらす最大の利点は、グリッドを扱う上で必要となる様々な計算が、体系的なアルゴリズムによって効率的に実行できる点にある。例えば、ユーザーが画面上のある点をクリックした際に、その点がどの三角形に属するかを判定する処理を考える。この計算は、まずクリックされた画面のピクセル座標を、六角形グリッドの小数を含む座標に変換することから始まる。次に、その小数座標を最も近い整数に丸めることで、対応する六角形の整数座標(q, r)を求める。最後に、丸める前の小数部分が六角形内部のどの領域に位置するかを判定し、それによって上向きか下向きか、つまりoの値を決定する。また、ある三角形から別の三角形への最短経路を計算することも可能になる。これは、まずそれぞれの三角形が属する六角形間の距離をアキシャル座標系で計算し、その結果に始点と終点の三角形の向きを考慮した補正を加えることで実現できる。さらに、ある三角形に隣接する三つの三角形の座標を特定する処理も、座標値に対する単純な加算・減算で機械的に行えるようになる。このように、三角形グリッドは一見すると複雑で扱いにくいが、六角形グリッドの数学的基盤を応用することで、その複雑さを克服し、体系的に操作することが可能となる。位置の特定、画面座標との相互変換、距離計算、隣接関係の探索といった、グリッドベースのシステムで不可欠な基本操作が、すべて一貫したルールに基づいて実装できる。この技術は、戦略ゲームのマップ設計や、プロシージャルな地形生成、あるいはユニークなユーザーインターフェースの構築など、多岐にわたる分野で応用できる可能性を秘めている。