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【ITニュース解説】TypeScript のコンパイルを理解する

2025年09月13日に「Zenn」が公開したITニュース「TypeScript のコンパイルを理解する」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

TypeScriptのコンパイルは他の言語と特徴が異なる。この記事は、その仕組みを低水準言語などコンピューターの基本的な言語概念から解説する。システムエンジニアを目指す初心者が、TypeScriptのコンパイルプロセスを理解するのに適した内容だ。

出典: TypeScript のコンパイルを理解する | Zenn公開日:

ITニュース解説

TypeScriptのコンパイルが他のプログラミング言語のコンパイルとどのように異なるのかを理解するためには、まずコンピューターが扱う言語の基本的な違いを把握する必要がある。コンピューターが直接理解できるのは「低水準言語」と呼ばれるもので、代表的なものが機械語だ。機械語は0と1の羅列であり、特定のコンピューターのプロセッサが直接実行できる命令の集まりである。人間がこの機械語を直接記述するのは極めて困難なため、もう少し人間に近い記述ができるアセンブリ言語も低水準言語に含まれる。しかし、これらはコンピューターのハードウェア構造に密接に結びついており、汎用性が低いという特徴がある。

これに対して、人間が理解しやすいように設計されたのが「高水準言語」だ。C言語、Java、Python、そしてJavaScriptなどがこれに該当する。高水準言語は記述が直感的で、可読性が高く、開発効率も良い。しかし、コンピューターは高水準言語を直接実行できないため、実行するためには何らかの方法で低水準言語に変換する必要がある。この変換の仕組みには、大きく分けて「コンパイラ方式」と「インタプリタ方式」の二つがある。

コンパイラ方式は、高水準言語で書かれたソースコード全体を一度に解析し、機械語などの実行可能な形式に変換するプログラムを指す。この変換作業をコンパイルと呼ぶ。コンパイルが完了すると、生成された実行ファイルはコンパイラがなくても単独で高速に動作する。C言語やJavaがこの方式を採用しているが、Javaの場合は直接機械語ではなく、Java仮想マシンが解釈するバイトコードという中間形式に変換される。

一方、インタプリタ方式は、ソースコードを一行ずつ読み込み、その場で解釈しながら実行していく方式だ。この方式では事前に全体の変換を行う必要がないため、開発中にコードを少し変更するたびに全体をコンパイルし直す手間がなく、手軽に試しながら開発を進めやすいという利点がある。しかし、プログラムを実行するたびに解釈と実行を行うため、コンパイラ方式に比べて実行速度は遅くなる傾向がある。JavaScriptやPython、Rubyがこの方式を採用しており、ウェブブラウザに搭載されているJavaScriptエンジンがJavaScriptコードをインタプリタとして解釈・実行する役割を担っている。

TypeScriptは、このJavaScriptを基盤として、さらに静的型付けという強力な機能を追加したプログラミング言語である。静的型付けとは、プログラムが実行される前に、変数や関数の引数・戻り値の型(データ型)が正しいかどうかをチェックする仕組みだ。これにより、多くの型の不整合によるバグをプログラムの実行前に発見でき、コードの信頼性と開発効率が向上する。

しかし、ウェブブラウザやNode.jsといった既存のJavaScript実行環境は、TypeScriptコードを直接理解して実行することはできない。これらの環境は純粋なJavaScriptコードしか解釈できないからだ。このため、TypeScriptで書かれたコードは、最終的にJavaScriptコードに「変換」される必要がある。このTypeScriptからJavaScriptへの変換プロセスを、特に「トランスパイル」と呼ぶ。トランスパイルとは、ある高水準言語から別の高水準言語へ変換することを指す用語である。TypeScriptのコンパイラであるtscコマンドが、このトランスパイルを実行する主要なツールとなる。

TypeScriptのトランスパイルプロセスは、主に二つの重要な段階で構成される。第一に「型チェック」だ。tscコマンドはTypeScriptコードが持つ型定義と、それらの利用方法が適切であるかを厳密に検査する。例えば、文字列型として定義された変数に数値を代入しようとすると、この段階で型エラーが報告される。この型チェックはプログラムの実行前に行われるため、多くの潜在的なバグを実行前に発見できる強力な仕組みだ。しかし、この型情報はJavaScriptには存在しない概念であるため、JavaScriptコードにトランスパイルされる際には、型定義に関する記述はすべて削除され、最終的な実行時コードには含まれない。

第二に、型チェックを無事通過したTypeScriptコードを、純粋なJavaScriptコードに変換する。この際、TypeScript独自の構文や機能(例えば、インターフェースやデコレータなど)も、同等の機能を持つJavaScriptの構文に変換される。また、開発者がTypeScriptで最新のJavaScriptの機能(ESNext)を使っていたとしても、それを古いJavaScriptのバージョン(ES5など)に変換することも可能だ。これにより、最新の言語機能を利用しつつも、幅広い実行環境で動作するJavaScriptコードを生成できるという大きな利点がある。

TypeScriptのコンパイル動作を詳細に制御するためには、tsconfig.jsonという設定ファイルが不可欠だ。このファイルには、TypeScriptのソースファイルがどこにあるのか、生成するJavaScriptファイルの出力先、ターゲットとするJavaScriptのバージョン(例: ES5, ES2015)、使用するモジュールシステム(例: CommonJS, ESNext)など、コンパイルに関する多様なオプションを記述できる。この設定ファイルを活用することで、プロジェクトの特定の要件に合わせた柔軟なコンパイルが可能となる。

さらに、tsconfig.jsonファイルには、コンパイル時にJavaScriptファイルを実際に生成するかどうかを制御するオプションも存在する。例えば、"noEmit": trueという設定を記述すると、tscコマンドは型チェックのみを実行し、対応するJavaScriptファイルを生成しない。この設定は、ライブラリ開発において型定義ファイルのみを提供したい場合や、JavaScriptファイルの生成を別のビルドツールに任せる場合に特に有用だ。

このように、TypeScriptのコンパイルは、ソースコード全体を機械語に変換する従来のコンパイラとは異なり、強力な型チェックを経て、最終的にJavaScriptコードへと変換する「トランスパイル」という形式で機能する。この仕組みを理解することは、TypeScriptを使った開発において、なぜ特定のタイミングで型エラーが発生するのか、そして生成されるJavaScriptがどのように振る舞うのかを把握するために極めて重要だ。TypeScriptが提供する型安全性の恩恵を最大限に活用し、より堅牢で保守しやすいシステムを構築するためには、このコンパイルの仕組みを正確に理解しておくことが不可欠だ。