【ITニュース解説】Ubuntu 24.10(oracular)の開発 / ベータフリーズとArm DesktopのThinkPad X13sサポート、Ubuntu 22.04.5のリリース
2024年09月20日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「Ubuntu 24.10(oracular)の開発 / ベータフリーズとArm DesktopのThinkPad X13sサポート、Ubuntu 22.04.5のリリース」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
人気OSのUbuntu 24.10は、ベータリリースに向け開発が最終段階に入った。Lenovo ThinkPad X13s(Arm版)への対応も進み、より多くの環境で利用可能になる。既存の安定版Ubuntu 22.04.5も最新版が公開された。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、OS(オペレーティングシステム)の知識は基礎の基礎であり、日々のニュースに登場する開発状況やバージョンアップの話題は、将来の仕事にも直結する重要な情報だ。今回取り上げるニュースは、人気の高いLinuxディストリビューションである「Ubuntu(ウブントゥ)」に関するもので、その開発状況とリリース情報について深く掘り下げて解説する。
まず「Ubuntu」とは何か。これはLinuxと呼ばれるオープンソースのOSの一種で、世界中の多くの開発者や企業、そして個人ユーザーによって使われている。サーバーの構築から個人のパソコンでの利用、さらにはIoTデバイスの制御まで、非常に幅広い用途で活躍しているOSだ。無料で利用できる点や、活発なコミュニティによるサポートが手厚い点、そして高いカスタマイズ性などが大きな魅力となっている。特にシステムエンジニアを目指すのであれば、開発環境としてLinuxを扱う機会は非常に多く、Ubuntuはその代表格と言えるだろう。
ニュースの中心となっているのは、次期バージョンである「Ubuntu 24.10(oracular)」の開発状況だ。Ubuntuのバージョン番号は、「YY.MM」という形式で表され、最初の二桁がリリース年、次の二桁がリリース月を示す。したがって「24.10」は、2024年10月にリリースが予定されていることを意味している。Ubuntuのリリースは半年に一度のペースで行われるが、その中でも特に重要なのが「LTS(Long Term Support:長期サポート)」版だ。LTS版は5年間の長期にわたるサポートが提供され、安定性と信頼性が重視される企業システムやサーバー環境で広く採用されている。今回話題の24.10は、LTS版ではない通常のリリースとなるため、最新の技術をいち早く取り入れたいユーザー向けと言えるだろう。
ニュース記事にある「oracular(オラキュラー)」は、Ubuntuの各バージョンに付けられるコードネームの一部だ。Ubuntuのバージョンには、形容詞と動物の名前を組み合わせたユニークなコードネームが与えられる慣例がある。例えば、今回の「oracular」は「神託のような、予言的な」といった意味を持ち、次の動物名と組み合わされることになる。これは開発者やユーザーがバージョンを区別しやすくするための遊び心でもあり、コミュニティの一体感を高める要素にもなっている。
そして、記事の重要なポイントの一つが「ベータフリーズ」だ。ソフトウェア開発における「フリーズ」とは、新機能の追加を停止し、既存のバグ(不具合)の修正や安定性の向上に集中する段階を指す。ベータフリーズが行われたということは、Ubuntu 24.10が新機能の盛り込みを終え、いよいよベータ版の公開に向けて、品質を最終的に高める作業に入ったことを意味する。この期間を経て、テストユーザーからのフィードバックを受けてバグを修正し、最終的な安定版リリースへと向かっていく。この開発プロセスは、私たちが日々利用するあらゆるソフトウェア開発において共通する重要なステップであり、エンジニアとして品質を確保するための基本的な流れを理解する上で役立つだろう。
さらに、Ubuntu 24.10の新しいサポートとして、「Arm Desktop版のThinkPad X13sサポート」が挙げられている。ここで「Arm(アーム)」とは、プロセッサ(CPU)の設計思想の一つだ。従来のWindowsパソコンや一般的なLinuxサーバーで主流だったIntelやAMDの「x86(エックスハチロク)」アーキテクチャとは異なる、主にスマートフォンやタブレットなどで広く利用されてきた低消費電力・高性能なプロセッサを指す。近年、Armプロセッサはその性能を向上させ、AppleのMシリーズチップやQualcommのSnapdragonなど、パソコンにも採用されるケースが増えてきた。ThinkPad X13sは、QualcommのSnapdragonを搭載したArmベースのノートパソコンだ。
「Arm Desktop版のThinkPad X13sサポート」が意味するのは、UbuntuがこのようなArmプロセッサを搭載した一般的なデスクトップPC環境でも、きちんと動作するように対応したということだ。これまではサーバー向けなどでArm版Ubuntuは提供されてきたが、ThinkPad X13sのようなArm搭載のノートPCでUbuntuが使えるようになることで、ユーザーはより多様なハードウェアの選択肢を得られる。システムエンジニアにとって、Armアーキテクチャへの対応は、将来的にクラウド環境やエッジコンピューティングなど、省電力性が求められる様々な分野で活躍する機会が増えることを示唆している。異なるアーキテクチャに対応できるスキルは、今後のキャリアにおいて非常に有利に働く可能性がある。
一方、別の話題として「Ubuntu 22.04.5のリリース」も報じられている。この「22.04」は、先ほど説明したように2022年4月にリリースされたLTS版のUbuntuを指す。そして「.5」は「ポイントリリース」と呼ばれるもので、これはメジャーバージョンアップではない。LTS版は長期サポートが特徴だが、その間にも新しいハードウェアへの対応、セキュリティの脆弱性修正、既存のバグ修正といった更新が行われる。ポイントリリースは、そうした累積された改善をまとめて提供するもので、既存の22.04ユーザーがOSを再インストールすることなく、最新の安定した状態にアップデートできる重要な手段だ。LTS版を使い続ける企業や開発者にとっては、最新のハードウェアを導入する際や、システムの安定性を維持する上で不可欠な更新となる。
これらのニュースは、UbuntuというOSが常に進化を続け、新しい技術やハードウェアに対応しながら、安定性と使いやすさを両立させようとしている姿勢を示している。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このようなOSのバージョン管理、開発プロセス、そして新しいアーキテクチャへの対応といった情報は、技術動向を理解し、自身のスキルを磨く上で非常に価値のあるものとなるだろう。日々の開発現場では、安定したLTS版を使うか、最新技術を取り込んだ通常版を使うか、あるいはArmのような新しいアーキテクチャに対応するかといった判断が求められる。これらの情報をキャッチアップし、背景にある意図を理解することで、より深い技術的洞察力を養うことができるはずだ。