【ITニュース解説】What is GoHighLevel?
2025年09月03日に「Dev.to」が公開したITニュース「What is GoHighLevel?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
GoHighLevelは、マーケティングに必要な顧客管理やメール、予約などを統合したプラットフォームだ。開発者向けにAPIを提供し、複数のツールをまとめることなく、これらの機能を自動化できる。システム構築を効率化する。
ITニュース解説
GoHighLevel(ゴーハイレベル、略称GHL)は、マーケティングと顧客管理に関わる様々な機能を一つにまとめた統合プラットフォームである。システムエンジニアを目指す初心者にとって、これは単なるマーケティングツールではなく、APIを通じて様々な自動化や連携を可能にする開発者フレンドリーな基盤として理解することが重要だ。
想像してみてほしい。あなたはフリーランスのマーケターで、顧客から販売ファネル、メール配信、SMS通知、そして顧客管理システム(CRM)の構築を依頼されたとする。通常、この要件を満たすためには、メール配信にMailchimp、SMS送信にTwilio、CRMにHubSpotといったように、複数の異なるサービスをそれぞれ契約し、それらを「Zapier」のような連携ツールでつなぎ合わせる必要があった。しかし、これではダッシュボードが何種類もあり、ログイン情報も多く、システム管理が非常に複雑になる。このような課題を解決するために、GoHighLevelは2018年にショーン・ドゥスーザによって設立された。その目的は、中小企業やマーケティング代理店が必要とするあらゆるマーケティング自動化ツールを、たった一つのプラットフォームに統合することだった。さらに、このプラットフォームは「ホワイトラベル」対応であり、企業が自社のブランド名で顧客に提供できる点が大きな特徴である。
GoHighLevelが提供する主要な機能は多岐にわたる。まず、「パイプライン&ファネルビルダー」機能は、ウェブサイトの訪問者を顧客へと導くための販売プロセス(ファネル)を、直感的なドラッグ&ドロップ操作で簡単に構築できる。フォームやアンケートの作成もここで行え、開発者はAPIを通じてファネルから得られたデータをエクスポートし、独自のレポート作成に活用できる。次に、「CRM&パイプライン管理」は、見込み客(リード)の追跡、商談の進行状況、タスク管理、顧客とのやり取り記録を一元的に行う。顧客のステータス変更といった重要な動きがあった際には、Webhooks(ウェブフック)という仕組みを使って、外部システムにリアルタイムで通知を飛ばすことができるため、例えばCRMのデータ更新を自動的に別のシステムに同期させるといったことが可能になる。
「SMS&メールマーケティング」機能は、Twilioなどのサービスと連携して、顧客へのSMS送信や、SMTPサーバーを経由したメールの自動送信を可能にする。開発者はAPIの特定のエンドポイントを利用することで、プログラムから直接メッセージを送信できる。さらに、「予約&カレンダー」機能は、Googleカレンダーと連携した予約システムの提供を可能にし、開発者はGoHighLevelのAPIを使って、自社で開発した予約インターフェースから直接予約を作成できる。顧客からのフィードバックを管理する「レピュテーション&レビューエンジン」も搭載されており、レビュー依頼の自動化や評価の監視を行う。APIを通じてレビューの統計データを取得し、社内ダッシュボードやSlack通知などに活用することも可能だ。そして、GoHighLevelの大きな強みである「ホワイトラベル&代理店ツール」機能は、複数のクライアント向けのサブアカウント作成、カスタムドメインの設定、プラットフォーム全体のブランディング変更を可能にする。これは、マーケティング代理店が自社サービスとしてGoHighLevelを顧客に提供する際に非常に有用であり、APIを使えば新規クライアントアカウントの開設もプログラムから自動化できる。
システムエンジニアがGoHighLevelを活用する上で核となるのが、そのAPI(Application Programming Interface)である。GoHighLevelのAPIはRESTfulと呼ばれる形式で提供されており、Webサービスの開発において一般的に使われる方式だ。APIを利用するには、「Bearerトークン」という認証情報が必要となる。これはGoHighLevelの設定画面で生成できる特別なキーで、パスワードのように厳重に管理する必要がある。具体的な利用例として、Node.jsという開発環境で、axiosのようなHTTPクライアントライブラリを使うことで、簡単にAPIと通信できる。例えば、APIキーと基本URLを設定し、/v1/contactsというエンドポイントにリクエストを送ることで、GoHighLevelに登録されている全ての連絡先情報をJSON形式で取得できる。これは、APIを使って外部システムからGoHighLevelのデータを読み取る最も基本的な操作であり、システム開発における「Hello, World!」のようなものである。
より実践的な例として、「リード獲得から予約設定まで」の自動化フローを考えてみよう。例えば、新しいリードがウェブサイト上のフォームに入力した際に、自動的に感謝のSMSを送信し、営業担当者向けのタスクを作成し、さらにカレンダーに15分間の打ち合わせを予約するといった一連の流れをGoHighLevelのAPIを使って構築できる。この実現には、まず外部のサーバーで「Webhooksリスナー」と呼ばれるプログラムを作成する。これは、GoHighLevelのフォームが送信された際に、その情報をHTTPリクエストとして受け取る役割を果たす。例えばExpress.jsを使ったNode.jsアプリケーションで、特定のURL (/webhook/lead) へのPOSTリクエストを待ち受けるエンドポイントを定義する。このプログラム内で、受け取ったリード情報(名前、電話番号など)を使って、GoHighLevelのAPIを呼び出し、SMS送信エンドポイントにメッセージを送信したり、タスク作成エンドポイントに新しいタスクを登録したり、予約エンドポイントに打ち合わせを作成したりする。これにより、手動で行っていた複数の作業が、フォーム送信をトリガーとして完全に自動化される。このプロセスは、従来のZapierのような連携サービスを介さず、開発者が直接コードを書いて制御できる点が大きなメリットだ。ローカル環境で開発する際には、ngrokのようなツールを使って、外部からアクセス可能なURLを一時的に生成し、GoHighLevelのファネル設定からそのURLをWebhooksの送信先に設定すれば、実際にテストを行うことができる。
GoHighLevelのAPIを扱う上で、いくつかの「プロのヒント」も存在する。APIには「レート制限」があり、アカウントあたり毎秒60リクエストという制限があるため、大量のリクエストを送る際は、リクエスト間隔を調整する「指数バックオフ」という手法を取り入れる必要がある。複数のデータを一度に操作したい場合は、/v1/contacts/batchのような「バッチエンドポイント」を利用すると、APIリクエストの数を減らし、効率的に処理できる。Webhooksは、contact.created(連絡先が作成された)、deal.stageChanged(商談ステージが変更された)、review.submitted(レビューが投稿された)といった様々なイベントにフックすることで、リアルタイムな自動化を実現する強力なツールとなる。また、utm_source(流入元)のような追加データを管理したい場合は、「カスタムフィールド」を連絡先に設定しておくと、プラットフォーム全体でそのデータを追跡できる。代理店向けに新しいクライアントアカウントを迅速に立ち上げたい場合、POST /v1/accountsエンドポイントを使ってサブアカウントを作成し、すぐにファネルをプロビジョニングすることで、自社SaaS製品としての提供が可能になる。デバッグ時には、APIエンドポイントに?debug=trueを付加することで、UI上でリクエストとレスポンスの詳細を整形された形式で確認でき、APIの挙動を理解するのに役立つ。
GoHighLevelは、特に中小規模のマーケティング代理店や、マーケティング運用のために単一のAPIを活用したい開発者、あるいはクライアントポータルを自社ブランドで提供したいチームにとって非常に適したツールである。しかし、既にSalesforceやHubSpotのような大規模なエンタープライズシステムを導入している企業や、複雑で独自のディープなデータ分析が必要なプロジェクト、あるいは厳格なオンプレミス要件を持つケースには、必ずしも最適とは言えない場合もある。GoHighLevelはSaaS(Software as a Service)として提供されるため、データ管理やセキュリティに関して厳密なオンプレミス環境が必須な場合は注意が必要だ。
まとめると、GoHighLevelは見た目の良いUIだけでなく、開発者がAPIを通じてクライアント獲得の全プロセスを自動化できる、強力な開発者フレンドリーなプラットフォームである。システムエンジニアを目指す上では、GoHighLevelの主要モジュール(ファネル、CRM、SMS、予約、レビュー)の機能と役割を理解し、REST APIの認証方法、Webhooks、バッチ処理といった基本的な使い方を習得することが重要だ。そして、リード獲得から予約設定のような小さな自動化フローを自力で構築できるようになることで、様々なツールが乱立しがちなマーケティングシステムを、洗練されたホワイトラベル対応の基盤へと変革させる力が身につくだろう。次に挑戦するステップとしては、APIを活用して、新しいクライアント向けのオンボーディングボットを作成し、歓迎メールの送信、CRMへの追加、そしてキックオフミーティングの予約までを自動化するようなプロジェクトに取り組むことも良い学習となる。