【ITニュース解説】Why Writing Efficient Code Still Matters (Even in the Age of AI) ?
2025年09月03日に「Dev.to」が公開したITニュース「Why Writing Efficient Code Still Matters (Even in the Age of AI) ?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
AIがコードを書く時代でも、効率的なコードの理解は重要だ。アプリの高速化やAI学習の効率化には、アルゴリズムや計算量の基礎知識が不可欠となる。非効率なコードは性能低下を招くため、効率性を考える習慣が、書かれたコードのデバッグや改善の鍵となる。
ITニュース解説
現代においてAIがコードを生成する能力は目覚ましく、プログラミングの敷居は低くなったと感じるかもしれない。しかし、AIが書いたコードをただ使うだけでは、思い通りに動作しなかったり、性能が不足したりした際に立ち往生してしまうことがある。特に、「なぜこのコードは期待通りに動かないのか?見た目は問題なさそうに見えるのに」という状況に陥った場合、コードの内部的な動きや効率性を理解していなければ、解決の糸口を見つけるのは極めて難しい。
重要なのは、コードが単に「動く」ことだけではないという点だ。それ以上に、「どれだけ効率的に動くか」がソフトウェアの品質や使いやすさを大きく左右する。この「効率性」を測るための概念が「空間計算量」と「時間計算量」である。空間計算量とはプログラムが実行中に必要とするメモリの量を指し、時間計算量とはプログラムが処理を完了するまでにかかる時間を指す。これらの計算量を評価し、より良い性能を引き出すためには、アルゴリズムの基礎的な理解が不可欠となる。
具体的な例を挙げてみよう。あるアプリでユーザーが膨大な商品カタログから特定の商品を検索する機能を開発すると仮定する。もし、プログラマが最も素朴な方法として、カタログの最初から最後まで全ての商品を一つずつ順番に調べていくコードを書いたとする。この方法は、カタログに登録されている商品の数が増えれば増えるほど、検索にかかる時間も比例して長くなる。これを計算量の表記では「O(n)」(オーダー・エヌ)と表現する。ここで「n」はデータ量、つまり商品数を意味する。商品数が100件なら100回の操作が必要だが、10万件になれば10万回の操作が必要になる。この方式では、データ量が増大するにつれてアプリの動作が目に見えて遅くなり、ユーザーはストレスを感じるようになるだろう。
しかし、もし適切なデータ構造とアルゴリズムを利用すれば、状況は一変する。例えば、「ハッシュマップ」という、特定の情報(キー)を使って目的のデータを瞬時に探し出すことができるデータ構造や、事前に商品を名前順などに「ソート」(並べ替え)しておき、そのリストに対して「二分探索」というアルゴリズムを使用する方法が考えられる。二分探索は、ソートされたリストの中央の要素を見て、目的のデータがそれよりも前か後かを判断し、探索範囲を半分ずつに絞っていく効率的な方法である。これらの方法を採用した場合、検索にかかる時間は「O(log n)」(オーダー・ログ・エヌ)という計算量で表される。このO(log n)は、データ量が劇的に増えても、処理時間の増加はごくわずかであるという特性を持つ。例えば、商品数が100万件あったとしても、二分探索ならおよそ20回程度の比較で目的の商品を見つけ出すことができる。仮に商品数がさらに10倍の1000万件になっても、操作回数はわずか数回増える程度で済むのだ。このような効率性の違いが、ユーザーにとって「もっさりしていて使いにくいアプリ」と「瞬時に反応して快適なアプリ」を分ける決定的な要素となる。
AI、特にディープラーニングの分野においても、効率性の問題は非常に重要である。数百万もの「パラメータ」と呼ばれる内部設定値を持つ深層学習モデルの訓練は、もともと膨大な計算リソースを必要とする作業だ。もし、この訓練に使うデータを非効率的に保存したり処理したりすると、そのリソース消費はさらに拡大してしまう。例えば、ほとんどがゼロであるようなデータ(「疎行列」と呼ぶ)を、ゼロではない値とゼロの値を全てきっちり保存する「密行列」として扱ってしまえば、必要のない情報までメモリに確保してしまうため、通常の10倍ものGPUメモリが必要になることがある。
また、モデルの訓練に用いる「アルゴリズム」の選択も効率に直結する。例えば、勾配降下法というモデルのパラメータを最適化する基本的なアルゴリズムには、さまざまな改良版が存在する。さらに、頻繁にアクセスするデータを一時的に高速な記憶領域に置いておく「キャッシング戦略」を適切に用いることも重要だ。これらの最適化を施すことで、これまで数週間かかっていたモデルの訓練期間を数日に短縮できる可能性がある。このような効率の違いが、最先端の研究がスムーズに進展するか、あるいはリソースの制約によって停滞してしまうかの分かれ道となるのだ。
これらを踏まえると、システムエンジニアを目指す皆さんが全ての複雑なアルゴリズムを暗記する必要は全くないことがわかる。むしろ本当に重要なのは、「今書いているコードやAIが生成したコードは、本当に最適なやり方で動いているのだろうか」「もっと効率的な方法はないだろうか」と、常に「効率性」という視点を持って物事を考える習慣を身につけることだ。AIがいくらコードを書いてくれたとしても、そのコードの内部的な動作や、それがどれだけの計算資源を消費するのかを理解できなければ、何か問題が発生した際に原因を特定したり、より良い性能を引き出すためにコードを改善したりすることは不可能である。効率性を意識する習慣は、質の高いソフトウェア開発、そして問題解決能力の向上に直結する、システムエンジニアにとって不可欠なスキルなのである。