【ITニュース解説】Zero Downtime Major Version PostgreSQL Upgrades

2025年09月03日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Zero Downtime Major Version PostgreSQL Upgrades」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

PostgreSQLの大きなバージョンアップを、システムを止めずに実施する方法を解説。標準機能を活用し、本番環境のデータベースを安全に更新できる。新しいバージョンへの移行時期が迫っているため、今のうちに準備しよう。

ITニュース解説

現代の多くのITサービスにおいて、データベースは心臓部とも言える重要な役割を担っている。ウェブサイトのユーザー情報、オンラインショッピングの商品データ、企業の基幹システムにおける顧客情報や取引履歴など、あらゆる情報がデータベースに保存され、日々活用されている。その中でも「PostgreSQL」は、高い信頼性と豊富な機能を持ち、さらにオープンソースであることから、世界中で広く利用されているデータベース管理システムの一つだ。

ソフトウェアは常に進化を続けており、PostgreSQLも例外ではない。開発チームは定期的に新機能の追加、性能の向上、セキュリティの強化、そして既存のバグ修正といった改善を行っている。これらの改善が反映された新しい版が「バージョン」であり、古いバージョンから新しいバージョンへ移行する作業を「アップグレード」と呼ぶ。アップグレードはシステムの安定性や安全性を保ち、最新の機能を利用するために不可欠な作業だ。

PostgreSQLのバージョンアップグレードには大きく分けて「マイナーバージョンアップ」と「メジャーバージョンアップ」の二種類がある。マイナーバージョンアップは主にバグ修正や小さな改善が中心で、通常は既存のシステムとの互換性が保たれるため、比較的容易に行えることが多い。しかし、「メジャーバージョンアップ」は、大幅な機能追加や内部構造の変更を伴うため、古いバージョンとの互換性がなくなる場合が多く、特別な手順を踏む必要がある。例えば、PostgreSQL 16から17へのアップグレードはメジャーバージョンアップに該当し、単純なプログラムの置き換えだけでは行えないため、より慎重な計画と作業が求められる。

メジャーバージョンアップの際に大きな課題となるのが「ダウンタイム」の発生だ。ダウンタイムとは、システムが停止し、サービスが利用できなくなる時間のことである。オンラインサービスにおいては、わずかなダウンタイムでさえ顧客からの信頼を失い、ビジネスに大きな損失を与える可能性があるため、多くの企業はダウンタイムを極力避けたいと考える。特にデータベースのような基幹システムが停止すれば、その影響はサービス全体に及び、甚大な被害を招くことも珍しくない。

そこで、システムの停止時間をゼロに抑えながらアップグレードを行う「ゼロダウンタイムアップグレード」の技術が注目されている。これは、サービスを完全に中断することなく、データベースのメジャーバージョンアップのような複雑な作業を完了させる手法だ。しかし、データの整合性を保ちながら、稼働中のデータベースを新しいバージョンに切り替えることは非常に高度な技術を要し、容易ではない。データが失われたり、一時的に不整合が発生したりするリスクを最小限に抑えつつ、ユーザー体験を損なわない形でアップグレードを完了させる必要があるからだ。

PostgreSQLでゼロダウンタイムのメジャーバージョンアップを実現する主要なアプローチは、PostgreSQLが標準で提供する「ネイティブツール」や機能、特に「論理レプリケーション」を駆使することである。論理レプリケーションとは、データベースに加えられた変更(データの追加、更新、削除など)を、SQL文の形式で別のデータベースに転送し、ほぼリアルタイムで同じデータ状態を作り出す技術だ。これにより、異なるメジャーバージョンのPostgreSQLインスタンス間でも、データの同期を維持しながらアップグレードを進めることが可能になる。

具体的なゼロダウンタイムアップグレードの手順は、通常以下のような流れで進む。まず、既存の稼働中の古いバージョンのPostgreSQLデータベース(例えばPG16)とは別に、アップグレード先の新しいバージョンのPostgreSQLインスタンス(例えばPG17)を新規に構築する。次に、既存のデータベースの現在のデータを、pg_dumpのようなPostgreSQLが提供するバックアップツールを使って新しいインスタンスに初期コピーする。この段階ではまだ、両方のデータベースが並行して稼働している状態だ。

初期コピーが完了した後、重要なステップとして、古いデータベースを「パブリッシャー」とし、新しいデータベースを「サブスクライバー」として設定し、論理レプリケーションを開始する。これにより、初期コピー後に古いデータベースに加えられたすべての変更が、自動的に新しいデータベースに転送され、新しいデータベースは古いデータベースと全く同じデータ状態をリアルタイムで保つことができるようになる。この期間中も、ユーザーは古いデータベースに接続したまま、サービスを利用し続けることが可能だ。

新しいデータベースが古いデータベースの変更に完全に追いつき、データの整合性が確認できたら、いよいよサービスを切り替える段階に入る。この切り替えは極めて短い時間で完了させる必要がある。アプリケーションが接続するデータベースの参照先を、古いデータベースから新しいデータベースへと変更するのだ。これは通常、アプリケーションの設定ファイルや、ロードバランサー、DNS(ドメイン名システム)の設定変更によって行われる。この一連の作業は自動化されたスクリプトを用いることで、手動によるミスを減らし、切り替え時間を最小限に抑えることが可能だ。切り替えが成功すれば、ユーザーはアップグレードが行われたことに気づくことなく、新しいバージョンのデータベースで稼働するサービスを引き続き利用できる。

この手法の大きな利点は、PostgreSQL自身が提供する機能やツール(ネイティブツール)を利用するため、外部の複雑なミドルウェアやサードパーティ製のツールに依存することなく、ゼロダウンタイムを実現できる点にある。これにより、コストを抑えつつ、システムの複雑さを増すことなく、安全なアップグレードが可能となる。

しかし、このようなゼロダウンタイムアップグレードは高度な技術と事前の周到な計画が不可欠である。本番環境で実際にアップグレードを行う前に、必ず本番環境と全く同じ構成のテスト環境を用意し、アップグレード手順を何度も繰り返し検証することが重要だ。これにより、予期せぬ問題が発生するリスクを低減し、万が一問題が発生した場合でも、事前にその対処法を確立できる。また、アップグレード中に何らかの障害が発生した場合に備え、元の状態に安全に戻すための「ロールバック計画」も必ず準備しておく必要がある。アップグレード中および完了後は、システムの監視を強化し、ログを詳細に確認することで、システムの安定稼働を確実にすることも大切だ。

PostgreSQLの開発は活発であり、新しいメジャーバージョンが約1年ごとにリリースされる。最近ではPostgreSQL 18の登場が近づいているという情報もあり、これは既存のユーザーに対してPostgreSQL 17へのアップグレードを推奨する良い機会となる。新しいバージョンへの移行は、セキュリティの向上、パフォーマンスの最適化、そして最新機能の活用を可能にし、結果としてより安定した、高性能なサービス提供に貢献する。

まとめると、PostgreSQLのメジャーバージョンアップをゼロダウンタイムで実現することは、現代のビジネスにおいて非常に重要な課題である。PostgreSQLが提供する論理レプリケーションをはじめとするネイティブツールを適切に活用し、周到な計画と検証を行うことで、サービスを停止させることなく、安全かつ確実に最新バージョンへの移行を果たすことが可能となる。これはシステムエンジニアにとって、システムの信頼性を高め、ユーザー体験を損なわないサービス提供を実現するための重要なスキルの一つと言えるだろう。