【PHP8.x】session_abort関数の使い方

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session_abort関数は、PHPで現在アクティブなセッションに対して、セッションへの変更を破棄し、セッションを閉じるための関数です。この関数が呼び出されると、session_start()によって開始されたセッションにおいて、スクリプト実行中に行われた$_SESSIONスーパーグローバル変数への全ての変更は、セッションストレージに保存されることなく破棄されます。これにより、セッションデータの一貫性を保ち、誤って永続化されるのを防ぎます。

この関数は、セッションデータを読み込んだ後で何らかの処理を行い、その結果として$_SESSIONが変更されたものの、最終的にその変更を保存したくないという状況で特に役立ちます。例えば、エラーが発生した場合や、ユーザーが操作をキャンセルした場合など、一時的にセッション変数に対して行われた変更を元の状態に戻す際に利用できます。

session_abort()関数は、セッションデータをディスクなどのストレージに書き込むことなく、セッションのロックを解放します。これは、session_write_close()関数がセッションデータを保存してからセッションを閉じるのとは異なる重要な点です。session_abort()を実行した後は、現在のスクリプト実行においてセッションデータへの書き込みは行われず、後続のリクエストで同じセッションIDが使われた場合でも、変更前のセッションデータが取得されます。

この関数を使用するには、事前にsession_start()関数が呼び出され、セッションが開始されている必要があります。セッションの変更を安全に破棄し、システムの整合性を保つための重要な機能を提供します。

基本的な使い方

構文(syntax)

session_abort(): bool

引数(parameters)

引数なし

引数はありません

戻り値(return)

bool

セッションの処理を中断し、保存されているセッションデータを破棄する操作が成功したかどうかを真偽値で返します。成功した場合はtrue、失敗した場合はfalseを返します。

サンプルコード

PHP session_abort() によるセッション変更の破棄

<?php

// セッションを開始します。既存のセッションを再開するか、新しいセッションを開始します。
session_start();

echo "<h3>PHP `session_abort()` の動作デモンストレーション</h3>";

// 1. セッション変数の初期設定または表示
// 'user_name' が未設定の場合、初期値を 'ゲスト' に設定します。
if (!isset($_SESSION['user_name'])) {
    $_SESSION['user_name'] = 'ゲスト';
    echo "<b>初回アクセス:</b> 'user_name' を 'ゲスト' に設定しました。<br>";
} else {
    echo "<b>既存セッション:</b> 'user_name' は '" . $_SESSION['user_name'] . "' です。<br>";
}
echo "現在のセッションID: " . session_id() . "<br><br>";

// 2. セッション変数に一時的な変更を加えます
echo "セッション変数 'user_name' を一時的に '仮ユーザー' に変更します。<br>";
$_SESSION['user_name'] = '仮ユーザー';
echo "変更後の 'user_name' (session_abort() の前): '" . $_SESSION['user_name'] . "'<br><br>";

// 3. `session_abort()` を呼び出します
// この関数は、現在のリクエストで行われたセッションデータへの変更を破棄し、
// セッションファイルをロック解除します。セッションは閉じられ、`$_SESSION` 変数は空になります。
$aborted = session_abort();

echo "`session_abort()` の実行結果: " . ($aborted ? '成功' : '失敗') . "<br><br>";

// `session_abort()` 後はセッションが閉じられているため、`$_SESSION` のデータは失われます。
echo "<b>`session_abort()` 後の `$_SESSION` の状態:</b><br>";
echo "'user_name': " . ($_SESSION['user_name'] ?? 'データなし') . "<br><br>";

// 4. セッションを再度開始し、変更がロールバックされたことを確認します
// `session_abort()` で閉じられたセッションは、`session_start()` を再度呼び出すことで
// 変更が破棄された(ロールバックされた)元のデータと共に再開されます。
echo "<b>`session_abort()` 後、再度 `session_start()` を呼び出します。</b><br>";
session_start();

echo "再開後のセッションID: " . session_id() . "<br>";
echo "再開後の 'user_name': '" . ($_SESSION['user_name'] ?? '未設定') . "'<br><br>";

// 注: このスクリプトをウェブサーバーで実行し、複数回リロードしてみてください。
// 'user_name' の値が常に 'ゲスト' のままであり、'仮ユーザー' に永続化されないことで、
// `session_abort()` による変更の破棄(ロールバック)の効果が確認できます。
// `session_abort()` は、セッションへの変更をコミットせずに破棄する場合に有用です。

?>

PHPのsession_abort()関数は、現在のリクエスト内でセッションデータに対して行われた変更を破棄し、セッションファイルをロック解除する役割を持つ関数です。この関数に引数はなく、処理が成功した場合はtrueを、失敗した場合はfalseをブール値で返します。

サンプルコードでは、まずsession_start()でセッションを開始し、$_SESSION['user_name']に初期値として'ゲスト'を設定しています。次に、このuser_nameの値を一時的に'仮ユーザー'に変更します。ここでsession_abort()を呼び出すと、現在のリクエストで行われた'仮ユーザー'への変更はセッションファイルに保存されることなく破棄されます。同時に、セッションは閉じられ、$_SESSION変数も空になります。その後、再度session_start()を呼び出してセッションを再開すると、session_abort()によって変更がロールバックされたため、$_SESSION['user_name']には元の値である'ゲスト'が読み込まれていることが確認できます。このように、session_abort()は、セッションデータへの変更を確定せずに取り消したい場合に非常に有用です。

session_abort()は、現在のリクエストで行われたセッションデータへの変更を破棄し、$_SESSION変数を空にします。これはセッションを「閉じ」ますが、セッションデータ自体をサーバーから完全に削除するsession_destroy()とは異なります。session_abort()呼び出し後は$_SESSIONが空になるため、セッションデータにアクセスする場合は、再度session_start()を呼び出す必要があります。この際、session_abort()で破棄された変更前の、元のデータが読み込まれます。この関数は、セッションデータへの複数変更を一括で破棄し、元の状態に戻したい場合に有効です。セッションの変更が永続化されないため、期待する動作かよく確認して利用してください。

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