アローダイアグラム(アローダイアグラム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アローダイアグラム(アローダイアグラム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アローダイアグラム (アローダイアグラム)

英語表記

Arrow Diagram (アローダイアグラム)

用語解説

アローダイアグラムは、プロジェクト管理において作業の順序関係や依存関係、そして全体の進行状況を視覚的に表現するための図法である。これはプロジェクトを構成する個々の作業を矢線で、作業の開始や終了、あるいは作業間の結びつきを結合点と呼ばれる丸で示すことにより、プロジェクト全体の流れを一覧できるようにする手法だ。主に、複数の作業が複雑に絡み合う大規模なプロジェクトの計画立案や進捗管理に用いられ、特にシステム開発プロジェクトのような、多くの工程と担当者が関わる場面でその真価を発揮する。この図を用いることで、プロジェクトの全体像を把握し、どの作業が遅れるとプロジェクト全体に影響が出るのか(クリティカルパス)を特定することが可能となる。

アローダイアグラムの概念は、プロジェクト管理手法の一つであるPERT(Program Evaluation and Review Technique)やCPM(Critical Path Method)といった、1950年代に開発された手法の一部として生まれた。これらの手法は、多数のタスクと複雑な依存関係を持つプロジェクトの計画と制御を目的とし、アローダイアグラムはその視覚化ツールとして不可欠な存在となった。 アローダイアグラムを構成する主要な要素は、作業を示す矢線と、作業の開始・終了を示す結合点である。矢線は「アクティビティ」とも呼ばれ、特定の作業内容とその所要時間を表現する。矢線の方向は作業の進行方向を示し、通常は左から右へと描かれる。矢線の上には作業名や作業コードを記述し、その下には所要時間を記載するのが一般的だ。この所要時間は、作業の完了に必要な時間を日数や時間単位で示す。 一方、結合点(ノードまたはイベントとも呼ばれる)は、作業の開始時点や終了時点、あるいは複数の作業が合流したり分岐したりする論理的な節目を表す。結合点には通し番号を付与し、作業の順序関係を明確にする。例えば、結合点1から結合点2へ伸びる矢線は、結合点1で開始し、結合点2で終了する作業を表す。結合点は物理的な作業を伴わないが、作業の順序関係を定義する上で極めて重要な役割を果たす。 さらに、アローダイアグラムには「ダミー作業」と呼ばれる特殊な矢線が登場する。これは実際の作業を伴わない仮想的な矢線であり、所要時間はゼロとして扱われる。ダミー作業は、主に二つの目的で使用される。一つは、異なる二つの作業が同じ開始点と終了点を持つことを避けるためである。アローダイアグラムの規則上、複数の作業が同じ開始点と終了点を持つことは許されないため、このような場合にダミー作業を挿入し、論理的な区別をつける。もう一つは、特定の作業の完了が、他の複数の作業の開始条件となるような、複雑な論理的依存関係を表現するためである。例えば、作業Aが完了しなければ作業Bと作業Cが開始できないが、作業Bが完了しなければ作業Dが開始できないというような場合、ダミー作業を用いて正確な依存関係を示す。ダミー作業は点線で描かれることが多い。

アローダイアグラムを作成する手順は、まずプロジェクト内のすべての作業(タスク)を洗い出し、それぞれの作業にどの作業が先行するのか(先行作業)と、おおよその所要時間をリストアップすることから始める。次に、プロジェクトの開始点を一つの結合点として設定し、そこから先行作業のない作業を矢線で描き始める。その後、リストアップした先行作業の情報を基に、作業の完了を示す結合点と、それに続く作業の開始を示す結合点を順次つなげていく。この際、作業間の依存関係を正確に表現するために、必要に応じてダミー作業を挿入する。すべての作業が図の中に配置され、最終的にすべての作業がプロジェクトの終了点となる一つの結合点に収束するように描くことで、アローダイアグラムが完成する。 この図が完成すると、そこから様々な重要な情報を読み取ることができる。最も重要なのは、プロジェクト全体の所要時間を決定する「クリティカルパス」の特定である。クリティカルパスとは、プロジェクト開始から終了までの経路のうち、所要時間の合計が最も長くなる経路のことだ。このクリティカルパス上のいずれかの作業が遅延すると、プロジェクト全体の完了も同じだけ遅れてしまうため、プロジェクト管理者はこのクリティカルパス上の作業を特に注意深く監視する必要がある。逆に、クリティカルパス以外の経路にある作業には、多少の遅れが生じてもプロジェクト全体の完了に影響を与えない「余裕時間(フロート)」が存在する。この余裕時間を把握することで、リソースの再配置や作業の優先順位付けを柔軟に行うことが可能となる。 アローダイアグラムは、プロジェクトの計画段階で全体の流れを可視化し、潜在的な問題点やボトルネックを早期に発見するために役立つだけでなく、プロジェクトの実行段階においては、進捗状況の管理や変更管理の意思決定の基礎情報としても利用される。また、関係者間でのプロジェクトのスコープやスケジュール、依存関係についての共通認識を形成するための効果的なコミュニケーションツールとしても機能する。このように、アローダイアグラムはシステム開発プロジェクトを成功に導くための強力なツールであり、プロジェクト管理の基礎を学ぶ上で欠かせない知識と言える。

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