エラプス時間(エラプスジカン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エラプス時間(エラプスジカン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

経過時間 (ケイカジカン)

英語表記

elapsed time (エラプスドタイム)

用語解説

エラプス時間とは、ある処理やタスクが開始されてから完全に終了するまでの経過時間のことである。英語では "Elapsed Time" と表記され、日本語では経過時間とそのまま訳されることも多い。これは、人間がストップウォッチで計測する時間と同じ概念であり、処理の開始ボタンを押してから、完了の通知が表示されるまでに経過した、壁にかかった時計の時間(ウォールクロックタイムとも呼ばれる)に相当する。システムやプログラムの応答性、つまりユーザーがどれだけ待たされたかを測るための最も基本的な指標として用いられる。

エラプス時間は、コンピュータがタスクを処理するために費やした時間の総体を示す。しかし、この時間には、コンピュータの頭脳であるCPUが実際に計算を行っていた時間だけでなく、様々な待機時間も含まれている点が重要である。具体的にエラプス時間に含まれる要素としては、CPUが命令を実行している純粋な計算時間、ハードディスクやSSDといったストレージ装置からのデータ読み書きを待つ時間(ディスクI/O待機時間)、ネットワークを通じて他のコンピュータとデータをやり取りしている時間(ネットワーク待機時間)、オペレーティングシステム(OS)が複数のプログラムを同時に動かすために、対象のタスクの実行を一時的に中断し、他のタスクにCPUを割り当てている間の待機時間などが挙げられる。つまり、処理の開始から終了までの間に発生する、あらゆる時間的要素を合算したものがエラプス時間となる。

システム性能を評価する際、エラプス時間としばしば比較されるのが「CPU時間」である。この二つの違いを理解することは、パフォーマンス分析の第一歩となる。CPU時間とは、その名の通り、特定のタスクを処理するためにCPUが実際に稼働した正味の時間を示す。一方、エラプス時間は前述の通り、CPUが稼働していない待機時間もすべて含んだ総経過時間である。例えば、あるプログラムを実行した結果、エラプス時間が30秒、CPU時間が5秒だったとしよう。この場合、プログラムが開始してから終了するまでに30秒かかったが、そのうちCPUがこのプログラムのために実際に働いていたのは5秒間だけであり、残りの25秒間は、ファイルの読み込みやネットワーク通信の完了を待っていたり、OSによって他の処理が優先されていたりしたことを意味する。

このエラプス時間とCPU時間の差は、システムの性能ボトルネック、つまり処理速度を低下させている原因を特定する上で極めて重要な手がかりとなる。もしエラプス時間が長いにもかかわらずCPU時間が非常に短い場合、CPUの計算能力そのものではなく、ディスクI/Oやネットワーク通信といった、CPU以外の部分に問題がある可能性が高いと推測できる。このような状況では、CPUをより高性能なものに交換しても、性能向上はあまり期待できない。代わりに、より高速なSSDを導入したり、ネットワーク環境を改善したり、あるいはプログラムのデータアクセス方法を効率化したりといった対策が有効となる。逆に、エラプス時間とCPU時間がほぼ同じ値である場合は、処理の大部分がCPUの計算に費やされていることを示しており、CPUの性能がボトルネックであると言える。この場合は、アルゴリズムの改善による計算量の削減や、より高性能なCPUへの換装がパフォーマンス向上に直接的に繋がる。

また、現代のコンピュータの多くは、複数のCPUコアを持つマルチコアプロセッサを搭載している。このような環境で並列処理を行うプログラムを実行する場合、エラプス時間とCPU時間の関係はさらに興味深い様相を呈する。例えば、4つのコアを同時に使って処理を並列化できるタスクがあったとする。このタスクを完了させるのに、エラプス時間としては10秒かかったとする。しかし、4つのコアがそれぞれ10秒間フルに稼働していたとすれば、CPU時間の合計は40秒(10秒 × 4コア)となり、エラプス時間よりも長くなることがある。このケースでは、並列化によってユーザーが体感する待ち時間(エラプス時間)は短縮されているが、システム全体として消費した計算リソース(CPU時間)は増加している。このように、エラプス時間はユーザー体感の性能を、CPU時間はシステムが消費したリソース量をそれぞれ示す指標として、異なる側面から性能を評価するために用いられる。

システムエンジニアは、システムの性能要件を満たしているかを確認したり、パフォーマンス問題の原因を調査したりする際に、エラプス時間を必ず測定する。多くのプログラミング言語やOSには、エラプス時間やCPU時間を計測するための機能が標準で備わっている。エラプス時間は、システムの応答性やユーザーエクスペリエンスに直結する、最も基本的かつ重要なパフォーマンス指標の一つであり、その内訳を理解し、CPU時間などの他の指標と組み合わせて分析することで、より的確な性能改善へと繋げることができるのである。