エネルギーハーベスティング(エネルギーハーベスティング)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エネルギーハーベスティング(エネルギーハーベスティング)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エネルギーハーベスティング (エネルギーハーベスティング)

英語表記

energy harvesting (エナジーハーベスティング)

用語解説

エネルギーハーベスティングは、環境中に存在する微小なエネルギーを収集し、電力として利用する技術のことだ。環境発電とも呼ばれる。従来の電池や電源ケーブルに依存せず、持続的にエネルギーを供給できるため、IoTデバイスやウェアラブルデバイスなど、さまざまな分野での応用が期待されている。

エネルギーハーベスティングの対象となるエネルギー源は多岐にわたる。代表的なものとしては、太陽光、振動、熱、電波、圧力などが挙げられる。太陽光発電は、太陽光を太陽電池で直接電力に変換する技術で、最も一般的なエネルギーハーベスティング技術の一つだ。振動発電は、機械の振動や人の動きなどを利用して発電する技術で、圧電素子や電磁誘導を利用する。熱発電は、温度差を利用して発電する技術で、ゼーベック効果を利用した熱電素子が用いられる。電波発電は、空間を飛び交う電波をアンテナで受信し、電力に変換する技術だ。圧力発電は、圧力を加えることで電力を発生させる圧電素子を利用する。

エネルギーハーベスティングシステムの構成要素は、エネルギー収集素子、電力変換回路、蓄電素子、負荷の4つに大別される。エネルギー収集素子は、環境中のエネルギーを電気エネルギーに変換する役割を担う。太陽電池、圧電素子、熱電素子、アンテナなどがこれに該当する。電力変換回路は、エネルギー収集素子で発電された電力を、負荷が利用できる電圧や電流に変換する役割を担う。多くの場合、昇圧回路や降圧回路、整流回路などが用いられる。蓄電素子は、発電された電力を一時的に蓄える役割を担う。二次電池やキャパシタなどが用いられ、発電量が不安定な場合や、負荷が間欠的に電力を消費する場合に有効だ。負荷は、エネルギーハーベスティングシステムによって電力を供給されるデバイスや回路のことだ。センサー、通信モジュール、マイクロコントローラなどがこれに該当する。

エネルギーハーベスティングのメリットはいくつかある。まず、電池交換や電源ケーブルが不要になるため、メンテナンスコストを削減できる。特に、アクセスが困難な場所や、多数のデバイスが分散している環境では、その効果が大きい。次に、環境に優しい。化石燃料を消費せず、環境中のエネルギーを利用するため、二酸化炭素排出量を削減できる。また、電池廃棄物の削減にも貢献する。さらに、小型化・軽量化が可能だ。電池や電源回路が不要になるため、デバイスの小型化や軽量化を実現できる。これにより、ウェアラブルデバイスやIoTデバイスなど、小型化が求められる分野での応用が期待される。

一方で、エネルギーハーベスティングにはデメリットもある。発電量が環境に左右されるため、安定した電力供給が難しい場合がある。太陽光発電であれば天候、振動発電であれば振動の強さ、熱発電であれば温度差など、環境条件によって発電量が大きく変動する。また、発電量が少ない。環境中に存在する微小なエネルギーを利用するため、得られる電力は限られている。そのため、低消費電力のデバイスにしか適用できない場合がある。さらに、コストが高い場合がある。エネルギー収集素子や電力変換回路のコストが高く、初期導入コストがかかる場合がある。特に、高性能なエネルギー収集素子や、高効率な電力変換回路を用いる場合は、コストがさらに高くなる。

エネルギーハーベスティングの応用事例は多岐にわたる。IoT分野では、センサーネットワークの電源として利用される。例えば、工場や農場に設置されたセンサーが、温度、湿度、振動などの情報を収集し、そのデータを無線で送信する際に、エネルギーハーベスティングによって電力を供給する。ウェアラブルデバイス分野では、スマートウォッチや活動量計などの電源として利用される。例えば、人の動きや体温を利用して発電し、デバイスを駆動する。医療分野では、埋め込み型医療機器の電源として利用される。例えば、心臓ペースメーカーや神経刺激装置などが、体内の温度差や振動を利用して発電し、動作する。インフラ分野では、橋梁や道路のモニタリングシステムの電源として利用される。例えば、橋梁の歪みや振動を計測するセンサーが、太陽光や振動を利用して発電し、データを送信する。

エネルギーハーベスティング技術は、まだ発展途上の技術であり、さらなる研究開発が必要だ。発電効率の向上、電力変換回路の高効率化、蓄電素子の高性能化などが課題として挙げられる。これらの課題を克服することで、エネルギーハーベスティングは、より多くの分野で活用され、持続可能な社会の実現に貢献することが期待される。システムエンジニアとしては、これらの技術動向を注視し、新たな応用分野を開拓していくことが重要になるだろう。