インフラ(インフラ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
インフラ(インフラ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
インフラ (インフラ)
英語表記
infrastructure (インフラストラクチャー)
用語解説
IT分野における「インフラ」とは、インフラストラクチャーの略語であり、様々なITシステムやサービスが動作するための基盤となる要素の総称である。アプリケーションソフトウェアが機能するためには、それを実行するコンピュータやデータを保存する場所、そしてそれらを繋ぐ通信網が不可欠である。これらシステム全体の土台を支える、目には見えにくいが極めて重要な部分がITインフラに相当する。システムエンジニアを目指す者にとって、このインフラの仕組みを理解することは、安定したシステムを構築し、運用する上で必須の知識となる。
インフラは、物理的な機器であるハードウェアと、その上で動作するソフトウェアによって構成される。主要なハードウェアには、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器がある。サーバーは、プログラムの実行やデータ処理といった計算処理を担うコンピュータ本体である。物理的な実体を持つ物理サーバーと、一台の物理サーバー上で複数のサーバー環境を擬似的に作り出す仮想サーバーが存在する。ストレージは、プログラムやアプリケーションが扱うデータを永続的に保存するための記憶装置であり、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などが用いられる。ネットワーク機器は、サーバーやクライアントPCなどを相互に接続し、データ通信を可能にするための装置である。代表的なものに、異なるネットワーク間を中継するルーターや、同一ネットワーク内の機器を接続するスイッチ、そして不正なアクセスから内部ネットワークを保護するファイアウォールなどがある。
インフラを構成するソフトウェアには、オペレーティングシステム(OS)やミドルウェアがある。OSは、ハードウェアの各種資源を管理し、アプリケーションソフトウェアが動作するための基本的なプラットフォームを提供する。サーバー用途では、LinuxやWindows Serverなどが広く利用されている。ミドルウェアは、OSとアプリケーションの中間に位置し、特定の機能を提供することでアプリケーション開発や実行を補助するソフトウェア群である。例えば、ウェブサイトのコンテンツを配信するWebサーバーソフトウェア(Apache, Nginx)、データベースの管理を行うデータベース管理システム(MySQL, PostgreSQL)、Javaなどのアプリケーションを実行する環境を提供するアプリケーションサーバー(Tomcat)などがこれに該当する。
インフラの提供形態は、大きくオンプレミスとクラウドに分類される。オンプレミスは、企業が自社でサーバーやネットワーク機器などの物理的な資産を所有し、自社の施設内やデータセンターで管理・運用する形態である。高度なカスタマイズが可能で、セキュリティポリシーを厳密に適用しやすい利点がある一方、初期導入コストが高く、物理的な維持管理に手間がかかる。対照的に、クラウド(クラウドコンピューティング)は、インターネットを通じて外部の事業者が提供するサーバーやストレージなどのコンピューティングリソースを利用する形態である。物理的な機器を所有する必要がなく、必要なリソースを必要な分だけ迅速に確保できるため、初期コストを抑え、需要の変動に柔軟に対応できるスケーラビリティが大きな利点である。また、オンプレミスとクラウドを連携させ、両者の利点を活かすハイブリッドクラウドという形態も普及している。
こうしたITインフラの設計、構築、運用、保守を専門的に担うのがインフラエンジニアである。設計フェーズでは、システムの要件に基づき、性能、可用性、セキュリティなどを考慮した最適なインフラ構成を決定する。構築フェーズでは、設計書に従ってハードウェアの設置やOS、ミドルウェアのインストールと設定作業を行う。近年では、Infrastructure as Code (IaC) と呼ばれる、インフラの構成をコードで記述し、自動で構築する手法も一般的になっている。運用・保守フェーズでは、システムが安定して稼働し続けるように、サーバーのリソース使用率やネットワークの通信状況を監視する。障害発生時には、迅速に原因を特定し、復旧作業を行うことが求められる。ITインフラは、技術の進化とともにその姿を大きく変えている。仮想化技術の発展により、物理的なハードウェアの制約から解放され、リソースの効率的な利用が可能になった。さらに、Dockerに代表されるコンテナ技術の登場は、アプリケーションの開発と運用のあり方を革新した。システムエンジニアを目指す上で、アプリケーション開発の知識だけでなく、その土台となるインフラの構造や技術動向を理解することは、システム全体を俯瞰し、より堅牢で効率的なシステムを構築するために不可欠なスキルである。