即値アドレス指定 (ソクチアドレスシテイ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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即値アドレス指定 (ソクチアドレスシテイ) の読み方

日本語表記

即値アドレス指定 (ソクチアドレスシテイ)

英語表記

Immediate Addressing Mode (イミディエイトアドレッシングモード)

即値アドレス指定 (ソクチアドレスシテイ) の意味や用語解説

即値アドレス指定は、コンピュータのCPU(中央処理装置)がプログラムを実行する際に、データ(オペランド)の場所を特定するための様々な方法、つまりアドレス指定モードの中でも、最も直接的でシンプルな形式の一つだ。この方式では、命令そのものの中に、操作対象となるデータが直接埋め込まれている。つまり、CPUが命令を読み込んだ瞬間に、操作すべき値が「すぐにそこにある」状態になるため、「即値(Immediate Value)」と呼ばれる。 プログラムの命令は通常、「何を(操作コード)」と「何を対象に(オペランド)」という二つの要素から構成される。例えば、「レジスタAにデータXを代入する」という命令があったとする。このとき、データXがどこにあるのかをCPUに伝える方法がアドレス指定モードだ。即値アドレス指定の場合、このデータXが命令の一部として、命令コードの中に直接書き込まれている。具体的には、アセンブリ言語で「ADD AX, 5」という命令があった場合、これはAXレジスタに数値5を加算するという意味になる。この「5」が即値であり、命令コードの一部としてCPUに読み込まれるのだ。これにより、CPUはレジスタやメモリにアクセスしてデータを別途取得する必要がないため、処理を高速に実行できるという大きな特徴を持つ。主に定数の代入、小さな数値の加算や減算、ビット演算のマスク値など、頻繁に使用される固定値の操作に利用される。 より詳細に即値アドレス指定の仕組みを見てみよう。コンピュータのプログラムは、CPUが理解できる機械語の命令の羅列で構成されている。CPUはプログラムカウンタが指し示すメモリ上のアドレスから命令をフェッチ(読み込み)し、それをデコード(解釈)して実行する。即値アドレス指定が使われている命令の場合、命令コード本体に加えて、オペランドとなるデータも同時にフェッチされる。他のアドレス指定モードでは、命令の中にデータのメモリアドレスや、データが格納されているレジスタの番号が記述されているのが一般的だ。CPUはそのアドレスやレジスタ番号を使って、さらにメモリやレジスタにアクセスし、目的のデータを取得するという追加のステップが必要になる。しかし、即値アドレス指定では、この追加のデータ取得ステップが不要となるため、データが非常に高速にCPUに供給される。 この方式の主な利点は、その高速性にある。メモリへのアクセスはCPU内部の処理に比べて非常に時間がかかる。キャッシュメモリによってある程度緩和されるものの、メインメモリへのアクセスはサイクル数を多く消費する。レジスタへのアクセスは高速だが、それでもレジスタ番号を読み取り、対応するレジスタから値を読み出すという工程が必要だ。即値アドレス指定は、これらの追加のアクセスを一切行わないため、最も効率的なデータ取得方法の一つと言える。プログラム内で頻繁に登場する「0」や「1」のような定数の代入や計算に即値を使用することで、プログラム全体の実行速度を大幅に向上させることが可能になる。 また、場合によってはコードサイズの縮小にも貢献する。例えば、小さな定数(数バイトで表現できる値)を扱う場合、その値を直接命令に埋め込む方が、その値をメモリ上の特定のアドレスに格納し、そのアドレスを命令に含めるよりも、命令全体のバイト数が少なくなることがある。これにより、プログラムのフットプリントが小さくなり、メモリ使用量を抑えることにも繋がる。さらに、命令の記述がシンプルになり、プログラマにとっても直感的に理解しやすいという利点もある。特定の値を直接指定するだけなので、データの場所を意識する必要がない。 しかし、即値アドレス指定にはいくつかの制約も存在する。最も重要なのは、即値として指定できるデータのサイズに制限があることだ。命令フォーマットは有限であり、命令コードと即値を格納するためのビット数が割り当てられている。そのため、非常に大きなデータ(例えば、数キロバイトにもなる配列や画像データなど)を即値として直接命令に埋め込むことはできない。即値の最大サイズはCPUのアーキテクチャや命令セットによって異なり、通常はレジスタのビット幅やメモリのワードサイズよりも小さいことが多い。例えば、32ビットCPUの場合でも、命令フォーマットの制約から8ビットや16ビットの即値しかサポートしない命令もある。大きなデータを扱う場合は、メモリ上のアドレスを指定する他のアドレス指定モードを利用する必要がある。 さらに、即値アドレス指定によって命令に埋め込まれたデータは、プログラムの実行中にその値を変更することはできない。これは文字通り「即値」であり、定数として扱われるためだ。もし値が動的に変化する変数を操作したい場合は、変数が格納されているメモリのアドレスや、変数の値がロードされているレジスタを指示する別のアドレス指定モードを使用する必要がある。このため、即値アドレス指定は、プログラムの初期化処理におけるレジスタへの初期値設定、ループカウンタの増減値、特定のビット操作におけるマスク値など、値が固定されている定数的な操作に限定して適用されるのが一般的だ。 このように、即値アドレス指定は、特定の条件下で高いパフォーマンスと効率性を提供する、コンピュータアーキテクチャにおける重要なアドレス指定モードの一つである。その特性を理解することは、システムエンジニアを目指す上で、CPUがどのように動作し、プログラムがどのように効率的に実行されるかを把握する上で非常に有益だ。

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