宇宙船演算子(うちゅうせんえんざんし)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
宇宙船演算子(うちゅうせんえんざんし)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
宇宙船演算子 (うちゅうせんえんざんし)
英語表記
Spaceship operator (スペースシップ オペレーター)
用語解説
宇宙船演算子は、プログラミング言語、特にC++20で導入された比較演算子の一つだ。別名「三方比較演算子」とも呼ばれる。従来の比較演算子(==、!=、<、<=、>、>=)を簡潔に表現し、型の自動変換やコンパイラの最適化を促進する役割を担う。
従来の比較演算では、例えばa == bとa != bのように、複数の演算子を個別に定義する必要があった。また、ユーザー定義の型(クラスや構造体)でこれらの演算子をオーバーロードする場合、すべての演算子を矛盾なく実装するのは手間がかかる作業だった。宇宙船演算子を用いることで、これらの課題を解決できる。
宇宙船演算子は<=>という記号で表される。この演算子は、左辺と右辺の値を比較し、その結果に基づいて以下のいずれかの値を返す。
a < bの場合: 負の値(通常は-1)a == bの場合: 0a > bの場合: 正の値(通常は1)- 比較不能の場合: 未規定の値
宇宙船演算子の戻り値の型は、<compare>ヘッダーで定義されている以下のいずれかの型となる。
std::strong_ordering: 全順序付けが可能で、同値なオブジェクトが識別可能な場合に用いられる。例えば、整数や文字列の比較に適している。a == bがtrueの場合、aとbは区別できない。std::weak_ordering: 全順序付けが可能だが、同値なオブジェクトが識別できない場合に用いられる。例えば、浮動小数点数の比較に適している。NaN(非数)の存在が考慮される場合もある。a == bがtrueの場合でも、aとbが完全に同一であるとは限らない。std::partial_ordering: 全順序付けができない場合に用いられる。例えば、NaNを含む浮動小数点数の比較などが該当する。aとbの間に順序関係がない場合(例えば、どちらかがNaNの場合)、a <=> bはstd::partial_ordering::unorderedを返す。std::strong_equality: 等価比較のみ可能で、全順序付けは不要な場合に用いられる。a == bがtrueの場合、aとbは区別できない。std::weak_equality: 等価比較のみ可能で、全順序付けは不要だが、同値なオブジェクトが識別できない場合に用いられる。a == bがtrueの場合でも、aとbが完全に同一であるとは限らない。
これらの戻り値型は、それぞれ異なる特性を持つため、比較対象の型や要件に応じて適切な型を選択する必要がある。
宇宙船演算子をユーザー定義の型に実装する場合、<=>演算子をオーバーロードする。コンパイラは、オーバーロードされた宇宙船演算子に基づいて、他の比較演算子(==、!=、<、<=、>、>=)を自動的に生成できる場合がある。例えば、a <=> bが定義されていれば、a < bは(a <=> b) < 0として自動的に解釈されることがある。これにより、プログラマはすべての比較演算子を個別に実装する手間を省き、コードの重複を減らすことができる。
宇宙船演算子の導入により、コードの簡潔性、保守性、およびパフォーマンスが向上する可能性がある。ただし、新しい概念であるため、十分な理解と適切な使用が求められる。特に、戻り値の型 (std::strong_orderingなど) の選択は、比較対象の型の特性を考慮して慎重に行う必要がある。
さらに、異なる型間の比較を行う場合、宇宙船演算子は型の自動変換をサポートする。これにより、明示的な型変換を減らし、コードをより簡潔に記述できる。しかし、意図しない型変換が発生する可能性もあるため、注意が必要だ。
宇宙船演算子は、C++20以降のモダンなC++プログラミングにおいて、重要な役割を果たす演算子の一つと言える。