教師あり学習 (キョウシアリガクシュウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
教師あり学習 (キョウシアリガクシュウ) の読み方
日本語表記
教師あり学習 (キョウシアリガクシュウ)
英語表記
Supervised learning (スーパーバイズドラーニング)
教師あり学習 (キョウシアリガクシュウ) の意味や用語解説
教師あり学習は、機械学習における主要な学習方法の一つである。この学習方法では、入力データとそれに対応する「正解」の組み合わせ(これを教師データと呼ぶ)を事前に与え、そのデータから規則性やパターンを学習する。人間が問題集を解く際に、問題と解答のセットを繰り返し学習し、未見の問題にも応用できるようにする過程に似ている。 概要として、教師あり学習は、未知のデータに対して何らかの予測や分類を行うモデルを構築することを目的とする。具体的には、過去のデータから、入力データと出力されるべき正解との関係性をモデルが学習し、学習したモデルを使って新たな入力データに対する出力値を推測する。例えば、過去の住宅データ(広さ、築年数、駅からの距離など)と実際の販売価格のペアを大量に与えることで、モデルはそれぞれの要素が価格にどう影響するかを学習する。この学習が完了すれば、新しい住宅のデータが与えられた際に、その販売価格を予測できるようになる。このように、明示的な正解データが存在し、それを基に学習を進めるのが教師あり学習の最大の特徴である。 詳細に入ると、教師あり学習のプロセスはいくつかの段階を経て進行する。まず、最も重要な要素である「教師データ」の準備が必要となる。これは、モデルが学習するための具体的な入力データと、その入力データに対する正しい出力(正解ラベルとも呼ばれる)のペアを指す。例えば、犬と猫の画像を分類するモデルを構築する場合、それぞれの画像データが入力となり、「犬」または「猫」というラベルが正解ラベルとなる。 次に、この教師データを用いて「モデル」を学習させる。モデルとは、入力から正解への関係性を表現する関数やアルゴリズムのことである。学習の過程では、モデルが入力データを受け取り、予測を行う。その予測結果と実際の正解ラベルとの間にどれくらいの「誤差」があるかを計算し、この誤差が小さくなるようにモデルの内部パラメータを調整する。この誤差の計算とパラメータの調整は、多くの場合は最適化アルゴリズム(例:勾配降下法)を用いて、何回も繰り返される。繰り返しの学習により、モデルは入力データと正解ラベルの関係性をより正確に捉えられるようになる。 教師あり学習で解決される代表的なタスクは「分類」と「回帰」の二つがある。 「分類」は、入力データがどのカテゴリに属するかを予測するタスクである。出力は離散的な値、すなわちカテゴリとなる。例えば、メールが「スパム」か「非スパム」かを判別する、病気の検査結果から患者が「陽性」か「陰性」かを判断する、画像に写っている物体が「犬」「猫」「鳥」のどれであるかを識別するといった用途が挙げられる。モデルは、与えられた入力データを学習した知識に基づいて、いずれかのカテゴリに割り当てる。 一方、「回帰」は、連続的な数値を予測するタスクである。出力は連続的な値、すなわち量となる。例えば、過去の住宅販売データから新しい住宅の販売価格を予測する、気象データから明日の気温を予測する、株価の変動パターンから将来の株価を予測するといった用途がある。回帰モデルは、入力された特徴量に基づいて、連続的な範囲内の数値を推定する。 教師あり学習の具体的な学習の流れは以下のようになる。 第一に、「データ収集」である。学習に十分な量と質の教師データを集める。データの量が多いほど、また質が高いほど、一般的にモデルの性能は向上する。 第二に、「データ前処理」を行う。収集したデータには欠損値が含まれていたり、形式が不揃いだったりすることが多いため、これらを修正したり、モデルが学習しやすい形に変換したりする。例えば、数値データのスケールを揃える正規化や、カテゴリデータを数値に変換するエンコーディングなどがある。 第三に、「データ分割」を行う。用意した教師データを、「学習データ(トレーニングデータ)」と「評価データ(テストデータ)」の二つに分ける。学習データでモデルを訓練し、評価データを用いて訓練されていない未知のデータに対するモデルの性能を測る。これにより、モデルが特定のデータに過度に適合しすぎること(過学習)を防ぎ、汎用的な予測能力を持っているかを客観的に評価できる。 第四に、「モデル選択」と「モデル学習」である。分類や回帰といったタスクに応じて、適切な学習アルゴリズム(線形回帰、決定木、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークなど)を選択し、学習データを用いてモデルのパラメータを最適化する。 最後に、「モデル評価」である。評価データを使ってモデルの精度や性能を測定する。分類タスクでは精度、適合率、再現率、F1スコアなどが、回帰タスクでは平均二乗誤差(MSE)や二乗平均平方根誤差(RMSE)などが一般的に用いられる。必要に応じて、モデルの学習プロセス自体を制御する「ハイパーパラメータ」を調整し、モデルの性能をさらに向上させることも行われる。 教師あり学習には明確なメリットとデメリットがある。 メリットとしては、正解データがあるため、モデルの予測が正しいかどうかを明確に評価でき、高い精度を実現しやすい点が挙げられる。また、その応用範囲は非常に広く、様々な実世界の課題解決に貢献している。 一方でデメリットとしては、高品質な教師データを大量に準備するコストと手間が大きい点が挙げられる。教師データの作成は時間とリソースを要し、場合によっては専門家の知識が必要になることもある。また、教師データに偏りがある場合、モデルもその偏りを学習してしまい、不公平な予測や誤った結果を出す可能性がある。さらに、教師データに含まれないような全く新しいパターンや状況には対応しにくい場合もある。 代表的な教師あり学習のアルゴリズムには、シンプルな関係性を扱う「線形回帰」や「ロジスティック回帰」、決定木のように条件分岐で分類する「決定木」やその集合である「ランダムフォレスト」、データ間の境界線を見つける「サポートベクターマシン(SVM)」、そして近年目覚ましい発展を遂げている多層構造を持つ「ニューラルネットワーク」(特に深層学習)などがある。システムエンジニアを目指す上では、これらのアルゴリズムの基本的な概念を理解し、適切な場面で活用できる知識を身につけることが重要となる。 教師あり学習は、今日のAI技術の基盤をなすものであり、その原理と応用を理解することは、これからのシステム開発において不可欠なスキルとなるだろう。