【ITニュース解説】Explaining the Anomalous Anti-Tail of 3I/ATLAS

近年、私たちの太陽系に外の恒星系から飛来する「恒星間天体」が観測されるようになり、宇宙物理学の分野で大きな注目を集めている。その中でも、2019年に発見された3番目の恒星間天体「3I/ATLAS」の最新の観測データが、天文学者たちの間で活発な議論を呼んでいる。特に注目されているのは、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された高解像度の画像に捉えられた、奇妙な「アンチテイル（反尾）」の存在である。

通常、彗星が太陽に近づくと、その熱によって本体の氷が蒸発し、内部の塵やガスが放出される。これが太陽の光や太陽風によって押し流されることで、太陽とは反対の方向に伸びる「尾」が形成される。しかし、特定の条件下では、あたかも太陽の方向に向かって尾が伸びているように見える「アンチテイル」という現象が観測されることがある。これは、彗星の軌道上に放出された比較的大きな塵の粒子が、地球から見たときの視覚的な効果によってそのように見えるもので、それ自体は珍しい現象ではない。彗星から放出された塵は彗星の軌道に沿って広がるため、地球がその軌道面を通過する際に、軌道の一部が太陽側にはみ出して見えるのがアンチテイルの正体である。

ところが、3I/ATLASで観測されたアンチテイルは、この従来のメカニズムだけでは説明が難しい「異常な」特徴を持っていた。この天体は太陽に最も近づいた後、遠ざかっていく過程で観測されたが、その時点での天体の活動、つまりガスや塵を放出する力だけでは、観測されたような長くはっきりとしたアンチテイルを形成することは困難だと考えられた。観測されたデータと既存の理論モデルとの間に、明らかな食い違いが生じたのである。

この謎に対して、天文学者のアヴィ・ローブ氏は、新たな物理モデルに基づいた説得力のある説明を提唱している。彼の仮説の中心にあるのは「潮汐分裂」という現象だ。これは、天体が惑星や恒星のような巨大な質量を持つ天体のすぐ近くを通過する際に、強大な重力によって引き裂かれてしまう現象を指す。天体のうち、巨大天体に近い側と遠い側とでは受ける重力の大きさに差が生じる。この重力の差が、天体自身の結合力を上回ると、天体は引き伸ばされて破壊されてしまう。

ローブ氏の説によれば、3I/ATLASは太陽に最も接近した（近日点を通過した）際に、まさにこの太陽の潮汐力によって本体が分裂、あるいは破壊された可能性がある。その結果、多数の破片が生じ、それらが元の天体の軌道に沿って帯状に広がった。今回、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた異常なアンチテイルの正体は、彗星活動によって新たに放出された塵の尾ではなく、この過去の破壊イベントで生じた破片の集まりが太陽光を反射している姿なのではないか、というのだ。このモデルは、太陽から遠ざかる段階にある天体の弱い活動では説明できなかったアンチテイルの存在を、太陽最接近時に起きた一度の劇的なイベントの結果として合理的に説明することができる。

この仮説が正しければ、アンチテイルを構成している物質は、現在もガスを噴出している活動的な粒子ではなく、単なる岩石や氷の破片、つまり「不活性な」物質の集まりである可能性が高い。これは、今後の観測によって検証可能な予測であり、アンチテイルを構成する物質の分光観測などを行えば、その組成や状態を詳しく知ることができるだろう。

恒星間天体3I/ATLASの観測から得られたこの知見は、非常に重要な意味を持つ。太陽系外からやってきた天体が、太陽のような恒星に接近した際にどのような物理的影響を受け、その運命がどうなるのかを具体的に示す貴重な実例となるからだ。観測された一つの現象を手がかりに、既存の理論では説明できない点を洗い出し、新たな仮説を立てて検証していく。この一連のプロセスは、科学的探求の典型的な姿であり、データに基づいた論理的な問題解決が求められるシステム開発のアプローチとも通じるものがある。高精度の観測技術がもたらす詳細なデータが、宇宙に関する我々の理解を新たな段階へと引き上げていることを示す、興味深い事例である。