【ITニュース解説】Development speed is not a bottleneck

ポーランドのソフトウェア開発者であるパヴェウ・ブロジンスキー氏の記事「Development speed is not a bottleneck（開発速度はボトルネックではない）」は、ソフトウェア開発において、開発速度だけを重視するのではなく、より根本的な問題に着目することの重要性を説いている。

多くの人が、ソフトウェア開発の遅延を開発速度の遅さと捉えがちだ。しかし、ブロジンスキー氏は、開発速度は問題の一つの側面に過ぎず、実際には、ビジネス上の意思決定や要求定義の曖昧さ、そして組織構造などが、より大きな影響を与えていると指摘する。

記事では、開発速度を上げるための努力が無駄になるケースをいくつか紹介している。例えば、ビジネス側からの要求が頻繁に変更される場合、開発チームがどれだけ速くコードを書いたとしても、最終的には手戻りが発生し、全体の開発期間は長引いてしまう。また、要求が曖昧なまま開発が進められると、開発チームは仕様の解釈に時間を費やし、誤った機能を実装してしまう可能性もある。

さらに、組織構造が開発速度に影響を与えることもある。部門間の連携がうまくいっていない場合、情報の伝達に時間がかかり、開発の遅延につながる。例えば、開発チームがデータベースの専門家からの協力を必要とする場合、その専門家が他のプロジェクトで忙しいと、データベースに関する作業が滞ってしまう。

ブロジンスキー氏は、開発速度を向上させること自体は悪いことではないとしながらも、それが唯一の解決策ではないことを強調する。開発速度を上げる前に、まず、ビジネス上の意思決定プロセス、要求定義の質、組織構造など、開発プロセス全体を見直す必要があると述べている。

ビジネス側の意思決定プロセスについては、市場のニーズを正確に把握し、優先順位を明確にすることが重要だ。要求定義については、曖昧さを排除し、具体的な仕様を定める必要がある。そのためには、ビジネス側と開発チームが緊密に連携し、共通理解を深めることが不可欠だ。

組織構造については、部門間の連携を強化し、情報の伝達をスムーズにする必要がある。また、開発チームが意思決定に参加できるような、よりフラットな組織構造を検討することも有効だ。

ブロジンスキー氏は、開発速度を向上させるための具体的な方法として、アジャイル開発手法の導入を提案している。アジャイル開発では、短いサイクルで開発を進め、頻繁に顧客からのフィードバックを得ることで、要求の変更に柔軟に対応できる。また、チーム内のコミュニケーションを重視し、問題の早期発見と解決を促す。

しかし、アジャイル開発も万能ではない。アジャイル開発を成功させるためには、チームメンバーのスキルだけでなく、組織全体の文化を変える必要がある。アジャイル開発では、自己組織化されたチームが主体的に動くことが求められるため、上司からの指示待ちの姿勢ではうまくいかない。

記事の結論として、開発速度は重要な要素の一つではあるものの、それだけに囚われるべきではない。より根本的な問題を解決することで、開発速度は自然と向上する。ソフトウェア開発の遅延に悩んでいる場合は、開発速度を上げるための努力をする前に、ビジネス上の意思決定、要求定義、組織構造など、開発プロセス全体を見直すことが重要だ。システムエンジニアを目指す初心者にとっては、コードを書く技術だけでなく、ビジネスや組織に関する知識も重要であることを示唆している。開発プロジェクト全体を俯瞰的に捉え、問題の本質を見抜く力を養うことが、より良いシステムエンジニアになるための第一歩となるだろう。