【ITニュース解説】Function Calling (Tool use)とRAGで外部情報を利用する
ITニュース概要
AIチャットが外部情報を利用する技術としてFunction CallingとRAGを実装する。Function CallingはAIが外部の処理を呼び出し動的な情報を取り込む仕組み、RAGは外部データに基づき応答を生成する仕組みだ。これらでAIを賢くし、外部情報活用のAIチャット構築法を解説する。
ITニュース解説
AIチャットアプリケーションを開発する際、ただ単に事前に学習した情報に基づいて返答するだけでなく、より賢く、より役に立つAIを目指すためには、外部の情報を活用する仕組みが不可欠になる。ここで重要となるのが、「Function Calling」と「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という二つの技術だ。 まず、AIチャットアプリケーションの基本的な概念から説明する。これは、ユーザーからの質問や指示に対して、AIが自然な言葉で対話形式の返答を生成するソフトウェアを指す。このAIチャットアプリをJava言語で効率的に開発するためのツールの一つが「LangChain4j」である。LangChain4jは、AIモデルとの連携や、複数のAI機能を組み合わせて複雑なアプリケーションを作るための様々な機能を提供するフレームワークであり、Java開発者にとってAIアプリケーション開発の敷居を下げる役割を果たす。 それでは、今回の主題であるFunction Callingから詳しく見ていこう。Function Callingは、AIモデルが自身の推論に基づいて、外部のツールや機能を呼び出す仕組みのことである。これを「Tool use」と呼ぶこともある。例えば、ユーザーがAIに「今日の東京の天気は?」と尋ねたとしよう。通常のAIは、学習データに含まれる天気に関する知識しか持っていないため、リアルタイムの正確な天気情報を提供できない。しかし、Function Callingの仕組みが導入されていれば、AIは「天気予報を取得する」という外部の機能(APIなど)が存在することを認識し、ユーザーの意図を理解した上で、その機能を自動的に呼び出す。AIはFunction Callingを通じて外部の天気予報サービスにアクセスし、最新の天気情報を取得して、その情報に基づいてユーザーに返答するのだ。このように、Function Callingを利用することで、AIは自身の学習データには含まれていない動的でリアルタイムな情報を外部から取り込み、ユーザーの要求に応じた処理を実行できるようになる。これは、AIが「何をするべきか」を判断し、そのための適切な「行動」を選択して実行する能力を拡張する技術と言える。株価のリアルタイム情報取得、カレンダーへのイベント追加、メール送信など、様々な外部サービスとの連携が可能になり、AIの応用範囲を格段に広げる。 次に、RAG(Retrieval-Augmented Generation)について解説する。RAGは、Retrieval(検索)とAugmented Generation(拡張生成)を組み合わせた技術で、AIが回答を生成する際に、外部のドキュメントやデータベースから関連情報を「検索(Retrieval)」し、その検索結果を参考にしながら回答を「生成(Generation)」する仕組みである。AIモデルは膨大なデータで学習しているが、その知識は学習時点のものであり、常に最新の情報や、特定の企業や組織に特化した専門的な情報を持っているわけではない。RAGは、この課題を解決するために考案された。例えば、ある会社の製品マニュアルや社内規定についてAIに質問するケースを考える。AIは、まずユーザーの質問に関連する情報を、指定されたデータベース(製品マニュアルのPDF群や社内Wikiなど)から探し出す。そして、見つけ出した関連情報の内容を基に、より正確で詳細な回答を生成するのである。このプロセスにより、AIは常に最新の情報を参照したり、専門性の高い分野の知識を正確に扱ったりすることが可能になる。AIが「何を知っているべきか」を判断し、その情報源から「知識」を補強する技術と言える。これにより、AIが事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション」と呼ばれる現象を抑制し、信頼性の高い情報提供が可能になる。 Function CallingとRAGは、それぞれ異なるアプローチでAIの能力を拡張するが、これらを組み合わせることで、さらに高度なAIアプリケーションを構築できる。例えば、ユーザーが「〇〇会社の最新の株価動向と、過去の業績レポートの要約を教えて」と質問した場合を考えてみよう。AIはまずFunction Callingによって「〇〇会社の最新株価を取得する」という機能を呼び出し、リアルタイムの株価データを手に入れる。次に、「過去の業績レポートの要約」という要求に対して、RAGの仕組みを活用し、社内の過去の業績レポートデータベースから関連するドキュメントを検索し、その内容を読み込んで要約を生成する。このように、Function Callingで特定の情報や操作を外部ツールに依頼し、その結果や、さらに深い情報が必要な場合にRAGで外部の知識ベースを参照することで、AIはより複雑な要求にも的確に応えられるようになる。 これらの技術は、単にAIの返答能力を高めるだけでなく、AIを単なる情報提供ツールから、現実世界のデータやサービスと連携し、具体的なタスクを遂行できる「インテリジェントなエージェント」へと進化させる鍵となる。LangChain4jのようなフレームワークは、これらの複雑な技術をJava開発者が簡単に統合し、実用的なAIアプリケーションを効率的に開発するための強力な支援ツールとなるだろう。システムエンジニアを目指す者にとって、これらの技術を理解し、実装できる能力は、これからのAI時代において非常に価値のあるスキルとなる。