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【ITニュース解説】Grammarly can now fix your Spanish and French grammar

2025年09月10日に「The Verge」が公開したITニュース「Grammarly can now fix your Spanish and French grammar」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

文法チェックツールのGrammarlyが、AIの力を借りてスペイン語やフランス語など英語以外の複数言語に対応した。これまで言語学者が手作業で開発してきたが、AI導入により多言語展開が加速し、多様なニーズに応える。

ITニュース解説

Grammarlyが、これまでの英語だけでなく、新たにスペイン語、フランス語、ポルトガル語、ドイツ語、イタリア語の5言語に対応したというニュースは、現代のシステム開発がどのように進化しているか、そしてAIがどのような役割を担っているかを理解する上で非常に良い事例となる。システムエンジニアを目指す初心者にとって、これはソフトウェア開発の将来を考える上で重要な視点を提供してくれるだろう。

Grammarlyは長年にわたり、英語の文章作成を支援する強力なツールとして広く使われてきた。その精度は非常に高く、多くのユーザーが自然で正確な文章を書く上で頼りにしている。この高い精度は、一朝一夕に生まれたものではない。ニュース記事によると、Grammarlyの開発チームは16年もの間、言語学者たちが中心となって、英語の自然な言語パターンを注意深く分析し、それをソフトウェアの機能として作り上げてきたという。これは、一つ一つの文法規則、単語の組み合わせ、句読点の使い方といった膨大な言語学的知識を、プログラムコードへと落とし込む、気の遠くなるような作業だったと想像できる。

このような開発アプローチは、いわゆる「ルールベースシステム」に近い。ルールベースシステムとは、人間が定めた詳細なルールや条件に基づいて動作するシステムのことを指す。例えば、「主語が単数であれば動詞はsを付ける」といった明確な文法ルールをプログラムに組み込むことで、エラーを検出したり、適切な修正案を提示したりする仕組みである。この手法は、明確なルールが存在する分野では非常に高い精度を発揮する。しかし、人間の言語は非常に複雑で、文脈によって意味が大きく変わったり、例外が多かったりする。そのため、言語学の専門家が長年にわたり、無数のパターンを分析し、ソフトウェアに組み込むためのルールを丹念に作り上げてきたのだ。この地道な努力が、Grammarlyの英語チェック機能の高い精度を支えてきたと言える。

しかし、今回、Grammarlyが新たに5つの言語に対応するにあたっては、これまでとは異なる、より効率的で強力なアプローチが採用された。それが「AI」の活用だ。もし、これまでのルールベースの手法だけで、新たにスペイン語やフランス語といった言語に対応しようとすれば、英語の場合と同様に、それぞれの言語の専門家が何十年もの時間をかけて、膨大なルールを一つ一つ手作業で作り上げなければならなかっただろう。これは現実的ではない。言語は国や地域、時代によってもその使われ方が微妙に変化するため、全てをルール化し続けるのは途方もない労力が必要となるからである。

ここでAIが大きな力を発揮する。特に自然言語処理(NLP)という分野のAI技術は、言語に関する様々な課題を解決するために開発されてきた。AIは、大量のテキストデータ(例えば、正確な文法で書かれた書籍や記事、会話のログなど)を学習することで、その言語が持つパターンや構造を自ら「学習」する。人間が具体的なルールを一つ一つ教え込まなくても、AIはデータの中から統計的な規則性や特徴を見つけ出し、文法的に誤りのある箇所や、より自然な表現を提案できるようになるのだ。

このプロセスは、システムエンジニアの視点で見ると、非常に効率的である。ルールを手動で作成する代わりに、大量の高品質なデータをAIに与え、学習モデルを構築する。この学習モデルは、一度作成すれば、与えられた新しいテキストに対して、既知のパターンに基づいて予測や判断を行うことができる。多言語対応の場合、各言語の学習データを用意し、それぞれの言語に特化したAIモデルを開発すれば、言語学者による手作業のルール作成に比べて、はるかに迅速かつ広範囲な対応が可能となる。

AIを活用したシステム開発では、良質なデータをいかに集め、AIが学習しやすい形に加工するかが非常に重要となる。また、AIモデルを構築するためのアルゴリズム選定や、そのモデルの性能を評価し、改善していくスキルも求められる。これは、システムエンジニアが今後身につけていくべき重要なスキルセットの一つだと言える。現代のシステム開発では、単にプログラムコードを書くだけでなく、データを理解し、AIモデルを扱える能力がますます価値を持つようになっている。

Grammarlyの多言語対応のニュースは、システム開発が単一の専門分野に留まらず、言語学のような人文科学の知識と、AIやデータサイエンスといった最先端のIT技術が融合することで、より高度で実用的なサービスを生み出せることを示している。過去の丹念なルール作成の努力が、AIの登場によって新たなフェーズに入り、以前は不可能だったスケールでのサービス提供を実現したのだ。これは、今後システムエンジニアとしてキャリアを築いていく上で、AI技術の基礎を理解し、それをどのように現実世界の課題に応用していくかを考える良いきっかけとなるだろう。AIは、特定の作業を自動化するだけでなく、これまで人間が行ってきた高度な知的作業を支援し、人間の能力を拡張するツールとして、ますますその重要性を増していく。

システム開発の現場では、ルールベースシステムとAIベースシステムがそれぞれ得意な領域を持ち、適切に組み合わせて利用されることも多い。Grammarlyの事例は、まさにこの技術の融合が、いかにユーザーの利便性を向上させ、サービスの価値を高めるかを具体的に示している。これからも、様々な分野でAIが活用され、私たちの生活や仕事の仕方を大きく変えていくことは間違いないだろう。

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