【ITニュース解説】Simple Steps for Attack Surface Reduction

2025年09月04日に「The Hacker News」が公開したITニュース「Simple Steps for Attack Surface Reduction」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

サイバー攻撃を防ぐには、最初の設定が非常に重要だ。初期設定で「deny-by-default」ポリシーや多要素認証(MFA)、アプリケーションの隔離(Ringfencing™)を適用し、Officeマクロ無効化などを行えば、多くのリスクを未然に排除できる。

ITニュース解説

サイバーセキュリティの世界では、常に新たな攻撃手法が生まれ、企業や組織はその脅威に晒されている。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この分野の知識は必須であり、特に「攻撃対象領域の削減(Attack Surface Reduction)」という考え方は非常に重要だ。これは、攻撃者が侵入できる可能性のある経路や脆弱性をできるだけ少なくすることで、サイバー攻撃を未然に防ぐための戦略である。

最近の動向として、サイバーセキュリティのリーダーたちは、攻撃が実際に発生する前に、いかにしてそれを止めるかという大きなプレッシャーに直面している。これに対し、最も効果的な防御策は、実はシステムを導入する「初日」に行われる設定にある、という点が強調されている。一度システムが稼働し始めると、セキュリティ設定を変更することは、運用に影響を与えたり、新たなリスクを生んだりする可能性があるため、非常に困難になる場合が多い。だからこそ、最初から堅牢なセキュリティ設定を施すことが、後々の多大な労力とコストの削減につながるのだ。

具体的にどのような設定がリスクを大きく削減するのか、その主要なポイントを見ていこう。

まず、「デフォルト拒否(Deny-by-default)」という考え方がある。これは、「明示的に許可されていないものは、すべて拒否する」というセキュリティポリシーの基本原則である。例えば、コンピュータの通信を制御するファイアウォールを想像してみよう。通常、ファイアウォールは「許可リスト」と呼ばれるルールを持っており、リストに記載されていない通信はすべてブロックする。これにより、未知の不正な通信や、本来不要な通信がシステムに到達することを防ぐことができる。これとは逆に「デフォルト許可(Permit-by-default)」の場合、許可リストにないものはすべて許可されてしまうため、許可されていないものが危険であるという前提で、非常に脆弱な状態になりやすい。デフォルト拒否は、攻撃者がシステム内で自由に動き回るのを阻止し、特定の許可された動作のみを許可することで、リスクカテゴリ全体を大幅に排除する強力な手段となる。

次に、「多要素認証の強制(MFA enforcement)」も極めて重要な対策だ。多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)とは、ユーザーがシステムにログインする際に、パスワードのような「知っている情報」だけでなく、スマートフォンに送られるワンタイムパスワードのような「持っている情報」や、指紋認証のような「生体情報」といった、複数の異なる要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みである。これまでのパスワード認証だけでは、パスワードが漏洩したり推測されたりした場合に、容易に不正ログインを許してしまうリスクがあった。しかし、多要素認証を強制することで、たとえ攻撃者がパスワードを知っていたとしても、追加の要素がなければログインできないため、不正アクセスを劇的に困難にできる。組織全体でMFAの利用を義務付けることで、ユーザーアカウントに対する攻撃からシステムを保護する。

さらに、「アプリケーションのリングフェンシング(Application Ringfencing™)」という概念も注目されている。リングフェンシングとは、本来はビジネスにおける用語だが、セキュリティの文脈では、個々のアプリケーションやプロセスを互いに隔離された「区画」の中に閉じ込めることを指す。これは、もしあるアプリケーションがマルウェアに感染したり、脆弱性を突かれたりした場合でも、その影響が他のアプリケーションやシステム全体に波及するのを防ぐための技術である。例えるなら、船舶の各区画が独立していることで、一つの区画に浸水しても船全体が沈没しないようにする仕組みに近い。アプリケーションを安全な仮想環境やサンドボックス内で実行することで、不正な動作が他の重要なリソースにアクセスしたり、データを盗んだりするのを防ぎ、攻撃の影響範囲を限定する。これにより、アプリケーションの脆弱性に起因するリスクカテゴリ全体を封じ込めることが可能となる。

これらの主要な対策以外にも、具体的なリスク削減策がある。例えば、「Officeマクロの無効化」はその一つだ。Microsoft Office製品に搭載されているマクロ機能は、定型作業を自動化するために非常に便利だが、悪意のあるマクロが仕込まれたファイルをユーザーが開いてしまうと、マルウェアのダウンロードや実行、情報漏洩といった深刻な被害につながる可能性がある。このような攻撃を防ぐため、組織内でOfficeマクロの実行をデフォルトで無効化する、あるいは信頼できる発行元からのマクロのみを許可する設定を適用することは、フィッシング詐欺やマルウェア感染のリスクを大幅に低減させる。

また、「サーバーからの外部接続のブロック」も重要なセキュリティ対策である。企業内のサーバーは、通常、特定の目的のために外部サービスと通信する必要があるが、不必要な外部への通信経路を開放しておくことは、攻撃者にとっての抜け穴となり得る。例えば、サーバーが感染した場合、攻撃者はそのサーバーを利用して外部のコマンド&コントロールサーバーと通信し、さらなるマルウェアをダウンロードしたり、盗んだ情報を外部に送信したりする可能性がある。このようなリスクを防ぐため、サーバーからのアウトバウンド(外部への)接続を厳しく制限し、本当に必要な通信のみを許可する設定を行うことで、サーバーが不正に悪用される経路を遮断する。

これらの多岐にわたる対策は、それぞれが独立しているようでいて、実は「攻撃対象領域の削減」という共通の目標に向かって機能している。システムの初期設定段階で、これらの強力なセキュリティポリシーを適用することは、将来発生しうるあらゆる種類のサイバー攻撃に対する強固な防衛線を構築することに直結する。システムエンジニアを目指す皆さんは、単にシステムを構築するだけでなく、そのシステムをいかに安全に運用するかという視点を持つことが、現代のIT社会において非常に重要となるだろう。これらの初期設定こそが、サイバーセキュリティにおける「最高の一手」となり得ることを理解しておくべきだ。

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