アトミック性(アトミックセイ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アトミック性(アトミックセイ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アトミック性 (アトミックセイ)

英語表記

Atomicity (アトミシティ)

用語解説

アトミック性とは、一連の処理が全て完了するか、全く実行されないかのどちらかになる性質を指す。データベースの世界で特に重要な概念であり、データの整合性を保つ上で欠かせない。システムエンジニアを目指す上で、このアトミック性を理解することは非常に重要だ。

具体的に考えてみよう。例えば、銀行の口座間で送金を行う処理を想像してほしい。この処理は、通常、送金元口座からの引き落としと、送金先口座への入金の2つの処理から構成される。もし、送金元口座からの引き落としは成功したものの、送金先口座への入金が失敗した場合、どうなるだろうか。お金は送金元口座から減ったのに、送金先口座には入金されていないという、矛盾した状態が発生してしまう。これでは、銀行システム全体の信頼が損なわれてしまうだろう。

アトミック性は、このような事態を防ぐために存在する。アトミック性が保証されていれば、送金処理全体が成功するか、全く実行されないかのどちらかになる。つまり、送金元口座からの引き落としと送金先口座への入金が両方成功するか、両方とも実行されないかのどちらかになるのだ。もし、処理の途中でエラーが発生した場合は、システムは自動的に処理全体をロールバックし、元の状態に戻す。これにより、データは常に整合性の取れた状態に保たれる。

アトミック性を実現するための具体的な技術としては、トランザクション管理が挙げられる。トランザクションとは、一連の処理をまとめたものであり、アトミック性の保証単位となる。データベースシステムは、トランザクションを開始し、一連の処理を実行し、最後にトランザクションをコミット(確定)するか、ロールバック(取り消し)する。コミットが成功すれば、トランザクション内の全ての処理が確定し、データベースに反映される。ロールバックが行われれば、トランザクション内の全ての処理が取り消され、データベースはトランザクション開始前の状態に戻る。

データベース以外にも、アトミック性の概念は様々な場面で利用される。例えば、ファイルシステムにおけるファイル更新処理や、分散システムにおける処理などだ。ファイルシステムでは、ファイルの書き込み中にシステムがクラッシュした場合でも、ファイルが中途半端な状態で保存されることを防ぐために、アトミック性が利用されることがある。分散システムでは、複数のサーバーにまたがる処理をアトミックに行うために、より複雑な技術が用いられる。

アトミック性を実装する上での課題としては、パフォーマンスの問題が挙げられる。アトミック性を保証するためには、処理の実行中にデータのロックを行ったり、ログを記録したりする必要があるため、どうしてもオーバーヘッドが発生してしまう。そのため、システム設計者は、アトミック性をどこまで保証するか、どのような技術を用いるかを慎重に検討する必要がある。

また、アトミック性は、完全性、一貫性、独立性と並んで、ACID特性と呼ばれるデータベースの重要な特性の一つである。完全性(Atomicity)、一貫性(Consistency)、独立性(Isolation)、持続性(Durability)の頭文字を取ったもので、これらの特性を全て満たすことで、データベースは信頼性の高いデータ管理を実現できる。

アトミック性は、システム開発において非常に重要な概念であり、特にデータの整合性を重視するシステムにおいては、欠かせない要素となる。システムエンジニアを目指す上で、アトミック性の概念をしっかりと理解し、適切に活用できるようになることが重要だ。