平均ビットレート(ヘイキンビットレート)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

平均ビットレート(ヘイキンビットレート)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

へいきんビットレート (ヘイキンビットレート)

英語表記

Average Bitrate (アベレージ ビットレート)

用語解説

平均ビットレート(Average Bit Rate、略してABR)とは、動画や音声などのデジタルデータを一定時間あたりに伝送または記録するために必要なデータ量の平均値を指す。特に、ストリーミング配信やデジタル放送、ビデオ会議システムなどで、ネットワーク帯域幅やストレージ容量を効率的に利用するために重要な概念となる。

ビットレートは通常、1秒あたりのビット数(bps: bit per second)で表される。例えば、「2Mbps」というビットレートは、1秒あたり2メガビットのデータが伝送されることを意味する。動画や音声の品質は、一般的にビットレートが高いほど向上するが、同時に必要なデータ量も増加する。

平均ビットレートは、可変ビットレート(VBR: Variable Bit Rate)方式と対比されることが多い。VBR方式では、動画や音声のコンテンツの内容に応じてビットレートを動的に変化させる。例えば、動きの少ないシーンではビットレートを下げ、動きの激しいシーンではビットレートを上げることで、全体の品質を維持しつつデータ量を削減できる。

一方、固定ビットレート(CBR: Constant Bit Rate)方式では、コンテンツ全体を通して一定のビットレートが使用される。CBRは、リアルタイム配信など、ビットレートが変動すると問題が生じる場合に適している。

平均ビットレートは、VBR方式において、一定時間におけるビットレートの平均値を算出したものとなる。VBRでエンコードされたファイル全体のデータサイズを、再生時間で割ることで算出できる。

ABR方式は、VBR方式の一種であり、特にストリーミング配信において、ネットワーク環境の変化に対応するために利用されることが多い。ABR方式では、視聴者のネットワーク帯域幅をリアルタイムで監視し、その帯域幅に合わせて最適なビットレートの動画を配信する。これにより、ネットワークが混雑している場合にはビットレートを下げて途切れにくくし、余裕がある場合にはビットレートを上げて高画質で視聴できるように調整する。

ABR方式の主な技術としては、HTTP Adaptive Streaming(HAS)が挙げられる。HASは、HTTPプロトコルを使用して動画を小さなセグメントに分割し、それぞれのセグメントを異なるビットレートでエンコードしてサーバーに保存する。視聴者のデバイスは、ネットワーク状況に応じて最適なビットレートのセグメントをダウンロードし、連続して再生することで、スムーズな視聴体験を提供する。HASの代表的な規格としては、AppleのHTTP Live Streaming(HLS)、AdobeのHTTP Dynamic Streaming(HDS)、MicrosoftのSmooth Streaming、そして国際標準規格であるMPEG-DASHなどがある。

ABR方式を採用するメリットは、視聴環境に左右されずに安定した視聴体験を提供できる点にある。ネットワーク帯域幅が変動しやすいモバイル環境や、時間帯によって混雑するネットワーク環境においても、途切れや画質の劣化を最小限に抑えることができる。また、コンテンツプロバイダー側から見ると、異なるビットレートの動画を用意することで、様々なデバイスやネットワーク環境の視聴者に対応できるため、より多くの視聴者を取り込むことができる。

一方、ABR方式のデメリットとしては、複数のビットレートでエンコードされた動画を用意する必要があるため、ストレージ容量が増加する点や、エンコードにかかる時間やコストが増加する点が挙げられる。また、ビットレートの切り替え時に、一時的に画質が変化したり、再生が中断されたりする可能性もある。

システムエンジニアが平均ビットレートを扱う際には、以下の点に注意する必要がある。まず、配信するコンテンツの種類や視聴者の環境を考慮して、適切なビットレートの範囲を設定する必要がある。例えば、高画質を重視する場合には、高いビットレートの動画を用意する必要があるが、モバイル環境の視聴者が多い場合には、低いビットレートの動画も用意する必要がある。

次に、ネットワーク帯域幅の監視やビットレートの切り替えを適切に行うための技術的な知識が必要となる。ABR方式の規格やプロトコルを理解し、最適なアルゴリズムを選択する必要がある。また、視聴者のデバイスやブラウザの種類によって、対応している規格が異なる場合があるため、互換性を考慮する必要がある。

さらに、ストレージ容量やエンコードにかかるコストを考慮して、最適なビットレートの数やエンコード方法を選択する必要がある。例えば、コンテンツの量が非常に多い場合には、ストレージ容量を節約するために、低いビットレートの動画の数を増やすなどの対策を講じる必要がある。

平均ビットレートは、動画や音声のストリーミング配信において、品質と効率のバランスを取るための重要な概念となる。システムエンジニアは、ABR方式の技術的な知識を習得し、適切な設計を行うことで、視聴者に快適な視聴体験を提供できる。