休止状態 (キュウシジョウタイ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
休止状態 (キュウシジョウタイ) の読み方
日本語表記
休止状態 (キュウシジョウタイ)
英語表記
hibernation (ハイバネーション)
休止状態 (キュウシジョウタイ) の意味や用語解説
休止状態とは、コンピュータの電源管理機能の一つであり、作業中の状態をすべて補助記憶装置に保存してから、電源をほぼ完全に遮断する状態を指す。一般的に、コンピュータの電源をオフにするシャットダウンと、低消費電力で待機するスリープの間に位置づけられる機能として理解されている。主な目的は、作業を中断する際にその状態を完全に保持しつつ、スリープとは異なり待機電力をほとんど消費しないようにすることである。特にノートパソコンのようにバッテリー駆動時間が限られるデバイスにおいて、長時間にわたって作業状態を維持したい場合に非常に有用な選択肢となる。 休止状態の仕組みを詳細に解説する。ユーザーが休止状態への移行を指示すると、オペレーティングシステムはまず、現在コンピュータのメインメモリ(RAM)上に展開されているすべてのデータを一時的に保存する準備を始める。このデータには、起動しているアプリケーション、開いているファイルの内容、ウィンドウの配置、さらにはカーソルの位置といった、作業環境を構成するあらゆる情報が含まれる。次に、これらのメモリ上の全データを、ハードディスク(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)といった補助記憶装置上に、一つの大きなファイルとして書き出す。このファイルは一般的にハイバネーションファイルと呼ばれ、例えばWindows環境では「hiberfil.sys」という名前でシステムドライブのルートに作成される。このファイルのサイズは、搭載されている物理メモリの容量とほぼ同等になる。補助記憶装置へのデータの書き込みが完了すると、コンピュータはシャットダウンとほぼ同じように、マザーボードや各種コンポーネントへの電力供給を完全に停止する。これにより、待機中の電力消費は限りなくゼロに近くなる。 休止状態からの復帰は、電源ボタンを押すことから始まる。コンピュータは通常の起動プロセスを開始するが、オペレーティングシステムがロードされる過程で、補助記憶装置上に有効なハイバネーションファイルが存在することを検知する。検知した場合、OSは通常の起動シーケンスを中断し、代わりにハイバネーションファイルの内容をすべてメインメモリに書き戻す処理を開始する。この読み込み処理が完了すると、コンピュータは休止状態に入る直前の状態、すなわちすべてのアプリケーションやファイルが開かれた状態へと完全に復元される。ユーザーは中断したまさにその時点から、シームレスに作業を再開することができる。 休止状態は、スリープと比較することでその特性がより明確になる。スリープは、作業内容をメモリに保持したまま、CPUやディスプレイ、補助記憶装置などへの電力供給を停止する省電力状態である。メモリへの通電は維持されるため、わずかながら電力を消費し続ける。その代わり、復帰は数秒と非常に高速である。しかし、スリープ中に停電が発生したり、ノートパソコンのバッテリーが完全に切れたりすると、メモリに保持されていたデータはすべて失われてしまう。一方、休止状態は作業内容を不揮発性の補助記憶装置に保存するため、電源が完全に断たれてもデータが失われる心配がない。この堅牢性が最大の利点であるが、復帰時には補助記憶装置から大容量のデータを読み込む必要があるため、スリープよりも時間がかかるという欠点がある。 また、シャットダウンとの違いは、作業状態の保持の有無にある。シャットダウンは、すべてのアプリケーションとプロセスを正常に終了させ、メモリを解放してから電源を完全にオフにする。次回起動時は、OSやアプリケーションをゼロから起動し直すため、クリーンな状態でシステムが立ち上がる。これに対し、休止状態からの復帰は、前回の作業環境そのものを復元する操作である。 休止状態のメリットは、第一に待機中の電力消費がほぼゼロである点、第二に停電などの不意の電源遮断に対して作業内容を保護できる点である。デメリットは、休止状態への移行および復帰にスリープより時間がかかる点、そして物理メモリと同程度の容量を補助記憶装置上で消費する点である。 近年のオペレーティングシステムでは、これらの機能の長所を組み合わせた「ハイブリッドスリープ」が実装されている。これは、スリープ状態へ移行する際に、メモリにデータを保持しつつ、同時に補助記憶装置にもハイバネーションファイルを書き出す機能である。通常はメモリから高速に復帰できるが、万が一電源が遮断された場合は、補助記憶装置のファイルからデータを復元することで、スリープの利便性と休止状態の堅牢性を両立させている。このように、休止状態そのものの技術は、他の電源管理機能の基盤としても応用されており、コンピュータシステムにおいて重要な役割を担っている。