冗長コード (ジョウチョウコード) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
冗長コード (ジョウチョウコード) の読み方
日本語表記
冗長コード (ジョウチョウコード)
英語表記
redundant code (リダンダントコード)
冗長コード (ジョウチョウコード) の意味や用語解説
冗長コードとは、コンピュータプログラムの中に存在する、処理上不要であったり、あるいは重複していたりするコード部分を指す。英語では「Redundant Code」と表現される。冗長コードは、プログラムの直接的な実行エラーを引き起こすわけではないが、ソフトウェアの品質、特に保守性や可読性を著しく低下させる要因となるため、システム開発の現場では積極的に排除されるべき対象と見なされる。冗長コードは、開発者が意図せずに生み出してしまうことが多く、プロジェクトの規模が大きくなるほど、また開発期間が長くなるほど、その量は増加する傾向にある。したがって、システムエンジニアは冗長コードが何であるかを正しく理解し、それを生み出さない、あるいは既存のものを削減するための技術や習慣を身につけることが重要である。 冗長コードは、その性質によっていくつかの種類に大別される。最も代表的なものが「重複コード」である。これは、全く同じ、あるいは非常に類似したロジックのコードが、プログラム内の複数箇所に存在している状態を指す。多くの場合、既存の機能を別の場所で流用したい際に、安易なコピーアンドペーストを行うことで発生する。重複コードが存在する最大の弊害は、仕様変更やバグ修正が必要になった際に、関連するすべての箇所を漏れなく修正しなければならない点にある。もし一箇所でも修正を忘れると、プログラムは意図しない振る舞いを起こし、深刻なバグの原因となる。次に「デッドコード」がある。これは、プログラムのどの実行経路からも到達することができず、絶対に実行されることのないコードのことである。例えば、条件分岐において常に偽と判定されるブロック内のコードや、関数のreturn文の後に記述されたコードなどが該当する。過去に使用されていたが、仕様変更によって不要になった機能のコードが削除されずに残存した場合などにも発生する。デッドコードはプログラムの動作に直接影響は与えないものの、コードベースを不必要に肥大化させ、プログラムの全体像の理解を妨げることで可読性を損なう。さらに「不必要なコード」も冗長コードの一種である。これは、実行はされるものの、その処理結果がプログラムの以降の動作に何の影響も与えないコードを指す。例えば、計算結果がどの変数にも代入されず、どこからも参照されないような処理がこれにあたる。デバッグ目的で一時的に追加したコードの消し忘れなどが原因で発生することが多い。 これらの冗長コードが存在することは、ソフトウェア開発において多くの問題を引き起こす。第一に、保守性の低下である。前述の通り、重複コードは修正漏れによるバグの温床となるだけでなく、単純に修正作業の工数を増加させる。コードの可読性も著しく低下する。不要なコードが散在することで、開発者は本来のロジックを理解するために余計な時間を費やすことになり、新規メンバーがプロジェクトに参加する際の学習コストも増大する。また、コードベース全体の信頼性を損なうことにもつながる。冗長コードが多いプログラムは、品質管理が徹底されていないという印象を与え、新たなバグが潜んでいる可能性が高いと推測されるからである。パフォーマンスへの影響も無視できない場合がある。デッドコードはコンパイラの最適化によって実行時に無視されることが多いが、重複コードや不必要なコードはそのまま実行されるため、わずかながらCPUリソースやメモリを無駄に消費する。 このような冗長コードを削減し、コードの品質を高く維持するためには、いくつかの対策が存在する。最も基本的なアプローチは「リファクタリング」である。リファクタリングとは、プログラムの外部的な振る舞いを変えることなく、内部の構造を改善する作業を指す。重複コードに対しては、その共通ロジックを一つの関数やメソッドとして抽出し、元の各箇所からはその関数を呼び出す形に修正することで、コードの共通化を図る。これは「DRY原則(Don't Repeat Yourself)」として知られる、プログラミングにおける重要な設計原則の実践である。また、不要になったコードはコメントアウトして残すのではなく、バージョン管理システムを信頼して積極的に削除する習慣も重要である。さらに、個人の努力だけでなく、チーム全体での取り組みも不可欠である。静的コード解析ツールを導入すれば、重複コードやデッドコードを自動的に検出することが可能になる。また、開発プロセスに「コードレビュー」を組み込むことで、第三者の視点から冗長な部分を指摘し合い、品質を相互に担保する文化を醸成することができる。高品質で変更に強く、長期的に維持可能なシステムを構築するためには、冗長コードを継続的に検出し、排除していく地道な努力が不可欠なのである。