単精度浮動小数点数 (タンセイドフロウドウショウスウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
単精度浮動小数点数 (タンセイドフロウドウショウスウ) の読み方
日本語表記
単精度浮動小数点数 (タンセイドフロウドウショウスウテンスウ)
英語表記
single-precision floating-point number (シングルプレシジョンフローティングポイントナンバー)
単精度浮動小数点数 (タンセイドフロウドウショウスウ) の意味や用語解説
単精度浮動小数点数は、コンピュータで実数を近似的に表現する方法の一つだ。具体的には、IEEE 754という標準規格で定められた、32ビット(4バイト)を使って実数を表現する形式のことを指す。 実数は、小数点以下を含む数であり、コンピュータは内部で全てを0と1の組み合わせで表現するため、実数をそのまま正確に表現することは原理的に不可能だ。そこで、浮動小数点数という形式を用いて、実数を近似的に表現する。浮動小数点数は、符号部、指数部、仮数部の3つの部分で構成されており、それぞれの部分が実数の情報を保持している。 まず、符号部は、その数が正の数か負の数かを示す。1ビットが割り当てられ、0ならば正、1ならば負を表す。次に、指数部は、その数がどれくらいの大きさかを示す。8ビットが割り当てられ、2のべき乗の形で数を表現する。指数部は、バイアス値という値を足した状態で格納される。単精度浮動小数点数におけるバイアス値は127だ。つまり、指数部の実際の値は、格納されている値から127を引いたものになる。最後に、仮数部は、その数の精度を示す。23ビットが割り当てられ、小数点以下の部分を表現する。仮数部は、通常、1以上2未満の範囲に正規化される。つまり、小数点以下に有効数字が来るように調整される。この正規化によって、最上位ビットは常に1になるため、実際には格納されない(隠しビットと呼ばれる)。 単精度浮動小数点数で表現される数値は、次の式で表される。 (-1)^符号部 * 2^(指数部 - バイアス値) * (1 + 仮数部) 例えば、12.5という数を単精度浮動小数点数で表現する場合を考えてみよう。まず、12.5は正の数なので、符号部は0になる。次に、12.5を2進数で表すと、1100.1となる。これを正規化すると、1.1001 * 2^3となる。したがって、指数部は3 + 127 = 130となり、2進数で10000010と表現される。仮数部は、小数点以下の1001を並べたものになり、残りのビットは0で埋められる。結果として、単精度浮動小数点数で12.5を表現すると、次のようになる。 符号部: 0 指数部: 10000010 仮数部: 10010000000000000000000 これを16進数で表すと、41480000になる。 単精度浮動小数点数の利点は、倍精度浮動小数点数(64ビット)と比較して、メモリの使用量が少ないことだ。そのため、大量のデータを扱う場合や、メモリ資源が限られている環境では、単精度浮動小数点数が選択されることがある。 しかし、単精度浮動小数点数の欠点は、表現できる精度が低いことだ。倍精度浮動小数点数よりも表現できる桁数が少ないため、計算誤差が発生しやすい。特に、複雑な計算や、繰り返し計算を行う場合には、誤差が蓄積され、結果が大きく異なる可能性がある。そのため、高い精度が要求される場合には、倍精度浮動小数点数を使用することが推奨される。 単精度浮動小数点数は、ゲーム開発や画像処理など、ある程度の誤差が許容される分野でよく使用される。これらの分野では、メモリ効率が重要であり、計算速度も求められるため、単精度浮動小数点数が適していると言える。また、機械学習の分野でも、モデルの学習においては、単精度浮動小数点数が使用されることがある。 このように、単精度浮動小数点数は、メモリ効率と計算速度のバランスが取れた数値表現形式であり、様々な分野で利用されている。システムエンジニアを目指す上では、その特性を理解し、適切な場面で活用できるようになることが重要だ。