感熱式プリンタ (カンネツシキプリンタ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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感熱式プリンタ (カンネツシキプリンタ) の読み方

日本語表記

感熱式プリンタ (カンネツシキプリンタ)

英語表記

thermal printer (サーマルプリンター)

感熱式プリンタ (カンネツシキプリンタ) の意味や用語解説

感熱式プリンタは、熱によって色が変わる特殊な紙、通称「感熱紙」に直接印字する方式のプリンタである。インクやトナーといった消耗品が不要であり、プリンタ内部にインクを供給する機構や定着させるための加熱機構が不要なため、非常にシンプルな構造を持つことが最大の特徴だ。このため、本体を小型化しやすく、静音性に優れ、メンテナンスも容易である。主にレシートやチケット、バーコードラベル、宅配便の送り状など、比較的短期の保存性で十分な用途や、手軽にその場で印刷したい場合に広く利用されている。 感熱式プリンタの基本的な印刷原理は、感熱ヘッド(サーマルヘッド)と呼ばれる発熱体が感熱紙に接触し、熱を加えることで化学反応を誘発して発色させる点にある。感熱紙は、ベースとなる紙の上に「発色層」という特殊な層が塗布されており、この発色層が熱に反応する。発色層は通常、色素のもととなる「ロイコ染料」と、熱によってロイコ染料を発色させる「顕色剤」、そして反応を促進させる「増感剤」などから構成されている。これらの成分は常温ではそれぞれが安定しており発色しないが、感熱ヘッドから特定の温度以上の熱が加わると、ロイコ染料と顕色剤が溶融・混合し、化学反応を起こして発色する。発色の濃度は、加えられる熱の温度や時間によって調整される。熱を加える部分と加えない部分を制御することで、文字や画像を形成する。 感熱式プリンタには、大きく分けて「ダイレクトサーマル方式」と「サーマルトランスファー方式(熱転写方式)」の2種類があるが、一般的に「感熱式プリンタ」と言う場合は前者のダイレクトサーマル方式を指すことが多い。ダイレクトサーマル方式は、前述の通り感熱紙に直接熱を加えて発色させるため、インクリボンなどの追加の消耗品が不要であり、構造がさらにシンプルで低コストである。主にPOSシステムで使われるレシートプリンタや、医療現場、計測機器などで利用される。一方、サーマルトランスファー方式は、感熱ヘッドの熱でインクリボンを溶かし、そのインクを専用紙に転写して印刷する方式で、ダイレクトサーマル方式とは異なり感熱紙を使用しない。印字の保存性や耐久性が求められるバーコードラベルプリンタなどで利用されるが、本稿で主に解説するのはダイレクトサーマル方式である。 ダイレクトサーマル方式の感熱式プリンタが持つメリットは多岐にわたる。まず、インクやトナーといった消耗品が不要であるため、用紙代のみで運用できる。これにより、ランニングコストを抑えることが可能となる。次に、機械的な可動部が少ないシンプルな構造であるため、動作音が非常に静かであり、故障も比較的少ない。また、本体を非常にコンパクトに設計できるため、設置スペースに制約がある場所や、モバイル環境での利用に適している。さらに、電源投入後すぐに印刷を開始できる即応性や、比較的高速な印刷が可能である点も利点として挙げられる。 しかし、デメリットも存在する。最も大きな欠点は、印刷物の保存性である。感熱紙の印字は、直射日光や高温多湿、油分、特定の化学物質(例:消しゴムの成分、プラスチックフィルムに含まれる可塑剤)に弱く、時間とともに印字が薄くなったり、完全に消えてしまったりする可能性がある。特にレシートなど、長期保存を前提としない用途であれば問題ないが、契約書や重要書類など、長期的な保存が求められる文書の印刷には適さない。また、カラー印刷が基本的に難しい点もデメリットである。特殊な多色感熱紙も存在するが、一般的に普及しているのは単色発色タイプであり、写真のような高品質なカラー印刷には向かない。感熱紙自体も普通紙に比べて割高な場合があり、大量印刷を行う際には用紙コストを考慮する必要がある。 システムエンジニアが感熱式プリンタを扱う際には、これらの特性を理解した上で、適切なシステム設計を行うことが重要だ。例えば、POSシステムやキオスク端末、医療機器、工業用計測機器など、組み込みシステムにおいて、小型・軽量・低コスト・静音性といった感熱式プリンタの利点は大きな魅力となる。しかし、出力される情報が一時的なものか、あるいは長期的な保存が必要かによって、採用の可否や運用方法を検討しなければならない。長期保存が必要な場合は、印刷物を別途データで保存する仕組みを導入したり、熱転写方式のプリンタやレーザープリンタなど、別の方式のプリンタの採用を検討する必要がある。 また、感熱紙には、標準タイプ、高保存タイプ、耐水タイプなど、様々な種類が存在する。用途に応じて適切な感熱紙を選択することも重要である。高保存タイプの感熱紙は、一般的な感熱紙よりも退色しにくい特性を持つが、コストは高くなる傾向がある。プリンタドライバやSDK(Software Development Kit)を利用して、プリンタの制御や印字データの生成を行う際には、印字品質の調整やエラーハンドリング、紙切れ検出などの機能も考慮に入れるべきだ。システムの信頼性やメンテナンス性についても、構造のシンプルさは有利に働くものの、定期的な清掃や部品交換の可能性も考慮し、保守計画を立てる必要がある。感熱式プリンタは、その特有のメリットとデメリットを理解し、適切に活用することで、多くのビジネスシーンや日常において不可欠な役割を果たすIT機器である。

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