仮想アドレス(カソンアドレス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
仮想アドレス(カソンアドレス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
仮想アドレス (カソンアドレス)
英語表記
virtual address (ヴァーチャルアドレス)
用語解説
仮想アドレスとは、コンピュータがメモリを扱う際に利用する概念の一つだ。物理メモリの配置を抽象化し、プログラムに対して連続したアドレス空間を提供する。システムエンジニアを目指す上で、仮想アドレスの仕組みを理解することは、メモリ管理やプロセス管理の基礎となる。
仮想アドレスの仕組みを深く理解するために、まず物理アドレスとの違いを明確にする必要がある。物理アドレスは、実際にメモリチップに割り当てられたアドレスを指す。これに対し、仮想アドレスは、CPUがプログラムを実行する際に使用する論理的なアドレスだ。プログラムは、この仮想アドレスを通してメモリにアクセスする。
仮想アドレス空間は、各プロセスに独立して割り当てられる。つまり、異なるプロセスが同じ仮想アドレスを使用しても、実際には異なる物理メモリ領域にアクセスすることになる。この仕組みによって、プロセス間でのメモリ干渉を防ぎ、システムの安定性を保つことができる。
仮想アドレスから物理アドレスへの変換は、メモリ管理ユニット(MMU)と呼ばれるハードウェアが行う。MMUは、ページテーブルと呼ばれるデータ構造を用いて、仮想アドレスと物理アドレスの対応関係を管理している。ページテーブルは、オペレーティングシステム(OS)によって管理され、必要に応じて更新される。
仮想アドレス空間は、通常、固定長のページと呼ばれる単位に分割される。一般的なページサイズは4KBだ。仮想アドレスは、ページ番号とページオフセットから構成される。MMUは、ページ番号を元にページテーブルを検索し、対応する物理ページのベースアドレスを取得する。そして、そのベースアドレスにページオフセットを加算することで、物理アドレスを算出する。
仮想アドレス空間の利点の一つは、物理メモリよりも大きなアドレス空間をプログラムに提供できることだ。例えば、32ビットのCPUでは、4GBの仮想アドレス空間を利用できるが、搭載されている物理メモリがそれよりも少なくても、プログラムは4GBのメモリ空間を利用しているかのように動作する。これは、仮想記憶と呼ばれる技術によって実現される。
仮想記憶では、物理メモリに収まりきらないデータは、ハードディスクなどの補助記憶装置に一時的に退避される。この退避されたデータは、必要になった際に物理メモリにロードされる。この処理は、オペレーティングシステムが自動的に行うため、プログラムは物理メモリの制約を意識する必要がない。
仮想記憶の実現には、ページングと呼ばれる技術が不可欠だ。ページングでは、仮想アドレス空間と物理アドレス空間をページと呼ばれる固定長のブロックに分割し、ページ単位でデータの移動を行う。物理メモリに存在しない仮想ページにアクセスしようとすると、ページフォルトと呼ばれる例外が発生する。ページフォルトが発生すると、OSはハードディスクから必要なページを物理メモリにロードし、プログラムの実行を再開する。
仮想アドレス空間は、メモリ保護の役割も果たす。ページテーブルには、各ページに対するアクセス権限(読み取り、書き込み、実行)が設定されている。プログラムが許可されていないアクセスを試みると、MMUは例外を発生させ、プログラムの実行を停止する。この仕組みによって、悪意のあるプログラムによるメモリ破壊や情報漏洩を防ぐことができる。
仮想アドレス空間は、動的メモリ割り当てとも密接に関わっている。プログラムは、mallocやnewなどの関数を用いて、実行時に必要なメモリ領域を確保する。これらの関数は、オペレーティングシステムにメモリ割り当てを要求し、オペレーティングシステムは仮想アドレス空間の中から未使用の領域を割り当てる。割り当てられた仮想アドレス空間は、プログラムが自由に利用できる。
仮想アドレス空間の管理は、オペレーティングシステムの重要な役割の一つだ。オペレーティングシステムは、各プロセスに独立した仮想アドレス空間を割り当て、ページテーブルを管理し、ページング処理を行う。効率的なメモリ管理は、システムのパフォーマンスに大きく影響するため、オペレーティングシステムの設計において、仮想アドレス空間の管理は非常に重要な要素となる。
近年では、64ビットCPUが主流となり、仮想アドレス空間は飛躍的に拡大した。64ビットCPUでは、理論上、2の64乗バイトのアドレス空間を利用できる。これにより、大規模なデータを扱うアプリケーションや、多数のプロセスを同時に実行するシステムでも、メモリ不足を気にすることなく動作できるようになった。
仮想アドレスは、現代のコンピュータシステムにおいて、メモリ管理、プロセス管理、セキュリティなどの様々な側面で重要な役割を果たしている。システムエンジニアを目指す上で、仮想アドレスの仕組みを深く理解し、その応用について学ぶことは、非常に有益だ。