【ITニュース解説】データの可視化だけでは不十分——AIも含む「開発プロセス全体」を指標で駆動させる時代へ

2025年09月10日に「CodeZine」が公開したITニュース「データの可視化だけでは不十分——AIも含む「開発プロセス全体」を指標で駆動させる時代へ」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

開発現場では、データの可視化だけでは事業成果が見えにくい課題がある。生成AI導入後の効果測定も不透明だ。これに対し、事業成長とプロダクト開発を一体と捉え、開発プロセス全体を適切な指標で駆動させる重要性が示された。生成AI時代に合わせた新たな指標設定が、開発組織の競争力向上に繋がる。

ITニュース解説

現代のIT業界では、「データに基づいて物事を決める」という考え方、つまり「データ駆動経営」が非常に重要視されている。しかし、多くの開発現場では、データを単に目で見て分かりやすくする「可視化」だけでは不十分であるという課題に直面している。例えば、開発の進捗を示すグラフや数字をいくら提示しても、それが実際に会社の売上アップや顧客の満足度向上といった「事業の成果」にどれだけつながっているのかが、はっきりしないという状況がある。また、近年急速に普及している生成AIツールを開発に導入しても、それが本当に開発チームの生産性を向上させたのかどうか、客観的に評価するのが難しいという問題も生じている。

このような根本的な課題に対し、ファインディ株式会社の浜田直人氏は、実践的な解決策を提示している。浜田氏は、事業の成長と、実際に製品を開発する「プロダクト開発」とは、切り離せない関係にあると強く指摘する。単に良いものを作るだけでなく、その製品がどのように会社のビジネス全体に貢献しているかを常に意識し、開発プロセス全体を具体的な数値目標、つまり「指標」で管理していくことが、これからの時代には不可欠であるという考え方だ。

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、開発とはコードを書くことやシステムを構築することだと考えるかもしれない。しかし、その開発が最終的に会社の目標達成に貢献しなければ、その価値は十分に発揮されない。これまで開発チームが使ってきた指標、例えば「開発に費やした時間」や「バグの数」などは、開発の内部的な効率を示すものとしては有効だった。しかし、それらの指標が直接的に「新しい顧客を何人獲得できたか」「売上がどれくらい伸びたか」といった事業目標とどう結びついているのかが見えにくいという状況が多くの企業で起きている。この「事業目標との乖離」こそが、データの可視化だけでは解決できない大きな問題なのだ。

さらに、生成AIの登場は、開発の現場に新たな変化をもたらした。AIがコードを自動生成したり、テストコードを作成したりすることで、開発者は今までと異なる方法で作業を進められるようになった。しかし、その結果として「開発が本当に速くなったのか」「品質は向上したのか」といった生産性の変化を、従来の指標だけで正確に測るのは難しい。例えば、AIが書いたコードの品質は人間が書いたものと同等か、あるいはAIが短縮した開発時間で、開発者はより創造的な作業に集中できたのか、といった視点も必要になる。このような新しいテクノロジーの導入効果を正確に評価するためには、新たな視点に基づいた指標が求められる。

浜田氏が提唱するのは、単に開発の効率を見るだけでなく、企画、設計、開発、テスト、運用といった「開発プロセス全体」を通じて、事業成果と直結する指標を設定し、それに基づいて開発を進めていくことだ。例えば、新機能の開発であれば、その機能がリリースされた後に実際にユーザーの利用率がどのくらい変化したか、あるいは売上や顧客満足度にどう影響したか、といった具体的な数値を追跡する。開発チームは、単に要求された機能を作るだけでなく、その機能がビジネスに与える影響まで考えて開発を進める意識が重要になる。つまり、開発者はビジネスの視点も持ち合わせることで、より価値のあるプロダクトを生み出せるようになる。

生成AIが普及するこれからの時代では、AIが担う部分と人間が担う部分が変化するため、評価すべき指標も変わってくる。例えば、AIが自動生成したコードの割合や、AIによるバグ検出の精度、AIを活用することで開発者がどれだけ創造的な問題解決に時間を割けるようになったか、といった指標が考えられる。これらの新しい指標は、AIを単なるツールとして使うだけでなく、チーム全体の能力を最大限に引き出し、より良い成果を出すための羅針盤となるだろう。

このように、開発プロセス全体を事業目標と連携した指標で管理し、常に改善していくことは、単に開発の効率を上げるだけでなく、開発組織全体の競争力を高めることにつながる。市場の変化が激しい現代において、迅速かつ効果的に、そしてビジネス価値を最大化するプロダクトを開発できる組織こそが、生き残る力を手に入れるのだ。システムエンジニアを目指す皆さんも、将来的にコードを書くだけでなく、そのコードがどのようなビジネス価値を生み出すのか、どのように事業目標に貢献するのかを常に意識し、指標に基づいて開発を進める視点を持つことが、キャリアを大きく広げる鍵となるだろう。

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