【ITニュース解説】Blenderのグリースペンシルを使って線を描いてみよう

作成日: 更新日:

ITニュース概要

3DCGソフトBlenderの基本を解説する連載。今回は、3D空間に2Dの絵を描ける「グリースペンシル」機能を使い、実際に線を引く方法をイラスト付きで紹介する。初心者にも分かりやすい実践的な内容だ。

ITニュース解説

3DCG制作の世界で広く利用されているオープンソースソフトウェア「Blender」には、多様な機能が統合されている。その中でも特にユニークで強力な機能として注目されているのが「グリースペンシル」である。これは、3D空間内に直接2Dの絵や線を描画できる機能であり、従来の3Dモデリングとは全く異なるアプローチでビジュアル制作を可能にする。この機能を用いることで、3Dの背景と2Dの手描きアニメーションを融合させたような、新しい表現が実現できる。 グリースペンシルを使って実際に線を描くプロセスは、直感的で分かりやすい手順で構成されている。まず、Blenderを起動し、描画対象となるオブジェクトを選択するか、新規にグリースペンシルオブジェクトを作成する。作業モードを標準の「オブジェクトモード」から「ドローモード」に切り替えることで、描画の準備が整う。ドローモードに入ると、3Dビューポートがキャンバスとなり、マウスやペンタブレットを使って自由に線を描くことができる。 画面左側に表示されるツールバーから「ドロー」ツールを選択すると、描画が開始できる。線の見た目を決める要素は主にブラシとマテリアルである。ブラシ設定では、線の太さ(半径)や強さ(不透明度)などを細かく調整できる。これにより、シャープな線から淡くぼかした線まで、多彩な表現が可能となる。これらの設定は、描画中でも随時変更することができる。 線の色や質感は「マテリアル」によって定義される。これは3Dモデルの表面に色や質感を設定する際と同じ仕組みであり、グリースペンシルではストロークそのものに適用される。単色だけでなく、グラデーションをつけたり、テクスチャを貼り付けたりすることも可能で、表現の幅を大きく広げている。新しいマテリアルを作成し、ベースカラーを設定することで、好きな色の線を描けるようになる。 また、グリースペンシルにおける重要な概念が「レイヤー」である。これは画像編集ソフトウェアと同様の機能で、描画内容を階層的に管理することができる。例えば、「下書き」「線画」「着色」といったようにレイヤーを分けることで、特定の描画要素だけを個別に編集したり、表示・非表示を切り替えたりすることが容易になる。これにより、複雑なイラストやアニメーションシーンを効率的に構築できる。 グリースペンシルの最大の特徴は、描かれた線が3D空間内に存在するオブジェクトであるという点だ。つまり、描いた線に対してカメラを回り込ませたり、3Dオブジェクトと前後関係を持たせたりすることができる。例えば、3Dで作成した建物の手前にキャラクターを描き、カメラが建物の裏側に移動するとキャラクターが隠れる、といった演出がBlender内で完結する。これは、従来であれば2Dのアニメーション制作ソフトと3DのCGソフトを別々に使用し、最終的に合成する必要があった作業を、一つのアプリケーション内でシームレスに行えることを意味する。 この機能は、アニメーション制作における絵コンテやアニマティクスの作成、3Dモデルへの注釈の書き込み、あるいはグリースペンシル自体を主役とした2Dアニメーション作品の制作など、幅広い用途で活用されている。システム開発の分野においても、VRやARコンテンツ開発における3D空間内のインターフェースやエフェクトの描画、デジタルツイン環境下での3Dモデルへの指示書き込みなど、応用範囲は広い。プログラミングと組み合わせることで、インタラクティブな描画コンテンツを生成することも可能であり、エンジニアのスキルセットと高い親和性を持つ。このように、Blenderのグリースペンシルは、クリエイティブな表現の可能性を押し広げる革新的なツールである。

【ITニュース解説】Blenderのグリースペンシルを使って線を描いてみよう