【ITニュース解説】Credit: @richmirks
2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Credit: @richmirks」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
先輩エンジニアが後輩のコードに困惑する様子を描いたミーム。自分のPCで動いても、サーバーなど他の環境では動かないことがある。「環境差異」は開発で頻繁に起こる問題であり、常に意識する必要があることを示唆している。
ITニュース解説
提示された画像は、プログラミングにおける初心開発者と経験豊富な開発者のコードの書き方の違いを、ユーモラスに表現したものである。この一枚の画像から、システムエンジニアを目指す上で非常に重要な、コードの品質に関する概念を学ぶことができる。具体的には、コードの冗長性、可読性、そしてプログラミング言語の特性に対する理解の深さについて示唆している。
まず、左側の「Junior dev」(ジュニア開発者、つまり初心者)のコードを見てみよう。これは if (paid) { return true; } else { return false; } という記述である。このコードは、paid という変数が true という値を持っているかどうかを判定している。もし paid が true であれば true を返し、そうでなければ(else)、つまり paid が false であれば false を返す、というロジックを構成している。このコードは、動作としては完全に正しい。期待される結果、すなわち paid の状態(true か false か)を正確に返している。プログラミングを学び始めたばかりの段階では、このように条件分岐の構造を一つ一つ丁寧に記述することは、論理的な思考をコードに落とし込むための自然なプロセスである。条件が真の場合の処理と、偽の場合の処理を明示的に分けることで、自分の考えた通りのプログラムが動くことを確認しやすい。
次に、右側の「Senior dev」(シニア開発者、つまり経験者)のコードに注目する。そこには return paid; とだけ書かれている。驚くほどシンプルだが、このコードは左側のジュニア開発者のコードと全く同じ結果をもたらす。なぜなら、if 文の条件式で使われている変数 paid 自体が、すでに true または false というブール値(真偽値)を持っているからだ。paid が true ならば、このコードは true を返す。paid が false ならば、このコードは false を返す。左側のコードが if-else を使ってわざわざ行っていた判定と値の返却を、たった一行で実現している。これは、処理の本質を的確に捉えた結果である。この処理の目的は「paid の値が true なら true を、false なら false を返す」こと、つまり「paid の値をそのまま返す」ことである。シニア開発者はその本質を見抜き、最も直接的で無駄のない形でコードに表現している。
この二つのコードの違いは、単に文字数の多寡だけを問題にしているわけではない。ここには、良いコードとは何かを考えるための重要な要素が含まれている。一つ目は「可読性」である。一般的に、コードは短くシンプルな方が、その意図を理解しやすくなる。return paid; は「paid の値を返す」という意図が一目瞭然である。一方で、if-else を使った記述は、読む側が「paid が true なら true、false なら false を返すということは、結局 paid をそのまま返しているのと同じだな」と、一度頭の中で解釈し直す必要がある。このわずかな思考のステップが、複雑なプログラム全体で積み重なると、コードの理解を妨げる要因となり得る。
二つ目は「保守性」である。ソフトウェア開発は一度作って終わりではなく、将来的な機能追加や修正が必ず発生する。シンプルで意図が明確なコードは、後から他の開発者が見たときや、自分自身が久しぶりに見返したときにも理解しやすく、修正が容易である。バグが入り込む余地も、コードが複雑で長くなるほど増える傾向にあるため、簡潔さは品質を保つ上で重要な要素となる。
そして最も重要なのは、「プログラミング言語の特性への理解」である。シニア開発者のコードは、if 文の条件式がブール値を評価すること、変数そのものが値を保持する器であること、そして関数が値を返すという基本的な仕組みを深く理解し、それらを効果的に組み合わせていることを示している。初心者はまず文法を覚え、それを手順通りに組み合わせることに集中しがちだが、経験を積むにつれて、言語が持つ様々な特性をより柔軟に活用できるようになる。今回の例は、ブール値を直接返すという、非常に基本的でありながら見落としがちなテクニックの一つである。
システムエンジニアを目指す過程で、最初は誰もがジュニア開発者のようなコードを書く。それは決して間違いではない。大切なのは、自分の書いたコードが期待通りに動くだけで満足するのではなく、「もっと良い書き方はないか?」「もっとシンプルに、分かりやすく表現できないか?」と常に問い続ける姿勢を持つことである。他の経験豊富な開発者が書いたコードを読んだり、コードレビューを通じてフィードバックをもらったりすることは、このようなより洗練されたコードの書き方を学ぶ絶好の機会となる。この一枚の画像が示しているのは、プログラミングスキルの成長とは、複雑なアルゴリズムを知ることだけでなく、日常的に書く一行一行のコードを洗練させていく地道なプロセスの積み重ねでもある、ということなのである。