【ITニュース解説】複数のJohnson Controls製品における脆弱なサードパーティコンポーネントへの依存の脆弱性

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ITニュース概要

Johnson Controls社の複数製品にセキュリティ上の弱点が発見された。これは製品が利用する他社製ソフトウェア部品に脆弱性があったため。自社開発部分だけでなく、組み込む外部部品の管理もセキュリティでは重要となる。(118文字)

ITニュース解説

ビルオートメーションシステムなどを手掛けるJohnson Controls社の複数の製品において、セキュリティ上の弱点である脆弱性が発見された。この問題は、製品そのものの設計ミスではなく、製品を構成するために利用している外部のソフトウェア部品に起因するものである。これは現代のソフトウェア開発が抱える、サプライチェーンにおけるセキュリティリスクを象徴する事例であり、システムエンジニアを目指す上で理解しておくべき重要な概念を含んでいる。 現代のソフトウェア開発は、ゼロからすべての機能を作り上げることは稀である。多くの場合、家を建てる際に既製品の窓やドア、ネジといった部品を組み合わせていくように、ソフトウェアもまた、他社やオープンソースコミュニティが開発した便利な機能を持つ部品、すなわち「サードパーティコンポーネント」を組み合わせて構築される。これにより、開発者は車輪の再発明を避け、開発期間の短縮やコスト削減、品質の向上といった多くの恩恵を受けることができる。しかし、この手法には大きなリスクも伴う。それは、利用している部品に欠陥、つまり脆弱性が発見された場合、その部品を使っているすべてのソフトウェア製品が影響を受けてしまうという問題である。今回のJohnson Controls社のケースは、まさにこの「脆弱なサードパーティコンポーネントへの依存」という問題が表面化したものである。 具体的には、同社の製品が利用していたRed Lion Controls社やCodeWrights GmbH社が開発したコンポーネントに、複数の深刻な脆弱性が存在していたことが明らかになった。これらの脆弱性を悪用されると、攻撃者は遠隔からシステムに対して不正な操作を行うことが可能になる。報告されている脆弱性の中には、「バッファオーバーフロー」と呼ばれる古典的かつ危険な種類のものも含まれている。バッファオーバーフローとは、プログラムがデータを一時的に保存するために用意したメモリ領域(バッファ)に対して、想定されたサイズを超えるデータを送り込むことで、メモリ上のデータを溢れさせる攻撃手法である。決められた大きさの箱に無理やり大きな荷物を詰め込むと、箱が壊れたり中身がはみ出したりするように、プログラムも予期せぬデータを処理させられることで、誤作動を起こしたり、最悪の場合は停止したりする。 さらに深刻なのは、このバッファオーバーフローを悪用して「任意のコード実行」に繋がる可能性がある点だ。これは、攻撃者が自身の意図した命令(悪意のあるコード)を、ターゲットのシステム上で実行できてしまう状態を指す。もしこれが成功すれば、攻撃者はシステムを完全に掌握し、内部データの窃取や改ざん、システムの破壊など、あらゆる不正行為が可能となる。また、「サービス運用妨害(DoS)」を引き起こす脆弱性も確認されている。これは、システムに過剰な負荷をかけたり、意図的にクラッシュさせたりすることで、正規の利用者がサービスを使えない状態にする攻撃である。ビル管理システムがこのような攻撃を受ければ、空調、照明、入退室管理といった建物の根幹をなす機能が停止し、事業活動の停止や物理的な安全への脅威に直結する可能性がある。 このようなサプライチェーンに起因するリスクに対応するため、システム開発や運用の現場では、使用しているソフトウェア部品を正確に把握・管理することの重要性が高まっている。そのための手法として「SBOM(Software Bill of Materials)」、すなわちソフトウェア部品表の作成と管理が注目されている。SBOMは、製品がどのようなサードパーティコンポーネントで構成されているかを一覧にしたものであり、これを整備しておくことで、今回のように特定のコンポーネントに脆弱性が発見された際に、自社のシステムが影響を受けるかどうかを迅速に特定し、対策を講じることが可能になる。 システムエンジニアには、単にプログラムを開発するだけでなく、自身が関わるシステムがどのような要素で成り立っているかを理解し、潜在的なセキュリティリスクを管理する責任が求められる。定期的な脆弱性情報の収集、利用しているコンポーネントのバージョン管理、そしてメーカーから修正プログラム(パッチ)が提供された際の迅速な適用は、システムを安全に保つための基本的な責務である。今回の事例は、ソフトウェアがもはや単一の閉じた存在ではなく、無数の外部要素と連携する複雑な生態系の一部であることを示している。この構造を理解し、その連鎖の中に潜むリスクを適切に管理する能力こそが、これからのシステムエンジニアに不可欠なスキルと言えるだろう。

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