【ITニュース解説】I Rewrote Our Service in Rust — And Almost Lost Customers.
2025年09月20日に「Medium」が公開したITニュース「I Rewrote Our Service in Rust — And Almost Lost Customers.」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
サービスをRustで書き直したら、高速・メモリ安全なはずが、数週間後には処理遅延が急増し、顧客離れの危機に直面した。
ITニュース解説
システム開発において、既存のサービスをより高性能にするため、あるいは抱えている課題を解決するために、別のプログラミング言語で一から作り直すことがある。これを「リライト」と呼ぶ。今回解説する記事は、あるエンジニアが自社のサービスをRustという言語で書き直した際、予期せぬ問題に直面した話である。
Rustは近年非常に注目されているプログラミング言語で、その最大の特徴は「安全性」と「高速性」の両立だ。特に、メモリの安全性をコンパイル時(プログラムを実行可能な形式に変換する段階)に保証する独自の仕組みを持っており、多くのシステムで発生するメモリ関連のバグ、例えばメモリリーク(使用済みのメモリが適切に解放されず、システムリソースを圧迫する現象)などを未然に防ぐことができるとされている。また、C++のような低レベルなハードウェア制御が可能でありながら、より安全なコードが書けるため、高いパフォーマンスが求められるWebサービスのバックエンドや、インフラ系のツール開発などで採用が増えている。
このエンジニアは、おそらく既存のサービスが抱えていたパフォーマンスの問題や、メモリ関連の不安定さを解消するために、Rustへのリライトを決断したのだろう。Rustの高い安全性と速度は、まさにこれらの課題を解決するための最適な選択肢に見えたに違いない。彼は、サービスがより安定し、より高速になることで、顧客への提供価値が高まると期待していた。
実際に、サービスをRustで書き換え、本番環境にデプロイした直後は、その期待が裏切られることはなかった。新しいサービスは非常に高速に動作し、メモリ使用量も最適化されたように見えた。エンジニアは、この成功に手応えを感じ、大きな達成感を抱いていたことだろう。まさに「理論上は完璧」なシステムが完成したかのように思われた。
しかし、サービスが稼働し始めてから約2週間後、事態は一変した。サービスの応答速度、すなわち「レイテンシ」が急激に悪化したのだ。レイテンシの増加は、ユーザーがサービスを利用する際に待たされる時間が長くなることを意味し、サービスの使い勝手を著しく低下させる。これは、顧客がサービスから離れてしまう原因となりかねない、非常に深刻な問題である。せっかく高い技術力を使って書き換えたシステムで、なぜこのような問題が発生したのか、エンジニアは困惑したことだろう。
問題解決のため、エンジニアは詳細な調査に乗り出した。システムのログを徹底的に分析し、パフォーマンスモニタリングツールを使って、どこに処理のボトルネック(遅延の原因となる箇所)があるのかを特定しようとした。そして彼らが発見したのは、Rustのプログラム自体に直接的なバグがあったわけではない、ということだった。問題は、Rustの強力な機能である「非同期処理」の実装方法と、それが実際の運用環境におけるシステム全体の負荷状況とどのように相互作用するかという点にあった。
非同期処理とは、複数のタスクを同時に、あるいは並行して実行することで、システム全体の応答性を高めるプログラミング手法だ。例えば、データベースからのデータ取得中に別の処理を進めるといったことができる。Rustには非同期処理を記述するための洗練された機能が備わっているが、その使い方を誤ると、かえってシステム全体のスループット(単位時間あたりに処理できる量)を低下させたり、CPUなどのリソースを過剰に消費したりする可能性がある。今回のケースでは、特定の非同期処理のパターンが、システムが大量のリクエストを捌く際に、想定外のリソース競合や効率の悪いタスク管理を引き起こし、それがレイテンシの悪化につながっていたのだ。理論上は効率的であるはずの非同期処理が、現実の複雑な負荷状況下で意図せぬ副作用を生み出していたと言える。
原因が特定された後、エンジニアは非同期処理の実装を見直し、Rustの非同期ランタイム(非同期処理を実行するための環境)の設定や、コードの書き方を最適化することで問題を解決した。例えば、タスクのスケジューリング方法を調整したり、共有リソースへのアクセス競合を減らすようにコードを修正したりした可能性がある。その結果、サービスのレイテンシは改善され、以前の安定した状態を取り戻すことができた。
この経験から、エンジニアは非常に重要な教訓を得た。それは、新しいプログラミング言語や技術を導入する際には、その理論的な優位性やベンチマークテストでの性能だけでなく、実際の運用環境における振る舞いを徹底的に検証する必要がある、という点である。特に、サービスの核となる部分をリライトする際は、単体テストや結合テストといった基本的なテストに加え、本番環境に近い条件での負荷テストや、長期間にわたるパフォーマンス監視が不可欠だ。
また、どんなに高性能な言語であっても、その特性やフレームワークの深い理解がなければ、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性がある。特定のユースケースや運用状況においては、一見最適に見える技術が、実は複雑な問題を引き起こすこともあるのだ。システム開発において、技術選定は非常に重要なプロセスだが、その技術をいかに正しく、そして運用環境に合わせて最適に活用するかが、最終的なサービスの成功を左右するのである。