【ITニュース解説】Rolling Stone’s parent company sues Google over AI Overviews
2025年09月15日に「The Verge」が公開したITニュース「Rolling Stone’s parent company sues Google over AI Overviews」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Rolling Stoneを発行するPenske Mediaが、GoogleのAI Overviews(AIによる記事要約機能)に対し訴訟を起こした。AIが生成するコンテンツの著作権侵害や、情報源への適切な報酬に関する問題が争点となり、米主要メディア初の提訴となる。
ITニュース解説
最近、IT業界とコンテンツ業界で注目されているニュースがある。人気音楽雑誌「ローリングストーン」をはじめとする多くのメディアを運営する企業、Penske Media Corporation(PMC)が、検索エンジンの巨人Googleを提訴したというものだ。この訴訟の焦点は、Googleが提供している「AI Overviews」という機能にある。これは、システムエンジニアを目指す皆さんにとっても、AI技術が社会やビジネスに与える影響を理解する上で非常に重要な事例となるだろう。
まず、「AI Overviews」とは何かを説明しよう。Googleは検索結果の最上部に、ユーザーの質問に対する答えをAIが自動で要約して表示する機能を導入した。これは、従来の検索結果がウェブサイトのリンクを羅列する形だったのに対し、ユーザーが目的の情報に素早くアクセスできるよう設計されたものだ。例えば、「〇〇とは何か」と検索すると、複数のウェブサイトから情報を集め、AIがその場で簡潔な答えを生成して見せてくれる。これにより、ユーザーは多くのリンクをクリックして情報源を探す手間を省けるという利便性がある。
しかし、このAI Overviewsが今回、大きな問題として取り上げられている。PMCは、GoogleのAI Overviewsが自社のウェブサイトに掲載されている記事の内容を無断で要約し、検索結果のトップに表示していると主張しているのだ。これにより、本来ならばPMCのウェブサイトを訪れて記事を読んでいたであろう読者が、Googleの検索結果ページで必要な情報を得てしまい、PMCのサイトへアクセスしなくなるという事態が発生している。
なぜこれが問題なのか。多くのメディア企業は、質の高い記事やコンテンツを作成するために、取材費、人件費、技術開発費など多大なコストをかけている。そして、これらのコストを回収し、事業を継続するための主な収入源が、ウェブサイトに表示される広告収入なのだ。読者がPMCのウェブサイトを訪問して記事を読むことで、ウェブサイトに掲載されている広告が読者の目に触れ、広告主からPMCへ収益が支払われるというビジネスモデルが成り立っている。
AI Overviewsが記事の内容を要約してしまうと、読者はPMCのサイトにアクセスする必要がなくなり、結果としてPMCのウェブサイトへのトラフィック(訪問者数)が激減する可能性がある。トラフィックが減少すれば、当然ながら広告収入も減少する。これはPMCのようなコンテンツプロバイダーにとって、事業の継続を脅かす深刻な問題となる。つまり、GoogleのAI機能が、自社のコンテンツを「消費」する一方で、そのコンテンツを生み出す側のビジネスモデルを破壊しているとPMCは訴えているわけだ。
さらに、PMCはGoogleが自社の著作物をAIのトレーニングデータとして無断で使用している点も問題視している。AIが学習するためには、インターネット上に存在する膨大な量のテキストデータが必要となる。GoogleのAIも、世界中のウェブサイトに公開されている記事や情報から学習していると考えられている。PMCは、Googleが自社のコンテンツをAIに読み込ませることで、AIを賢くし、その結果として自社のビジネスを損なうツールを生み出したと主張しているのだ。これは著作権法の観点からも非常に複雑な問題提起だ。インターネット上の情報をAIが利用すること自体が、法的にどこまで許容されるのか、という議論に発展している。
システムエンジニアの視点から見ると、AIの学習プロセスにおけるデータ利用は極めて重要だ。AIがどんなデータから学習し、どのように情報を再構成して出力するかは、そのAIの性能と信頼性を左右する。しかし、このデータ利用が著作権やビジネスモデルにどのような影響を与えるかという点は、技術開発を進める上で避けて通れない課題となっている。特に、生成AIがコンテンツを直接生成する能力を持つようになったことで、従来の「情報へのリンク」を提供する検索エンジンの役割から、「情報そのもの」を提供する役割へと変化している点が、この問題の根底にある。
今回のPMCによるGoogleへの提訴は、大手アメリカメディア企業がAI Overviewsに対して起こした初めての訴訟であり、その動向は今後のIT業界とメディア業界に大きな影響を与えるだろう。AI技術の進化は止まらないが、それが社会の既存のルールやビジネスモデルとどのように調和していくのか、あるいは新たなルールを必要とするのかが問われている。この訴訟は、単なる企業間の争いにとどまらず、AI時代における情報の価値、著作権、そしてコンテンツビジネスのあり方について、私たちに深く考えさせるきっかけとなるだろう。システムの設計者や開発者は、技術的な側面だけでなく、それが社会に与える倫理的、経済的、法的な影響も常に意識する必要があることを、このニュースは示唆している。