【ITニュース解説】「SBOM」国際ガイダンス公開 日本、米国など15カ国が共同署名

2025年09月05日に「@IT」が公開したITニュース「「SBOM」国際ガイダンス公開 日本、米国など15カ国が共同署名」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

SBOM(ソフトウェア部品表)に関する国際的な共通認識をまとめたガイダンスが公開された。ソフトウェアの構成要素を明確化し、セキュリティリスク管理を向上させるのが目的。日本や米国を含む15カ国が共同で署名しており、開発者から政府機関まで、幅広い関係者に向けてSBOMの重要性と利点を解説している。

ITニュース解説

ソフトウェアサプライチェーンの安全性を高めるための国際的な取り組みとして、SBOM(Software Bill of Materials:ソフトウェア部品表)に関する共通認識をまとめた国際ガイダンスが公開された。日本を含む15カ国が共同で署名しており、これはソフトウェア開発に関わる全ての関係者にとって重要な意味を持つ。

SBOMとは、ソフトウェアを構成する部品、つまりソフトウェアを開発するために使われたオープンソースソフトウェア、商用ライブラリ、フレームワークなどの情報を一覧にしたものだ。これは、食品の原材料表示に似ていると考えると分かりやすい。食品の原材料表示を見ることで、何が含まれているか、アレルギー物質は含まれていないかなどを消費者が確認できる。同様に、SBOMを見ることで、ソフトウェアにどのようなコンポーネントが含まれているかを知ることができるのだ。

なぜSBOMが重要なのか。それは、ソフトウェアサプライチェーン攻撃のリスクを軽減するためだ。近年、ソフトウェア開発は非常に複雑になり、多くのソフトウェアが、自社で開発したコードだけでなく、外部から調達したコンポーネントを組み合わせて作られている。もし、これらの外部コンポーネントに脆弱性があった場合、その脆弱性を悪用されることで、ソフトウェア全体が危険にさらされる可能性がある。

例えば、ある企業が開発したソフトウェアに、脆弱性のあるオープンソースライブラリが組み込まれていたとする。攻撃者はその脆弱性を発見し、そのソフトウェアを攻撃することで、企業の機密情報を盗み出したり、システムを破壊したりすることができる。SBOMがあれば、ソフトウェア開発者は、使用しているコンポーネントの脆弱性を迅速に特定し、対応することができる。これにより、ソフトウェアサプライチェーン全体のリスクを低減することが可能になる。

具体的には、SBOMを活用することで以下のメリットが期待できる。

まず、脆弱性の管理が容易になる。SBOMによってソフトウェアの構成要素が明確になるため、脆弱性情報が公開された際に、自社が開発・利用しているソフトウェアに影響があるかどうかを迅速に判断し、対応策を講じることができる。

次に、ライセンスコンプライアンスの遵守が容易になる。ソフトウェアには、それぞれ異なるライセンス条件が設定されている。SBOMによって、使用しているコンポーネントのライセンス情報を把握し、ライセンス条件を遵守することで、法的なリスクを回避することができる。

さらに、ソフトウェアの品質向上に繋がる。SBOMを作成する過程で、ソフトウェアの構成要素を詳細に分析することになる。これにより、不要なコンポーネントの削除や、より安全なコンポーネントへの置き換えなど、ソフトウェアの品質向上に繋がる改善点を発見することができる。

今回の国際ガイダンスは、SBOMの概要、重要性、作成方法、活用方法などをまとめたもので、各国が共通認識を持つための基盤となる。ソフトウェア開発者だけでなく、ソフトウェアを調達する企業や政府機関など、全ての関係者がSBOMを理解し、活用することで、ソフトウェアサプライチェーン全体の安全性を高めることができる。

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、SBOMは今後ますます重要な知識となる。ソフトウェア開発の現場では、SBOMの作成・管理ツールや、SBOMを活用した脆弱性管理システムなどが導入されることが予想される。これらのツールやシステムを使いこなせるようになることは、システムエンジニアとしての市場価値を高めることに繋がるだろう。今回の国際ガイダンスを参考に、SBOMに関する知識を深め、安全なソフトウェア開発に貢献できる人材を目指してほしい。具体的には、NIST(米国国立標準技術研究所)などの機関が公開しているSBOMに関する情報や、SBOMの作成・管理ツールに関する情報を収集し、実際に触ってみることをおすすめする。