【ITニュース解説】はじめてでも見積りができるようになる『図解まるわかり システム開発のための見積りのきほん』発売
2025年09月10日に「CodeZine」が公開したITニュース「はじめてでも見積りができるようになる『図解まるわかり システム開発のための見積りのきほん』発売」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
翔泳社より、システム開発の見積り手法を初心者向けに図解で解説する書籍『図解まるわかり システム開発のための見積りのきほん』が発売された。開発の規模や工数を算出する基本的な考え方やプロセスを学べるため、エンジニアを目指す人にとって実践的な知識が身につく一冊だ。
ITニュース解説
システム開発の世界において「見積り」は、プロジェクトの成否を左右する極めて重要な工程である。どのようなシステムを開発するにも、必ず「どれくらいの期間で」「いくらの費用をかけて」完成させるのかを事前に計画する必要がある。この計画の根幹をなすのが見積りであり、プロジェクトの羅針盤とも言える存在だ。顧客に対してプロジェクトの規模や予算を提示し、合意を得るための基礎となるだけでなく、開発チーム内では、誰がいつまでに何をするのかという具体的な作業計画を立てる上での土台にもなる。正確な見積りができなければ、プロジェクトは予算を超過したり、納期に間に合わなかったりといった深刻な問題に直面するリスクが高まる。したがって、システムエンジニアを目指す上で、開発スキルだけでなく、この見積りの基本を理解しておくことは、将来的にプロジェクト全体を俯瞰し、責任ある立場で活躍するために不可欠なスキルとなる。
では、なぜシステム開発の見積りは難しいと言われるのだろうか。例えば、家を建てる場合、必要な木材の量や部品の数、作業員の人数などを比較的正確に計算しやすい。しかし、システム開発で作り出すのは、形のないソフトウェアである。目に見えないものを対象とするため、作業の規模や難易度を客観的に測ることが本質的に難しい。さらに、プロジェクトの初期段階では、顧客の要求がまだ曖昧であったり、開発を進める中で仕様が変更されたりすることも少なくない。また、新しい技術の導入や予期せぬ技術的課題の発生など、予測不可能な要素も常に存在する。開発メンバーのスキルや経験によっても、同じ作業でもかかる時間は大きく異なる。こうした多くの不確定要素を考慮しながら、将来の作業量を予測しなければならない点に、システム開発の見積りの特有の難しさがある。だからこそ、経験則だけに頼るのではなく、体系化された様々な見積り手法を学び、状況に応じて適切に使い分ける知識が求められるのだ。
代表的な見積り手法には、いくつかの種類がある。最も直感的で分かりやすいのが「類推見積り」だ。これは、過去に開発した類似のシステムや機能の実績を参考にする方法である。経験が豊富なエンジニアにとっては迅速に見積りを出せるメリットがあるが、参考にできる適切な前例がなければ使えない、あるいは過去のプロジェクトとの差異を正確に評価するのが難しいという弱点もある。より精度を高める手法として「ボトムアップ見積り」がある。これは、開発するシステム全体を、画面や機能、さらには個別のタスクといった非常に細かい単位まで分解し、それぞれの作業にかかる時間(工数)を一つずつ見積もってから、それらをすべて合計して全体の工数を算出する方法である。非常に手間がかかるが、作業内容が明確になり、見積りの根拠を具体的に示せるため、高い精度が期待できる。この作業分解には、WBS(Work Breakdown Structure)と呼ばれる手法が用いられることが多い。また、より客観的な指標を用いる方法として「ファンクションポイント法」も広く知られている。これは、システムが持つ機能、例えば入力画面の数や出力する帳票の種類などを、定められたルールに基づいて数え上げ、その複雑さに応じて点数化し、その点数から開発規模や工数を見積もる手法である。個人の主観が入りにくく、客観的で再現性の高い見積りが可能になるという特徴がある。
見積りは単なる計算作業ではなく、一連のプロセスを経て行われる。まず、顧客が何を求めているのかを詳細にヒアリングし、システムの要件を明確に定義することから始まる。この要件定義が曖昧なままでは、精度の高い見積りは不可能だ。次に、定義された要件をもとに、必要な機能を洗い出し、細かいタスクに分解していく。そして、各タスクに対して、どのくらいの時間や人員が必要かという工数を算出する。この際、過去のデータやエンジニアの経験が活かされる。重要なのは、予期せぬトラブルや仕様変更などに備え、ある程度の予備時間(バッファ)を計画に含めておくことだ。すべての計算が終わったら、それらの内容と根拠をまとめた見積書を作成し、顧客に提出して説明、合意形成を図る。この一連のプロセスを通して、エンジニアはただコードを書くだけでなく、プロジェクトの全体像を把握し、ビジネス的な側面やリスク管理についても考える能力を養うことができる。
システム開発における見積りは、プロジェクトの成功を支える土台であり、エンジニアにとって必須の知識である。その手法は多岐にわたり、それぞれに特徴があるため、プロジェクトの性質や状況に応じて最適な方法を選択する必要がある。見積りのプロセスを学ぶことは、開発するシステムの仕様を深く理解し、潜在的なリスクを予測し、計画的に作業を進める能力を身につけることに直結する。図解を交えて見積りの基本を分かりやすく解説する書籍は、これからシステムエンジニアとしてキャリアをスタートさせる人々にとって、この複雑で重要なスキルを体系的に学ぶための貴重な道標となるだろう。現場で即戦力となるためには、プログラミング技術の習得と並行して、こうしたプロジェクト管理に関する知識を早期から身につけておくことが、自身の市場価値を高め、より大きな責任を担うエンジニアへと成長していくための確かな一歩となる。