【ITニュース解説】テスラの「完全自動運転」はなぜ他のメーカーと違って危険なのか?

2025年09月06日に「GIGAZINE」が公開したITニュース「テスラの「完全自動運転」はなぜ他のメーカーと違って危険なのか?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

テスラの「完全自動運転」は、2015年の「オートパイロット」から10年で実現。しかし、More Perfect Unionの指摘によると、テスラのシステムは他社と異なり、危険性があるとのこと。その違いは、ギガファクトリーから顧客の家までを完全自動運転で届けるという点にある。

ITニュース解説

テスラの「完全自動運転」と呼ばれる機能が、他の自動車メーカーの同様の機能とどのように異なり、なぜ危険視されるのかを解説する。

テスラは2025年6月、自社の電気自動車を工場から顧客の自宅まで、ドライバーの介入なしに走行させることに成功したと発表した。これは、2015年に「オートパイロット」という運転支援機能を搭載して以来、10年かけて実現したとされる「完全自動運転」の一つの形だ。しかし、このテスラの「完全自動運転」は、他のメーカーが開発する自動運転技術とは大きく異なる点があり、それが安全性に関する懸念を生んでいる。

その違いの核心は、テスラの自動運転システムが主に「コンピュータビジョン」に依存している点にある。コンピュータビジョンとは、車の周囲の状況をカメラで捉えた画像データに基づいて認識し、判断する技術のことだ。テスラはこのカメラからの情報のみを頼りに、道路標識、信号、歩行者、他の車両などの状況を認識し、走行ルートを決定する。

一方、多くの自動車メーカーは、自動運転システムを開発するにあたり、コンピュータビジョンに加えて、LiDAR(ライダー)やレーダーといった他のセンサー技術を併用している。LiDARは、レーザー光を照射して周囲の物体までの距離を正確に測定するセンサーだ。レーダーは、電波を使って物体の位置や速度を検出する。これらのセンサーは、カメラだけでは捉えにくい情報、例えば悪天候下での状況や、暗闇の中での物体の存在などを把握するのに役立つ。

テスラがLiDARやレーダーを使用せず、コンピュータビジョンに特化している理由は、コスト削減や、将来的な完全自動運転の実現を見据えた技術戦略などが考えられる。イーロン・マスクCEOは、人間のドライバーはカメラ(目)だけで運転しているのだから、車もカメラだけで運転できるはずだと主張している。

しかし、専門家からは、コンピュータビジョンのみに依存することの危険性が指摘されている。カメラは、光の条件や天候に大きく影響を受ける。例えば、逆光や夜間、雨や雪などの悪天候下では、カメラの認識精度が低下し、誤認識や認識漏れが発生する可能性がある。また、カメラは、遠くの物体や小さい物体を認識するのが苦手な場合もある。

LiDARやレーダーは、これらのカメラの弱点を補完することができる。LiDARは、暗闇や悪天候下でも正確に距離を測定できる。レーダーは、雨や霧などの影響を受けにくく、遠くの物体を検出するのに優れている。これらのセンサーを併用することで、自動運転システムの信頼性と安全性を高めることができる。

More Perfect Unionの指摘によれば、テスラの自動運転システムは、過去に多数の事故を引き起こしており、その中には死亡事故も含まれている。これらの事故の多くは、自動運転システムの誤認識や認識漏れが原因であると考えられている。

テスラは、オートパイロットの安全性を主張しており、人間のドライバーよりも事故率が低いと主張している。しかし、この統計は、テスラの車が走行する環境や条件を考慮していない可能性がある。例えば、テスラの車は、比較的交通量の少ない高速道路を走行することが多く、複雑な市街地での走行は少ない。

テスラの「完全自動運転」は、まだ開発途上の技術であり、安全性に関する課題が残されていると言える。コンピュータビジョンのみに依存するテスラの戦略は、革新的ではあるものの、現時点では他のメーカーのアプローチよりもリスクが高い可能性がある。システムエンジニアを目指す読者は、自動運転技術の現状と課題を理解し、将来の技術開発に貢献できるよう、幅広い知識と倫理観を身につける必要がある。 特にセンサーフュージョン(複数のセンサー情報を統合してより高度な認識を行う技術)の重要性を認識しておくことが重要だ。

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