アドレスバス幅(アドレスバスハバ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アドレスバス幅(アドレスバスハバ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アドレスバス幅 (アドレスバスハバ)

英語表記

Address bus width (アドレスバスウィズ)

用語解説

アドレスバス幅とは、コンピュータのCPUがメモリ上の位置を指定するために使用する信号線の本数、すなわちビット数のことである。この幅が、そのコンピュータシステムが物理的に認識し、直接アクセスできるメモリ空間の最大サイズを決定する。CPUとメインメモリは、コンピュータの性能を左右する重要な構成要素であり、両者はバスと呼ばれる電気的な経路で接続されている。バスには役割に応じていくつかの種類が存在し、その中でもアドレスバスは、CPUがメモリのどの場所(アドレス)に対して読み書きを行いたいかを伝えるための専用経路である。アドレスバス幅が広いほど、より多くの異なるアドレスを指定できるようになり、結果としてより大容量のメモリをシステムに搭載し、活用することが可能になる。

コンピュータが動作する際、CPUはプログラムの命令や処理対象のデータをメモリから読み出し、処理結果をメモリに書き込むという動作を絶えず繰り返している。このとき、CPUは広大なメモリ空間の中から目的のデータが格納されている正確な位置を特定する必要がある。この位置情報が「アドレス」であり、一般的に番地として表現される。CPUは、アクセスしたいメモリアドレスの情報を電気信号としてアドレスバスに送出する。メモリコントローラはこの信号を受け取り、指定されたアドレスに対応するメモリチップ上の物理的な位置を特定し、データの読み書きの準備を行う。実際のデータのやり取りは、データバスという別の経路を通じて行われる。つまり、アドレスバスは「どこに」アクセスするかを指定する役割を担い、データバスは「何を」やり取りするかという実データを運ぶ役割を担っている。この二つのバスは協調して動作することで、CPUとメモリ間の高速なデータ転送を実現している。

アドレスバス幅が最大メモリ容量を決定する仕組みは、2進数の原理に基づいている。アドレスバスは多数の信号線で構成されており、一本一本の線が1ビットの情報を伝える。各信号線は電圧の高低によって「0」または「1」のいずれかの状態を示すことができる。したがって、アドレスバス幅がNビットである場合、CPUは2のN乗通りの異なるアドレスを表現し、区別することが可能になる。例えば、アドレスバス幅が8ビットのCPUを考えてみる。この場合、表現できるアドレスの総数は2の8乗、すなわち256通りとなる。メモリの各番地が1バイトのデータを格納すると仮定すると、このCPUは最大で256バイトのメモリ空間しか管理できない。同様に、アドレスバス幅が16ビットになると、2の16乗である65,536通りのアドレスを扱えるようになり、これは64キロバイト(KB)に相当する。

コンピュータの歴史において、アドレスバス幅の拡張は性能向上の重要な節目となってきた。特に重要なのが32ビットへの移行である。アドレスバス幅が32ビットの場合、CPUが指定できるアドレスの総数は2の32乗、すなわち4,294,967,296通りとなる。これは4ギガバイト(GB)に相当し、かつて「4GBの壁」と呼ばれた現象の原因となった。32ビットアーキテクチャのCPUを搭載したシステムでは、原理的に4GBを超える物理メモリを直接アドレス指定して利用することができなかった。PAE(Physical Address Extension)のような技術でこの制限を一部回避する試みも存在したが、OSやアプリケーション側の対応も必要であり、根本的な解決策ではなかった。

現代のパーソナルコンピュータやサーバで主流となっているのは64ビットアーキテクチャである。アドレスバス幅が64ビットの場合、理論上は2の64乗という天文学的な数のアドレスを表現できる。これは約1844京通りに相当し、メモリ容量に換算すると16エクサバイト(EB)という、現時点では事実上無限とも言える広大なメモリ空間となる。これにより、4GBの壁は完全に取り払われ、数十GBから数TBといった大容量のメモリをシステムに搭載し、大規模なデータベース処理、科学技術計算、仮想化環境など、膨大なメモリを必要とする処理を効率的に実行することが可能となった。

なお、現代のオペレーティングシステムでは、アプリケーションが直接物理メモリアドレスを扱うことはない。OSはメモリ管理の一環として、各プロセスに「仮想アドレス空間」を割り当てる。アプリケーションはこの仮想アドレス上で動作し、CPUに内蔵されたMMU(メモリ管理ユニット)が、仮想アドレスを実際の物理アドレスに変換する。この変換処理を経て、最終的に物理アドレスがアドレスバスに送出される。アドレスバス幅が規定するのは、このMMUが変換先として指定できる物理アドレス空間の最大サイズである。

システムエンジニアとしてコンピュータのハードウェア構成や性能を評価する上で、アドレスバス幅はCPUのビット数(32ビット、64ビット)と共に、システムの基本的な能力を決定づける極めて重要な指標である。この概念を理解することは、メモリ増設の可否判断や、システムが扱うことのできるデータ規模の限界を把握するために不可欠である。

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